セベ、オラサバル、ガルシア…ラームが受け継いだグリーンジャケット

締めくくりも先人にならった(David Cannon/Getty Images)

◇メジャー第1戦◇マスターズ 最終日(9日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7545yd(パー72)

4打のリードがあっても、最終18番で必死にパーを拾った。それこそ、ジョン・ラーム(スペイン)が憧れたヒーローのスタイルだったから。くしくも4月9日は、故セベ・バレステロスの誕生日。そして、2度目のマスターズ優勝から40年の節目でもあった。

「まだ実感が湧かない。セベがキャプテンを務めた1997年のライダーカップがなかったら、僕はゴルフをやっていたかも分からないんだ。彼はきょう、僕を応援してくれたと思う。優勝して泣くなんて思ってもみなかったけど、さすがにグッと来たよ」とかみ締めた。

最終ラウンドでブルックス・ケプカとの2打差を鮮やかにひっくり返した4日間を振り返ってみれば、初日1番は4パットのダブルボギーから始まった。第2ラウンドが午後組のペアリングとなったことで2日目の中断を挟み、3日目の朝は冷たい風雨の中をプレーすることを強いられた。

「でも、腹が立ったのは(第3ラウンドの残りを回った)今朝の16番だけなんだ。13番を3パット、15番を3パット、そして16番でひどいショットを打ってボギーにしてしまった。少なくともそのうちの1打は避けられたと思ったからね」。まさかのスタートホールも、厳しいコンディションでの戦いも、大きな体と冷静な思考で受け止めた。

スペイン勢の物語をさらに紡いだ(提供:Masters Images)

6番でボギーをたたいたケプカをかわしたが、9番では自らも最終ラウンド唯一のボギーを喫した。「セベのためにやってくれ!」。パトロンの叫びがサンデーバックナインの活力になった。胸を張ったのは14番のセカンドショット。木の枝も邪魔になる右ラフから8Iでカットして奥のピンまで飛ばし、傾斜を使って1.2mに絡める2連続バーディでライバルを突き放した。

スペイン勢がオーガスタで紡いできた歴史を物語る勝利でもある。ホセ・マリア・オラサバルが2度目の優勝を飾った1999年にローアマに輝いたのがセルヒオ・ガルシア。そのガルシアがメジャー初制覇を遂げた2017年にラームが初出場した。先人たちに続いただけでなく、「全米オープン」と「マスターズ」のタイトルを獲得した初めてのスペイン人になった。「メジャーの中でも、かなりいいコンビだ。達成できたことに感謝しかない」と、ことさらに喜んだ。(ジョージア州オーガスタ/亀山泰宏)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン