長崎県議選 大倉さん初陣飾る 長崎 アナウンサーから転身

初当選を確実にし、支持者と握手をする大倉聡さん(左)=9日午後11時2分、長崎市元船町の選挙事務所

 9日、長崎県議選の候補者57人に有権者の審判が下った。続々と台頭する新人たち。リードを伝えられた現職が敗れる波乱も。ベテラン現職は薄氷を踏む思いで議席を守った。加速する人口減少、新型コロナウイルス禍で傷んだ地域経済、生活を直撃している物価高騰…。山積する県政の課題にどう取り組むのか。無投票を含め当選した新県議46人に課せられた責任は重い。
 「夢のよう」。元アナウンサーの大倉聡さんが堂々と初陣を飾った。長崎市元船町の選挙事務所に吉報が届くと、支援者らから拍手が沸き起こり、抱き合って喜びの涙を流す人もいた。
 NBC長崎放送の“顔”として約16年半、お茶の間に親しまれた。ニュースや情報番組などを担当。事件事故、政治経済、文化、スポーツなどさまざまなジャンルを追いかけてきた。
 政治家を志したきっかけは14年ほど前。認可外保育所を取材し、認可保育所より支援が不十分であることを番組で問題提起したが、「行政の壁を突き破れなかった」。常に発言には中立性を求められ、あらゆる社会の課題に対し解決を迫る上で「物足りなさ」を感じるようになった。
 政治は素人。10代の息子2人を育てながら仕事を辞め選挙に。フリーアナウンサーの妻は賛成しなかったが、夫の熱意に打たれ協力者が集まるのを見て、腹をくくった。MCを務めた番組を降板し、マネジャーとして指揮を執ってくれた。
 夫は、本県の魅力が十分に生かされていないとして「もったいないよ!長崎」と訴えた。仮想現実(VR)による「体感させる」観光や女性の活躍支援、若者への投資などを政策に掲げた。
 あえて組織や団体に頼らず“草の根”活動を展開。退職後の昨年11月ごろからほぼ毎朝、自宅に近い蛍茶屋の国道沿いに立った。興味を引こうと手書きのメッセージボードを置いた。街中で有権者に話しかけていく「ロケ」を演出。選挙カーでは名前を連呼せず実況中継するなど親近感で有権者の心をつかんでいった。
 「今のままじゃ長崎は危ない。やり方一つで輝ける長崎をしっかり誇らしいまちにしていく」。県議会に新風が吹き込もうとしている。


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