もしお金のプロが新社会人だったら…。初任給22万、一人暮らしの投資戦略を考えてみた

4月より新社会人となる方、おめでとうございます。学生時代とはまた違う新しい環境で、充実した毎日を過ごされることと思います。そんな新社会人のうちから、お金を増やすために考えたいのが投資戦略です。今回は、初任給22万円・都内近郊在住の一人暮らしの新社会人を想定して、投資用のお金をどう捻出するか、どんな投資をするのかという投資戦略を考えてみました。


新社会人の収入と支出はどうなっている?

お金を増やすには投資が欠かせない時代ですが、投資するには元手となるお金が必要です。毎月の収入と支出から、投資の元手となるお金がいくら出せるかを考えてみましょう。以下は、初任給22万円・都内近郊在住一人暮らしの収入と支出平均データです。

●新社会人の収入と支出

※左表:所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ。社会人1年目は住民税支払い無し
※右表:総務省「家計調査2022年 単身・勤労者世帯34歳以下」、不動産流通推進センター「2022不動産統計集」より筆者作成

毎月の給与からは、税金や社会保険料が天引きされます。銀行口座に振り込まれる「手取り」の給与は、税金や社会保険料を引いたあとの金額です。今回の例では、給与額面は22万円でも、手取りは約18.4万円になってしまうことがわかります。なお、住民税は前年の所得をもとに課税される税金のため、社会人1年目は住民税がかかっていません。

対して支出は、家計調査データと不動産流通推進センターの「東京圏の賃貸マンションの家賃相場の推移」のデータに基づいたものを記載しています。家賃については、都内ワンルームマンションの平均です。

その結果、支出の合計は約19.9万円となりました。手取り給与は約18.4万円ですから、初任給22万円・都内近郊在住の一人暮らしの新社会人の家計は、このままでは赤字になってしまいます。投資をするより前に、黒字家計にする必要があります。

最優先は「支出の削減」

収入を増やすのはなかなか大変です。会社で成果を上げる必要がありますし、仮に成果が上がったとしても、給与考査は年1~2回程度の会社が多いでしょう。それに、収入が増えると税金や社会保険料も増えるため、仮に給与が1万円増えても、手取りは1万円も増えません。

そこで先に取り組みたいのが、支出の削減です。支出の削減は自分の工夫次第でできますし、1万円削減すれば使えるお金が1万円増えるからです。

節約は毎月決まって一定額発生する固定費から行いましょう。固定費には、住居費、通信費、水道・光熱費、保険料、自動車費、その他年会費や月会費などがあります。固定費は、金額が大きなものが多く、1度見直すと効果が長続きします。

先に紹介した統計データからは、家賃と通信費に大きな削減の余地があると考えます。

●家賃
家計に占める家賃(住居費)の割合は、手取り金額の20~25%、首都圏在住でも最大30%に抑えるのが理想です。統計データでは、37%にのぼっていますので、削減が急務です。

たとえば、1つの住居に複数人で住んで生活するシェアハウスを利用するのも一案です。シェアハウスの家賃のおおよその相場は、同エリアの賃貸住宅よりも1万円~2万円程度安くなっています。

もちろん、物件により金額はさまざまですが、東京都内でも、
・大田区:賃貸8万円前後シェアハウス5万円前後
・練馬区:賃貸7万円前後シェアハウス5万円前後
と、シェアハウスのほうが安くなっていることがわかります。

●通信費
スマホ代は節約の王道です。大手キャリアのサービスを利用していると、毎月1万円近くの費用がかかることもあります。スマホの格安プランを利用すれば、
・楽天モバイル 月1,078円~
・UQモバイル 月1,628円~
・ワイモバイル 月2,178円~
などと、より安くスマホを利用できます。そのため、年数万円の節約につながる方も少なくありません。余ったデータ容量も翌月に繰り越せます。

統計データの支出から、仮に家賃を月5万円、交通・通信費を月1万円に抑えることができれば、支出の合計は次のようになります。

●新社会人の支出(削減後)

支出の合計は約19.9万円から約16.4万円に。3.5万円ほど減らすことができました。これで家計は、約2万円の黒字です。

さらに、ほかの費用でも節約を目指しましょう。たとえば電気とガスを同じ会社から購入する「電気・ガスセット割」を活用すると年数千円の費用削減ができる場合があります。シャワーを節水シャワーにしたり、節水コマを取り付けたりすると年5,000円から1万円程度の削減につながります。冷蔵庫の設定温度を「強」から「中」にして、冬場のエアコンの温度を20度にするだけでも、あわせて年3,000円程度削減できます。また、そもそも「家具・家事用品」「被服及び履き物」は毎月購入する必要はないでしょう。

一方で「教養娯楽」は一見減らしたほうが良さそうな支出に見えます。しかし、教養娯楽の費用を削りすぎると、今の生活を楽しめなくなってしまいます。もちろん、行き過ぎた支出はNGですが、そうでなければ、削る必要はないと考えます。

