滋賀・栗東市が多胎児世帯に助成金、小中学校・高校入学時に 全国で珍しく

双子姉妹を見守る夫妻。「一緒に生まれて大変さも倍だけど、楽しさも倍」と目を細める(滋賀県栗東市・大宝東児童館)

 滋賀県栗東市が4月から、双子や三つ子など多胎児世帯を対象に、出産時や就学・進学時の助成金支給を始めた。子育てにかかる経済的負担の軽減がねらいだ。こうした取り組みは県内初で全国でも珍しいといい、関係者は支援施策が広がることに期待を寄せている。

 栗東市では、子育て世代の近隣市への流出が課題となっている。助成金支給は、少しでも長く栗東に住んでもらうために、2022年11月に就任した竹村健市長が主導する子育て充実に向けた独自策だ。

 JR栗東駅前の大宝東児童館で双子の姉妹を遊ばせる栗東市の夫妻は「出産前、双子だと分かって固まった」という。想像したのは肉体、精神的な出産や育児の負担に加え、経済的な負担の大きさ。夫(48)は「おもちゃも洋服も学費も同時に必要だ。市の支援はありがたい」と話した。

 市が多胎児世帯に助成金を支給するのは出産時のほか、小・中学校、高校入学時。額は双子が6万円、三つ子以上は一人6万円を加算する。出産助成は年間10組程度、就学・進学助成は20組程度が対象となる見込みで、市は関連予算180万円を組んだ。

 市は支給額の決定についてベビーカーや制服、高校学習用のタブレット端末などの価格を参考にしたという。担当者は「せっかく双子を授かっても不安を感じる人に少しでも安心してもらいたい」と語る。

 日本多胎支援協会(神戸市)の天羽千恵子理事は「多胎児の数は少なく、特別扱いできないと捉えられてきた。こうした事例は聞いたことがなく、多胎児家庭の経済的マイナス分を埋めるものだ」と歓迎する。

 同協会によると、多胎児世帯は負担の大きさが原因で母親の産後うつや家庭の孤立を招く場合があるという。協会のまとめでは単胎育児家庭に比べて虐待死の発生頻度が高まると推定されるデータもあるという。

 厚生労働省は、2020~21年度に多胎児世帯の支援を実施する自治体へ新たな補助制度を導入した。相談体制の充実や育児を手伝うサポーター派遣、多胎妊娠の妊婦健康診査支援に対するもので全国に広がりつつある。ただ、国は多胎児世帯に対する経済的支援は行っていない。

 天羽理事は「栗東市のような取り組みが全国に広がってほしい。併せて、多胎に特化した情報が家庭に届く仕組みづくり、社会の理解も大切になる」と指摘する。

© 株式会社京都新聞社