驚きの「廃業宣言」です。底抜けに明るいキャラクターで人気者となった「タケノコ王」が直売所をあと2年で閉店すると決めました。廃業に至る背景にはタケノコ農家を取り巻く深刻な事情があるようです。
みなさん、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?派手なピンクの足袋に冬でもピンクのタンクトップ…。テレビのバラエティ番組などで「タケノコ王」と呼ばれ、全国的な人気者になった静岡県富士宮市のたけのこ農家、風岡直宏さん(49)。タケノコの魅力を誰よりも伝えてきた人物ですが、2年後の春を最後に経営する直売所「風岡たけのこ園」を閉店すると決断しました。
<女性客>
「まだ2年ぐらいやるでしょ」
<風岡さん>
「来年、再来年で…。責任を果たしてやめようと思っています」
知らせを聞き、11日に店を訪れた常連客がいました。
<客との会話>
Q.毎年こちらにいらっしゃっているんですか?
「長年。寂しいですね。きょう静岡新聞で彼の顔を見たのでさっそく来たんですよ」
「寂しい」
風岡さんは自らの店でさまざまな商品を販売。県内産のタケノコを熱くPRしてきました。
<風岡さん>
「これが白子ですね」
<西川美奈江記者>
「どんな味?」
<風岡さん>
「アクが少なくて、タケノコの味が濃い」
風岡さんの収穫するタケノコはアクが少なく味が濃いのが特徴で、ミシュランの星付き料理店から注文が相次ぐほどのおいしさです。
それなのになぜ、閉店という重い決断に至ったのか?背景にあるのは自らの体調とタケノコ農家の抱える大きな課題です。
<西川美奈江記者>
「どうして決断を?」
<風岡さん>
「足が悪いのはもちろんなんですけど、子どもにバトンタッチできない。収入が少ないので雇えないんですよ、子どもを」
日本一の味を求めて年間300日は山に入る風岡さんですが、若いころに酷使した右足の状態が思わしくなく、タケノコ農家を続けるのは難しくなっていました。
<風岡さん>
「コロナよりも今年の物価高の方が影響がありますね」
さらに、近年の物価高が、高値で取引されてきた風岡さんのタケノコには逆風に。子どもに後を継いでもらうほどの収入が確保できないと判断し、3月、SNSで廃業を宣言しました。
<風岡さん>
「あと2年全うしますよ、タケノコだけで」
取引先に迷惑が掛からないよう、あと2年現役を続けると決めた風岡さん。最後まで全力で最高の味を追い求めたいと話しています。