近所との騒音トラブル 50デシベル超で損害賠償請求のケースも 加害の状況も重視 弁護士が説明

春の引っ越しシーズンですね。新生活を始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、生活騒音トラブルについて解説したいと思います。無事に引っ越しを終えられ、新生活に胸をときめかせている方も多いのではないでしょうか。そんな中、隣人から「子供やペットの声がうるさい」「できれば引っ越してほしい」等の苦情を申し入れられると軽やかな気持ちも台無しになりますよね。

生活騒音の問題は、法律の世界では「受忍限度」という概念を用いて検討します。この受忍限度論は、社会共同生活を営む上で一般通常人ならば当然受忍すべき(我慢すべき)限度を超えた侵害を被ったときにのみ、賠償請求等が可能であるという考え方です。つまり、生活をするなかでやむを得ず発生する音は、「お互いさま」ということですね。この受忍限度内かどうかの判断は、「被害の程度」と「加害の態様」を中心にしつつ、地域性、先住性、継続性等の事由を総合的に考慮するとされています。

裁判例を概観するに、やはりある程度の生活騒音は受忍限度内としたものが多い印象ですが、中にはマンションの階上の子供の飛び跳ね、走り回りによって発生した衝撃音等について、階下の室内で計測した騒音レベルが50デシベル前後に達したというケースで、受忍限度を超えていると判断したものがあります。

50デシベルと言えば、室外機や換気扇が回る程度の音量です。そこまで大きな音とは言えません。それでも裁判所が受忍限度を超えるとして治療費や慰謝料(30万円)を認めたのは、階上の住人が音を抑える努力もせず「文句があるなら建物に言ってくれ」と乱暴な口調で突っぱねたという加害態様を重視したからかもしれません。

ともあれ、隣人とは可能な限り平穏に暮らしていきたいもの。したがって場合によってはフロアにクッションシートを敷く、早朝深夜の洗濯は控える、家具や椅子の引きずり音に注意する等して、防音措置を講ずる等の対策を取った方がいいでしょう。

生活騒音等の隣人トラブルでお困りの際は、早めにお近くの弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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