野尻智紀「簡単に負けてはいけない」山下健太「泣く人の気持ちがわかった」【SF第2戦決勝会見】

 4月9日に富士スピードウェイで開催された2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦。決勝後の会見で今季初優勝を飾った野尻智紀(TEAM MUGEN)、2位の坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、3位の山下健太(KONDO RACING)、そしてTEAM MUGENの田中洋克監督がレースを振り返った。

■野尻智紀(TEAM MUGEN)

決勝 優勝

「昨日は2位で、チームメイトのリアム(・ローソン)が優勝というところで、やはりチャンピオンとして、またスーパーフォーミュラで戦っている立場やファンの皆さんの思いを考えると『簡単に負けてはいけないよな』と。それも今日の自分のメンタルにかなりくるものはあったのですけど、しっかりと集中し、予選もパーフェクトなラップを刻めました」

「決勝も(チームが)非常に良いクルマに仕上げてくれて、ピット作業も最高なものでしたし、1日を通してチームみんなの仕事が、欠点のひとつもないような。みんなで良い仕事ができたかなと、そんなふうに思います」

「また次戦の鈴鹿ですが、前回のテストを終えた段階では少し不安が残るかなと思っていたのですけれど、今日いろいろとセットアップを変えてみてかなりいい走りができそうだなという手応えを得たので、次の鈴鹿も非常に楽しみです。またこの場(トップ3会見の中央、優勝ドライバー席)にすぐに帰ってこられるように頑張りたいと思います」

2023スーパーフォーミュラ第2戦富士 野尻智紀(TEAM MUGEN)

■田中洋克監督(TEAM MUGEN)

「昨日はワンツーの流れでいい結果が出ればいいと思っていたのですけども、今日も本当にいい流れでした。野尻選手が昨日のレースで悪かったところを修正し、予選で2番手を大きく引き離すようなタイムでポールを獲りました。決勝へは若干の不安もあったのですけど、落ち着いてレースを運び、見事ポール・トゥ・ウインで勝ってくれたので、チームとしては最高の週末だったかと思います」

「リアム(・ローソン)選手も3番手でゴールしたものの、5秒ペナルティで順位を落としました。それを除けばチームとしては本当にこの富士大会を最高のかたちで終えることができたと思います」

「(ローソンに対し、ピットインの際に車間を開けるようにチームから指示を出したのかと問われ)ダブルピットとなる際にはやはり『開けたいな』という気持ちは当然あるのですけども、当然5台分の間隔を空けてはならないということは(スポーティング)レギュレーションで決まっていますので、それはミーティングの中でも当然話をしています」

「ドライバーはレギュレーションの内容を知っていた上で(車間を)開けたつもりだったのでしょうけども、結果的に少し空き過ぎだった。そこは反省して、次にそういったことがないようにしたいと思います」

「(TEAM MUGENの強さの秘訣を問われ)一言で説明することが難しいのですけども……。まず、結果を出す、安定感を出すためにはやはり精度良くクルマを作ることが必要条件だと思います」

「その精度良くクルマを作るためには、メカニックの仕事もそうですし、エンジニアがどクルマの状態をどのように把握するか、そして実際の走りとデータ上の動きがきちんととあっていて、データ上で再現できているかどうかも含めて、チームとして取り組んできたことがかたちになったのかなと」

「本当に若いエンジニアやメカニックたちが、そういうことをひとりひとりが意識してクルマを作っています。ドライバーも、メカニックやエンジニアがやっている取り組みに共感していますし、信頼もしています。そういうところでどんどん精度が上がってきた結果がレース結果に結びついているのではないかなと思っております」

2023スーパーフォーミュラ第2戦富士を制したTEAM MUGENの田中洋克監督

■坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)

決勝 2位

「昨日はレースができなかった(序盤でリタイア)ので僕にとっては今日が開幕戦となりました。クルマがSF23に、そしてタイヤも変わったシーズンで、情報量が必要なときにレースができなかったことは1レース分遅れているということなので、非常に辛いシーズンの第1戦だったなという感じですけど、今日の第2戦に関しては予選も悪くない位置でした」

