『プロトン・アイリスRX』戦線復帰にハンセン製プジョーも参戦。王者も防衛へ新車投入か/EuroRX1

 WorldRX世界ラリークロス選手権の併催戦として、今月末の4月29~30日に幕を開ける2023年のEuroRX1に向け、オリー&パトリックのオドノヴァン親子が強力な布陣を形成。父は昨季前半戦に投入以降、シーズンを回避して技術的アップデートを続けてきた『Proton Iriz RX(プロトン・アイリスRX)』を戦線復帰させ、息子のパトリックは#YellowSquadの支援を得て、最上位クラスで活躍したハンセン・モータースポーツ製の『プジョー208WRX』を投入するとアナウンスした。

 一方、昨季チャンピオンに輝いたアントン・マルクランドは「本来、参戦予定はなかった」今季プランを覆し、所属するSETプロモーションと「新たなプロジェクト」に向け合意。新規車両でのタイトル防衛に挑む。

 元イギリス王者でもあるオリー・オドノヴァンは、2022年に世界初の『プロトン・アイリスRX』をデビューさせたが、ハンガリーとスウェーデンでポイントを獲得したものの「永続的に発生する技術的な問題」により、わずか2戦でシリーズからの早期撤退を余儀なくされていた。

 しかし、ワークショップに戻って数カ月の作業が施されたプロトンは、昨季FIA RX2eでタイトルを獲得した息子パトリックの手でアイリッシュ・ラリークロス選手権に参戦して勝利を収め、この4月末にハンガリーのニーラドで開催される今季EuroRX1開幕戦に、ふたたび父のドライブでシリーズ復帰を果たす。

「昨年、このプロトンの計画は想定どおりにいかなかったが、チームは我々が遭遇した問題を解決するため懸命に働いてくれた。そしてパトリックは最近このクルマでアイルランド選手権に出場し、力強い結果を残してくれたんだ」と語った2007年イギリス選手権王者のオリー。

「昨年7月のホーリエス以来、私はこのアイリスで適切なシートタイムを得ていない。だが、この冬に参戦したラリーは本当に楽しかったし、ドライバーとして鋭敏な状態を維持するのに役立ってくれたことを願っている」

 一方、2022年のFIA RX2eチャンピオンシップのタイトルホルダーとして、晴れてEuroRX1昇格を果たす18歳のパトリックは、その同じ年に父と同様、史上最年少で英国ラリークロス・チャンピオンを獲得するなど、新進気鋭のスターとして確固たる地位を築いた。

 その実績を提げ、父の運営するチームRXレーシングから上位カテゴリーに挑戦すべく、最高峰クラスで幾度も優勝を経験した最新仕様のスーパーカーを取得した。

元イギリス王者でもあるオリー・オドノヴァンが、引き続き『Proton Iriz RX(プロトン・アイリスRX)』のステアリングを握る
息子のパトリックは、新たにHansen Motorsport製の『プジョー208WRX』でEuroRX1昇格を果たす

■ケビン・ハンセンは18歳のパトリックを「未来のスター候補」と目する

「これはまさに“ビースト(獣)”のようなクルマであり、競争力のあるパッケージでEuroRX1挑戦に向かうことができる立場にいるのは本当に良い気分だ」と興奮気味に語ったパトリック。

「僕らは今年何をすべきかを評価するため、本当に懸命に取り組んできた。これは僕のキャリアにとって大きな前進だと思っている」

「僕の目標は最終的に世界選手権に出場し、できればタイトルを争うことさ。そのため、ここ数年は可能な限り多くの経験を積むことがすべてだ。今季のEuroRX1にプジョー208WRXで参戦できることで、まさにそれが達成できると信じている」

 そのパトリックに豊富な経験と専門知識へのアクセスを提供する#YellowSquadは、プジョー208WRXを手掛けたハンセン・モータースポーツの傘下で運営される若手ドライバープログラムであり、オーナーのケネス・ハンセンと#YellowSquad創設者のケビン・ハンセンは、パトリックと拠点近郊で実施した短いシェイクダウンの成果も踏まえ、今季の見通しについて強気の姿勢を示している。

「2023年のラインアップにパトリックが加わったことを本当にうれしく思う」と、2019年WorldRX王者ティミーの実弟で、自身も優勝経験を持つケビン。

「彼は昨年のRX2eで最有力候補のひとりと目されながら宿願を果たし、スーパーカーでイギリス・ラリークロスチャンピオンにも輝いている。彼がラリークロスの未来のスター候補であることは間違いないね」

「18歳の彼は非常に才能があり、この#YellowSquadのファミリーに加わったことに非常に興奮している。以前の内燃エンジンのプジョー208を彼がどのように乗りこなすかを楽しみにしている」

 一方、昨年のヨーロッパ選手権で3度目のタイトルを獲得したマルクランドは、わずか11時間の契約交渉で合意に達し、激戦のシリーズで「新しいプロジェクト」を引き受けることを決断した。

「SETプロモーションは昨年の優勝車を売却していたから、しばらく何もしないように見えていたが、ユッシ(・ピノマキ/チーム代表)から『やりがいがあって、楽しい』と感じられるアイデアを持ち掛けられたんだ」と明かした30歳のEuroRX1チャンピオン。

「この新しいプロジェクトで僕にプレッシャーはないけれど、僕らの集合的な経験が、この挑戦を素晴らしいシーズンに変えることができるのを願っている」

 まだ参戦形態や投入車両など詳細は調整中とのことだが、開幕戦の会期前には正式なチーム体制がアナウンスされる見込みだ。

#YellowSquad創設者のケビン・ハンセン(左)も「彼がラリークロスの未来のスター候補であることは間違いない」と太鼓判を押す
昨季チャンピオンに輝いたアントン・マルクランドは「本来、参戦予定はなかった」今季プランを覆し、所属するSET Promotionと「新たなプロジェクト」に向け合意した

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