〈激戦地ルポ 2023長崎県議選・5〉長崎市区 当落線上で火花散らす

23人が立候補し大激戦となっている長崎市区。街中で候補者がニアミスする場面も少なくない=長崎市内(写真は一部加工)

 選挙戦中盤の夜、長崎市北部地区であった個人演説会。登壇した自民現職候補は大勢の支持者を見渡すと、準備したメモを机に置き、思いの丈を叫んだ。「誰が落ちてもおかしくない。『○○候補は大丈夫だから』と他候補が言い回り、引き剥がしにかかっている。助けてください」
 定数14をめぐって候補23人がひしめく。当落線上をにらみ多数の候補が火花を散らす。特に公認7、推薦1の計8人を擁する自民は票を食い合う様相を帯び、現職候補の1人は「同じ党なのに地盤に関係なく、何でもありの状況。(すみ分けの)行司役がいない」と嘆く。
 人口流出著しい他地域を尻目に世帯数が増えている東長崎地区は、主地盤とする現職が不在。この大票田に昨年末に移り住んだ立憲民主新人候補は「唯一の地元候補」とアピール。同地区で演説会を開いた自民現職候補は、地元の市議や自治会幹部らを前に「東長崎の地から押し上げて」と感情を高ぶらせた。参政党新人候補も「(同地区は)反応がいい」と浮動票の掘り起こしに奔走する。
 激しい局地戦は市北部でも。住吉商店街を練り歩いた無所属新人候補の陣営関係者は「別の候補の牙城だが、地道に回れば切り崩せる」と血気盛ん。週末、浦上天主堂の早朝ミサ後には、外の階段の上に自民新人候補、下に国民民主現職候補が立ち、それぞれ信者に支持を訴えていた。
 現職と元職の無所属ベテラン両候補が根を張る市南部には、地域活性化に取り組む若手世代とつながる自民現職候補らも入り込む。これまで上位当選を重ねてきたベテラン現職候補の陣営関係者は「動きが出遅れた感は否めない」と焦り、足元を固めて迎え撃つ。
 各現職候補陣営が「粒ぞろい」と評する新人たちの浸透具合も帰趨(きすう)を左右しそうだ。元アナウンサーの無所属新人候補は、高い知名度を票につなげようと、市民と会話しながら街中を歩き回り、番組のロケ風にアプローチ。維新新人候補は「新人だからこそ、何のしがらみもない」と各地を駆け回る。
 前回最多得票だった国民現職候補は、出身労組や協力企業の人員減少に危機感を強め、支援企業回りを精力的に重ねる。公明、共産、社民の現職・新人候補も現有議席の維持に向け声を張り上げている。混沌(こんとん)とした選挙戦は最終盤を迎えた。

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