【F1第3戦無線レビュー】混乱のなかでペナルティを科されたサインツ「受け入れられない。僕の言い分を聞くまで待つべきだ」

 2023年F1第3戦オーストラリアGPは、レース中に赤旗が3度も出される大波乱のレースとなった。完走台数は12台というサバイバルレースを乗り切り角田裕毅も今季初入賞を記録したが、誰にとっても一筋縄ではいかない展開だった。オーストラリアGPを無線とともに振り返る

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 レース中に3回、チェッカー直後の観客乱入でさらにもう1回と、計4回の赤旗が出された大波乱のオーストラリアGP。赤旗中断の妥当性、出すタイミングでも物議を醸したレースだった。

 スタート直後、メルセデスの2台がポールシッターのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を抜いていく背後で、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がランス・ストロール(アストンマーティン)に接触され、早々にリタイアを喫した。

(1周目)
ルクレール:おしまいだ。ランスが僕の右後輪に接触した

2023年F1第3戦オーストラリアGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)が接触によりリタイア

 一方、首位に立ったジョージ・ラッセル(メルセデス)はルイス・ハミルトン(メルセデス)の猛追を受け、こんな不満を漏らした。

(7周目)
ラッセル:うまくマネージしろってことだったけど、チームメイトに迫られてるんだけど。どうしたらいいんだ。こうなったら、僕も本気でプッシュする!

 そんななか、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)が7周目に単独クラッシュしてしまう。

ジェームス・アーウィン:アレックス、大丈夫か?
アルボン:僕は大丈夫だ

2023年F1第3戦オーストラリアGP 7周目にクラッシュしたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)

 まだ土煙が巻き上がっている事故直後に通過したのが、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)だった。

ヒュルケンベルグ:恐かった〜。雲のなかにウイリアムズがいて、全然見えなかったよ
ゲイリー・ギャノン:きわどかったね。彼は大丈夫。クルマから出てる

 当初はセーフティカー(SC)だったが、最終的に赤旗に切り替えられた。これで割りを食ったのが、SC導入直後にピットインした首位のラッセル、4番手のカルロス・サインツ(フェラーリ)、そして12番手のケビン・マグヌッセン(ハース)だった。これで3人は7番手、11番手、18番手と、大きく順位を落としてしまう。

リカルド・アダミ:赤旗だ
サインツ:ノー! ノー!

トト・ウォルフ代表:ジョージ、申し訳ない。完全にやられた。でもまだ表彰台は、十分可能だ
ラッセル:君たちのせいじゃないよ。ピットイン自体は、的確だった

 再開後はフェルスタッペンが首位を奪い返し、ピットレーンスタートのセルジオ・ペレス(レッドブル)も7番手まで順位を上げていった。

 そして終盤53周目、12番手走行中のマグヌッセンがウォールにヒットした。

(54周目)
マーク・スレード(→マグヌッセン):ダメージを受けてる。リヤサスが壊れた。

 この事故でも、まずSCが導入。その間にバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、角田裕毅(アルファタウリ)らがピットに向かう。SCのまま事故車排除と思われたが、2度目の赤旗中断となった。

(56周目)
ジャンピエロ・ランビアーゼ:赤旗だ。そのままピットに向かうんだ
フェルスタッペン:ええ! 赤旗だって?

フェルナンド・アロンソ:何だって?
クリス・クローニン:そうなんだ。赤旗だ。あと1周か、2周しかないんだけどね

 57周目からの再開直後、3番手フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)はサインツに追突されコースオフを喫する。さらにアルピーヌの2台の同士討ちなど、アクシデントが多発。3度目の赤旗中断となった。これでアロンソの3位表彰台は、絶望かと思われた。

2023年F1第3戦オーストラリアGP カルロス・サインツ(フェラーリ)がフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)に接触

アロンソ:なんて馬鹿げたルールだ。あそこで赤旗なんて
クローニン:同感だよ
アロンソ:でもスタート前の順位に戻るかもね。昨年のシルバーストンみたいに
クローニン:そうなるのを期待しているし、そのつもりで準備中だ。車体にダメージは?
アロンソ:大丈夫だ。問題ない。とにかく(順位の戻しを)確認してくれ。絶対にそうなるべきだよ

 そしてサインツは事故の責任を問われ、5秒ペナルティを科されてしまう。

アダミ:5秒ペナルティだ。
サインツ:ありえないよ、リッキー。入賞圏外になるなんて。とても受け入れられない。少なくともレース終了まで待つべきなんだ。そこで僕の言い分を聞くまでね
アダミ:了解した
サインツ:そうじゃなくてさ。頼むよ、頼むよ。このペナルティは厳しすぎる。僕たちは3番手と4番手を走ってたんだよ。それがたった1周の事故で、ポイント圏外だ。

 この後サインツは、「プリーズ!」を4回連呼。しかし5秒ペナルティは覆らず、サインツは12位完走に終わった。

 一方、多重事故を切り抜けたヒュルケンベルグは4番手に。角田も5番手に大躍進した。

ヒュルケンベルグ:角田が僕の後ろにいるの? マジか
ギャノン:マジだよ
ヒュルケンベルグ:ものすごいジャンプアップしたわけだ
ギャノン:ああ。だが残念だけど順位は戻ることになった。理由はわからない

 そして残り1周はSC先導となり、フェルスタッペンがオーストラリアGP初優勝を遂げた。

ランビアーゼ:よくやった!
フェルスタッペン:そうだね。けっこう時間がかかってしまったけど、勝ちは勝ちだ
クリスチャン・ホーナー代表:ここで僕らが勝ったのは2011年以来だし、きみの初勝利だ。おめでとう!

 4位は幻になったものの、ヒュルケンベルグは7位でF1復帰後初入賞を果たした。しかしマシンに異常が発生する。

ヒュルケンベルグ:何かおかしい。ギヤのシンクロか、何かだと思うけど。
ギャノン:クルマをすぐに止めるんだ。すぐにだ! 安全な場所に止めてP1、5秒待ってP0だ。そしてERSジャンプで脱出だ。まだ危険だからね

 普通に走行している時のモードがP2。コース上でマシンを止める場合、まずP1に切り替え、P0で完全シャットオフになる。それでもまだ感電の危険があるので、飛び降りろと指示が出た

 16番グリッドスタートのピアストリもサバイバルレースを生き残り、自国レースでF1初入賞を遂げた。

トム・スタラード:サインツの5秒以内にいるから、きみは8位のはずだ。よくやった。自国レースでポイント獲得だ。
ピアストリ:クール! 初入賞だ! しかもホームレースで。ありがとう! 僕自身は、キャリアベストのレースじゃなかったけどね。メルボルンのファンにも感謝だ

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