「ただ、やはりトップには届く距離感ではなかったので、もう少し予選も速くならなきゃいけないなと思います。決勝はきちんとタイヤマネジメントなど、いろいろとうまくでき、またポジションも上げることができ、やれることはすべてできたかなと思っております」

「勝てなかったですけど、昨日がリタイアだったので、ひとまずちゃんと2位でレースを終えることができてよかったです。昨日はクルマが壊れ、チームが夜遅くまでかけてしっかりと直してくれて、いいクルマを作ってくれたおかげで今日の結果があると思うので、チームの感謝してます」

「あとは優勝するだけなので、この流れを鈴鹿でも重ねられるように、勝てるように準備していきたいと思います」

「(富士では昨年も2位で悔しいと語っていたが、今回の2位の心境は?と問われ)去年の2位よりも今回の2位は価値があると思います。去年は……思い出したくない感じですけど(苦笑)。今日に関してはやるべきことをすべてやり、この結果を得られたので満足度は今日の方がぜんぜん高いです」

「昨日がリタイアでスペアパーツがないなか、レースに出れるか出れないかもわからないという状況でしたが、パーツもしっかりと用意していただき、クルマも直してもいただきました。その思いに応えたいという気持ちもあったので、今日の方が圧倒的に重いの強いレースでしたから、価値のある2位かなと思います」

2023スーパーフォーミュラ第2戦富士 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)

■山下健太(KONDO RACING)

決勝 3位

「久しぶりの3位表彰台で本当に嬉しく思います。第1戦ではスタートで接触があって1周もできずに、このSF23での走行経験が得られず。今年のテストも怪我で参加できなかったので、SF23の経験はほぼ昨日の予選だけという感じで今日を迎えたのですけど、昨日の予選から変更した部分が今日の第2戦に対していい方向に行きました」

「レースペースがどうなるかという不安もあったのですけど、それなりに上手く走ることができました。本当に鈴鹿のテストで乗ってくれた笹原右京選手やKONDO RACINGの皆さんに感謝しています」

「第2戦でいきなり表彰台に戻って来れるとは思ってなかったので、予想外というのはあるのですけど、今後につながるレースができたかなと思います」

「(久しぶりの表彰台からの景色は?と問われ)久しぶりでした」

「(開幕前もさまざまな苦労があったかと……と問われ)そうですね。いろいろと思い出すと泣いちゃいそうになるのですけど、スーパーフォーミュラでは非常に苦労していて、何をやってもうまくいかないという印象がすごく強くて。スーパーフォーミュラに乗っているひとならわかると思いますが、理解できないことがすごく多いカテゴリーで、僕は苦労した時期がすごく長くて」

「3年間いろいろやりましたけど、速くなることはなく。ポイントもぜんぜん獲れかったですし、『向いてないのかな』と思ったりもしましたけど……」

(山下健太、ここで涙を拭い言葉を詰まらせる)

「(ゴールした後、どれくらいでうるっとしました?と問われ)だいぶ最初からきてましたね。なかなかきつい時期が長かったので……って話していたらまた泣いちゃいそうなんですけど。いろいろな人に支えていただいていたので、いろいろな思いが重なり、普段はあまり泣いたりしないのですけど」

「テレビとか見てると『なんでレースで勝ってそんなに泣いているのだろう』と思っていたのですけど、その気持ちがわかっちゃいました……(会見場が微笑み溢れる)」

野尻「向いていないって思うときいっぱいあるよね、俺もあるよいっぱい」

山下「ありがとうございます」

野尻「ランキング17位のとき(2017年/年間獲得点数:2ポイント)、マジでやめようと思ったもん。でも、頑張ろう」

山下「よろしくお願いします」

(一同微笑み&大拍手)

2023スーパーフォーミュラ第2戦富士 山下健太(KONDO RACING)

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