リアム・ローソンが衝撃のデビューウイン。波乱のSF23初戦はSCランで終了【SF第1戦決勝レポート】

 4月8日、2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦決勝レース(41周)が静岡県の富士スピードウェイで行われ、3番グリッドからスタートした新人、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)がアンダーカットを成功させて逆転優勝。ローソンに敗れた野尻智紀(TEAM MUGEN)が2位でチェッカーを受け、TEAM MUGENがワンツーフィニッシュを飾った。3位には平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が入った。

 スタート進行中、やや上空の雲が増えて冷たい風も吹きこんだが、降雨の心配はなく気温18度、路面温度29度というコンディションで、14時15分にフォーメーションラップがスタート。14時18分に決勝レースのスタートが切られた。

 ポールシッターの野尻は順当なスタートを切るが、2番グリッドの宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)はやや出遅れ、背後の4番グリッドからスタートした大湯都史樹(TGM Grand Prix)にかわされてしまった。

 後方では阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、国本雄資(Kids com Team KCMG)、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、ラウル・ハイマン(B-Max Racing Team)の4台がエンジンストールでスタートが切れず、TGRコーナーでは関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、山下健太(KONDO RACING)、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)の3台が接触と、スタート直後から波乱の連続に。山下と小林はマシンを止めリタイアとなった。

 さらに2周目のTGRコーナーでは、7番手争いを展開していた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)と牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が接触。牧野が坪井に追突する形で2台はコースアウトする。このアクシデントでコース上にパーツが散乱してしまい、レースは早くもセーフティカー(SC)が導入される。

 牧野は何とかコースに復帰し、ピットへ戻ってノーズコーンとタイヤを交換し隊列へと戻ったが、坪井はここでリタイア。早くも3台が戦列を外れることになった。

 レースは8周目に入るところでリスタートが切られ、野尻は最終コーナーの手前までペースをコントロールすると一気に加速。大湯もなんとか食らいついていこうとしたが、それよりも高加速を見せたのがローソン。1コーナーまでに大湯に急接近したローソンはイン側からオーバーテイクに挑む。

 大湯はなんとかローソンを抑え込み、2台は並んでコカ・コーラコーナーへと入っていったが、お互いに泊まり切れずにコースオフ。この隙に、4番手に下がっていた宮田が2番手まで順位を取り戻した。ただし、すぐにコース上に戻ってきたローソンがグリーンファイト100Rで宮田に追いつき、ダンロップコーナーでオーバーテイク。トップ野尻、2番手にローソンとTEAM MUGENがワンツー体制を築き上げた。

 2番手に上がったローソンと野尻のギャップは約2.5秒。しかしローソンは、9周目に1分24秒509のファステストタイムをたたき出すと、その後も野尻を上回るペースで周回してじわじわと接近し、19周目には両者の差は1.4秒まで縮まった。ただし決定的なチャンスとはならず、21周を終えたところでローソンが先にピットへと舵を切った。

 アンダーカットを狙うローソンを、チームは6秒の作業時間でコースへと送り出す。これを見た野尻と、宮田をかわして4番手に上がっていた山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)が同時にピットイン。野尻の作業時間は6.4秒とややローソンよりもかかってしまったが、なんとか事実上のトップを維持してコース復帰した。

 すでにタイヤに熱が入り、一気に迫ってくるローソンを、なんとかコカ・コーラコーナーまでは押さえこんでいた野尻だったが、勢いのあるローソンは100Rコーナーでアウト側から並びかけ、一気に大外刈り。スーパーフォーミュラルーキードライバーがディフェンディングチャンピオンを攻略した。

2023スーパーフォーミュラ第1戦富士 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)

 事実上のトップが交代した23周目、見た目上のトップを走行していたのはピットインのタイミングを引っ張っていた宮田で、その後ろには平川が着けていた。2台のペースは平川の方がやや早く、27周目に0.3秒差まで追いつくと、1コーナーで一気に逆転。代わってトップに立った平川は、タイヤ交換を済ませた組との差を広げるべくプッシュを重ねた。

 31周を終えて平川がピットイン。ターゲットとなったのは山本との事実上3番手争い。チームは約6秒と早い作業で平川を送り出し、なんとか山本の前でコースに復帰することに成功した。ただ、交換したばかりのタイヤで1コーナーを飛び出してしまい、山本が順位を取り戻した。

 続いて32周終了時点でタイヤ交換した宮田も、同じく1コーナーで止まり切れずにコースオフし、山本が事実上の3番手をキープする。宮田は平川の逆転も許し5番手に後退となった。タイヤがフレッシュな平川は宮田をかわして4番手に上がると、山本に接近。35周目の1コーナーで山本をとらえて3番手を取り戻した。

 その直後、9番手争いを展開していた福住仁嶺とジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)が1コーナー手前で接触。福住はコースサイドにヒットしてしまい、アレジもマシンにダメージを負って1コーナーでマシンを止めてしまう。残り周回数が6周となったところでこの日2度目のSC導入に。

 2台のマシン回収とコース清掃に時間がかかってしまい、レースはSC先導のままチェッカー。アンダーカットを成功させてトップに立ったローソンが、スーパーフォーミュラデビューレースで優勝を飾った。2位でチェッカーを受けたのは野尻で、TEAM MUGENがワンツーフィニッシュを達成。平川が3位となった。

 4位に山本、5位に宮田、6位に佐藤、7位に大湯、8位に今回がデビュー戦のジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)、9位に昨年唯一のノーポイントだった大嶋和也(docomo business ROOKIE)が続き、10位の小高一斗(KONDO RACING)までがポイントを獲得している。

2023スーパーフォーミュラ第1戦富士 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)
2023スーパーフォーミュラ第1戦富士 健闘を讃え合う野尻智紀とリアム・ローソン(TEAM MUGEN)

© 株式会社三栄