投資を始める前に、3カ月分の生活費の預貯金を貯めよう

黒字家計になったとしても、すぐに投資を始めてはいけません。投資は、お金が増える可能性がある一方で、減る可能性もあるからです。不測の事態が起きてお金が必要になったとき、貯蓄がまったくない、投資でお金を減らしているとしたら、困ったことになってしまいます。

万が一に備えるためにも、投資を本格的に行うのは、6か月分の生活費を預貯金で貯めてからにしましょう。今回の例では、16.4万円×6か月=98.4万円ですから、約100万円です。ただ、いきなり100万円貯めるのは大変ですし、時間もかかってしまいます。そこで、当面の貯蓄目標として、まずは3カ月分の生活費を目指します。約50万円貯まるまでは投資はせず、預貯金を増やしましょう。

毎月貯蓄に回せる金額は2万円なので、毎月の貯蓄だけだと約2年かかります。いいかえれば、投資できるようになるまでに約2年かかるということです。これではちょっと時間がかかるので、ボーナスがある場合、ボーナスの半分以上は貯蓄に回したいところです。仮に毎月の2万円とは別に年2回、ボーナスを15万円ずつ貯蓄した場合、50万円は1年かからないで達成できます。

3カ月分の生活費を貯めたら、毎月の貯蓄金額のうち、数千円をつみたてNISA(2024年からは新しいNISA)に積み立てます。通常、投資の運用益には20.315%の税金がかかりますが、NISAでは非課税になるため、お金を効率よく堅実に増やせます。そのうえ、解約も自由なので、今後の結婚・出産・子育て・余暇資金など、さまざまな用途で使うお金を増やせます。

つみたてNISA(新しいNISA)で投資する商品は、全世界株インデックス型投資信託、バランス型投資信託からリスク許容度(自分が取れるリスク度合い)に応じて選びましょう。投資信託の選び方について、詳しくは以前の記事で説明していますので、合わせてご覧ください。

金融資産への投資が全てじゃない。自己投資にも振り向けよう

金融資産への投資を増やすことも大切ですが、特に新社会人のように若い方ならば、自己投資にお金を使うことも大切です。さまざまな経験を積んだり、勉強して資格をとったりすることで自分のスキルが上がれば、毎月の給与も上がるからです。

とはいえ、自己「投資」です。投資である以上、リターンを考えて行うことが必要です。費用対効果の低い自己投資は、無駄遣いでしかありません。

仕事ではよく「PDCAを回せ」と言われますが、自己投資でも考え方は全く同じです。お金も時間も無限にあるわけではありませんから、まずかけられるお金と時間を決め、いつまでにどうなりたいかの目標を立てる(Plan)。お金をかけた後(Do)、必ず振り返りを行って効果を検証し(Check)、また次に生かすこと(Action)が求められます。

一番シンプルな自己投資は本を読むこと。1500円くらいの投資で実際に成果を残した人の経験や教えが簡単に手に入るので、リターンがかなり大きいです。まずは月5~10冊を目安に読んでみてはいかがでしょうか。図書館を活用すれば、費用も抑えられます。

経済圏・ポイント投資も有効活用しよう

系列の多種多様なサービスを複数使うことで、サービスがより便利になったり、割引やポイントなどの特典を受けられたりする「経済圏」。経済圏を活用することで、買い物の節約につながります。

また、ポイントで金融商品に投資できる「ポイント投資」のサービスも。通常の投資と同じように利益・損失が出ますが、元手はポイントですので、現金は減りません。お金が少ないときに取り組みやすいのがメリットです。

たとえば、楽天グループが展開する「楽天経済圏」では、楽天関連のサービスを利用することで共通の「楽天ポイント」が手に入ります。しかも、楽天の各サービスの利用条件を満たすと「SPU」(楽天スーパーポイントアッププログラム)の対象になり、楽天市場で買い物した場合のポイントが増加します。楽天ポイントは、買い物のときに1ポイント=1円で利用できます。また、「楽天ポイント投資」では、投資信託や株式の売買に楽天ポイントを利用できます。

決済アプリ「PayPay」では決済時のポイント還元率は基本的に0.5%ですが、月30回300円以上・10万円以上利用で翌月の還元率が+0.5%となります。また、Yahoo!ショッピングでの決済はポイント最大5%還元になるほか、時期ごとのイベントやクーポンなどでもポイントがアップします。PayPayポイントも1ポイント=1円で買い物に利用できますが、「PayPayポイント投資」で米国企業に分散投資する「スタンダードコース」など5つのコースから選んで投資が可能。各コースの投資先の値動きに合わせて、PayPayポイントが増減します。

以上、社会人1年目の投資戦略を紹介してきました。社会人2年目からは住民税の支払いも始まるので、毎月の家計がさらにきつくなってしまいます。しかし、社会人1年目のうちから家計の節約、そして投資を始めて、お金が貯まる家計にしておくことが重要。長く続けることでお金は堅実に増やすことができます。何事も最初が肝心です。ぜひ取り組んでみてください。

© 株式会社マネーフォワード