足尾をテーマに多くの作品を残した小山市出身の版画家小口一郎(こぐちいちろう)(1914~79年)などの作品展が開かれている立木のギャラリー「たから園現代工芸」で8日、コンサートとギャラリートークが行われた。田中正造(たなかしょうぞう)や足尾銅山鉱毒事件研究者の赤上剛(あかがみたけし)さん(82)=茂木町出身、埼玉県草加市=が正造の思想や現在につながる諸問題について講演した。
赤上さんは、水俣病やイラク戦争、東京電力福島第1原発事故など過去の大事件が人々の意識から薄れつつある現状を懸念。さらに、正造の生き方を受け継ぎ発言してきた石牟礼道子(いしむれみちこ)さんや坂本龍一(さかもとりゅういち)さんなどが近年、相次いで亡くなっている状況も憂いた。
こうした中で、日本政府が防衛費増額や原発再稼働など政策の大転換を進めようとする動きを警戒。「過去を反省し教訓としなければ、大事件は再び起きる」と強調した。
正造については、諸問題にぶつかり実践を通じて「人権」「環境・自然との共生」「非戦・軍備全廃」といった思想に到達した経緯を紹介。「戦争や公害を起こすのも、やめさせるのも人間。事実を知って、言うべきことを言って行動することが大切だ」と訴えた。
作品展は9日まで(午前10時~午後4時)。