「色好み」の女性との出会いも 京の馬場の役割など考察 「伊勢物語」研究者ら

伊勢物語などに出てくる「右近の馬場」について語られた講演会(京都市左京区・京都府立京都学・歴彩館)

 馬を切り口に、京都で育まれた歴史や文学の背景に迫る公開講演会「伊勢物語と馬」が、京都府立京都学・歴彩館(京都市左京区)で開かれた。平安京の馬場などについて、大学名誉教授が考察を語った。

 山本登朗・関西大名誉教授は、伊勢物語(天福本)で主人公の貴族・在原業平が「色好みともいえる大胆な女性」と出会った「右近の馬場」について、今昔物語や太平記も交えて解説した。

 この馬場は多くの説話の舞台となり、計49話を数えるという。流鏑馬(やぶさめ)ができ、人でにぎわう場ゆえ、乱に敗れた藤原純友の首がさらされ、足利尊氏が京へ進軍した際の都への出入り口にもなった。

 京内にあった「左近の馬場」の説話(8話)とは対照的で、北野天満宮辺りという、京郊外ながら都に近接した右近の立地性が背景にあるという。

 一方、山中章・三重大名誉教授は、平安京などにあった馬を調教・飼育した役所「馬寮」を語った。先立つ平城京のほか、中国・唐やローマ帝国の例を踏まえ、遺構や立地の共通点にも触れた。

 講演会は3月26日、古代学協会(中京区)が公開行事として催し、約100人が聞いた。

© 株式会社京都新聞社