【おんなの目】ちくわ考

 スーパーマーケットで練製品の棚を見るのは楽しい。特に水産練製品の棚は面白い。エソにスケソウダラ、サメ類等のすり身に塩等の調味料を混ぜ、成型して加熱して仕上げる。噛むと広い海の恵みの美味しさが口中に広がる。

 かまぼこ、はんぺん、ちくわ、さつま揚げ等。丸や四角形と形も様々だが、私の目はちくわにくぎ付けになる。

 ちくわ。あの真っ直ぐの筒形は、あれは生命の原型ではないか。上から空気や食物、生きていくのに必要な物が入り、吸収され下から出ていく。私も一本の筒だ。ちくわだ。

 釣具店の餌売り場に、ユムシがいる。ユムシは、円筒状で黄褐色。透明に近いので身体の中が見える。上から水を吸い、下から出している。生命の原型はこうだ、ちくわだ。

 話は飛ぶが、絵本で見ると、地球最初の頃の生き物は、堆積物中にいて、だいたいミミズのような簡単な筒状だ。約五億五千年前頃のカンブリア紀になると形も様々になるが、ナメクジやヘビ、トカゲのような筒状のものが多い。私の好きなセルカーキアは絵本では銀色で洗濯機の排水ホースのような蛇腹だ。

 私は筒だ。私はセルカーキアでありユムシでちくわだ。私とは何か。どこからきてどこに行くのか。ちくわの前で今日も問い続ける。

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