<金口木舌>「桜」を誇りに育てて

 かつて名護市勝山に、士族が移り住んだ「猫川(マヤーガー)」という屋取集落があった。山あいの耕作に向かない地域だが、1877年頃には那覇から指導者を招き、私塾を建てたと伝わる

▼やんばるで公教育が始まる前のこと。不安定な暮らしの中で教育を通して子どもたちに将来を託したのだ。勝山の人々は誇りとともに先人の足跡を集落の歴史に刻む

▼本島北部で初めての県立中高一貫校となる名護高校付属桜中学校が開校した。期待に胸を膨らませているのは新入生だけではないだろう。将来を担う人材育成に地域の期待は大きい

▼名護市内で暮らす新入生の一人は「北部に中高一貫校ができたので、受験に挑んだ」と語った。朝の6時前、眠い目をこすりながらバスに乗り、名護から中南部の中高一貫校に通う生徒の話も聞いた

▼どこに住んでいても、高い水準の教育が受けられる機会の創出は、人々が住み続け、持続可能な地域にするための一歩といえよう。新たに咲いた桜が北部地域の誇りに思えるよう、地域で大切に育ててほしい。

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