会社員の副業は白色申告、不動産投資は節税になる…勘違いしがちな【税金】の知識

すっかり春本番となり、「新しいことを始めたい」「次の一歩を踏み出したい」と思っている方も多いかもしれません。そんな時、せっかくやる気を出してネットで情報を集めても、読んだ記事のオイシイ文字に踊らされて、自分の都合の良いように勘違いし、間違ったスタートを切ってしまっては、なんて……嘆かわしい!

今回は、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが、これまで受けた税の相談の中で、勘違いして損してしまっていたケースを紹介します。


会社員で副業をしている人は白色申告でいい?

「会社員の副業は白色申告でいいですか?」と質問いただくことがありますが、どの方にも必ず「はい」と答えられるわけではありません。ではどんな時が該当するのか、具体的に見てみましょう。

給与収入があって副業をしている場合、副業に関する確定申告方法(所得の区分)は3種類あります。

(1)事業所得(青色申告)
(2)事業所得(白色申告)
(3)雑所得

ただし、年末調整済みの給与所得があって、それ以外の所得(儲け)が20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。

以前、私のところに相談に来た方で「給与収入があって副業をしている人は、白色申告しておけばいいと聞いたので、ずっと白色でやっています」という方の申告内容を見ると、青色の方がメリットがあったので、青色申告の方法をお伝えしたことがあります。噂を聞いて鵜呑みにして、何年も毎年13万円もの税金を多く納めていたなんて、なんて……嘆かわしい!

まず、事業所得と雑所得の違いは、①経常的に事業を営んでいる、②開業届を出している、③帳簿をつけている、の3要件を満たせば、事業所得として所得税の申告ができます。

その場合のメリットとしては、雑所得では経費が多くなり、赤字経営の場合は「マイナスはゼロとして計算する」という決まりがあるため、給与など他の所得からマイナス分を引くことができませんが、事業所得ではマイナス分を他の所得から引くことができます。

ただし「経常的」、つまりずっとその仕事を続けていて、収入を定期的に得ていることが要件になりますので、会社員としての片手間で、年に数回しか収入が入らないような場合は事業といえません。

次に、青色申告と白色申告の違いは、青色なら帳簿をキッチリつけていて税金の優遇を受けられますが、白色なら簡易な帳簿で税金を安くする優遇がない、という違いがあります。しっかり稼いで利益が出て、副業でもさらに税金を納めるような状況なら、少し頑張ってキッチリとした帳簿をつけることで、副業で入った儲け分の税金を安くすることができる、ということです。

逆に経費が多く、儲けが出なくて赤字続きの事業なら、青色でも白色でも税額は変わらず、雑所得よりも事業にしておいた方が、給与所得から赤字分を引けるのでお得になりますが、キッチリした帳簿をつけて必死で青色申告をする必要は無いかな……という感じですね。

「会社員の節税は、少しだけ事業をやって、マイナスを出しておいたら税金が安くなるよ」なんて噂を聞いて、白色申告で税金を下げようとしていた方もいるかもしれませんが、「事業所得」というからには、経常的に収入を得ていなければならない上に、帳簿をつける要件もありますので、注意してください。

ここまで読んで、ピンときた方も多いでしょうが、私のところに相談に来られた方は、毎年しっかりと副業で利益を上げて、給与分の税金以上にしっかりと納税されていたのです。
「副業なら白色でいいよ」なんて噂を鵜呑みにせず、しっかり青色と白色の違いを理解していれば、「複式簿記」と呼ばれるちゃんとした帳簿をつけるだけで、毎年10万円以上の税金が安くなっていたのです。

複式簿記で簡単に帳簿がつけられる一般の方向けの会計ソフトもあり、毎月1,000円ほどの価格で提供されています。年間10万円以上という節税金額を考えると、ソフトの利用料なんて安いものですね。

これから副業を始めようという方は、青色と白色の違いをしっかり理解して、スタートさせてくださいね。知識だけで税金が安くなって「なんて……喜ばしい!」ですよ。

経費を必死であげる必要性は?

事業主の方から時々「税金取られるぐらいだったら経費使わないと」というセリフをお聞きすることがあります。

納税額が大きくて、それをなるだけ抑えたいという気持ちはよく分かります。しかしその後、同じ事業主さんから聞いた言葉

「経費使わないと……と思って、随分いらんものを買ってしまったわ〜」

って、いらんのかーい!

5万円分のいらない物を買ったら、5万円が手元から出て行き、手元にはいらないものが残ります。節税金額は所得税の税率によりますが、15〜20%ぐらいの方が多いと思います。つまり税金は7,500円から10,000円ほど安くなったとはいえ、いらない物を買うほうが損していると思いませんか?

今後、事業の売上を上げるため、しっかりと考えて新しい設備や備品を購入するなど、何かに先行投資するのならいいのですが、やたらめったら経費をあげようという考え方は、感心できません。いらない物を買わなければ、その5万円は手元に残り、税金を納めたとしても約4万円は自由に使うお金が残るということです。

大前提として、そもそも売上に繋がらないような「いらないもの」は、経費にはなりません。事業所得で経費に落とせるものは、売上をゲットするために使ったものである必要があります。事業の売上が獲得できるように、どんなものを使えばいいのか、しっかり検討して経費を使うようにしましょう。

不動産投資が節税になる?

「不動産投資をすると、節税になると聞いたので始めようと思います」というご質問をいただくことがありましたが、これも「必ず節税になります」とは言い難いです。不動産投資を始める前に、まずは不動産投資をすると税金が安くなるメカニズムを理解しましょう。

(1)不動産を購入する
(2)その不動産を貸して不動産収入を得る
(3)買った不動産の建物分を一定の年数で割った金額などを経費として収入から差し引く
(4)収入以上に(3)の経費が多ければ儲けがマイナスになり「赤字」となる
(5)税金の計算をするときに給与の収入分から不動産の赤字分を差し引く
(6)結果、税金が安くなる

注意すべき点は節税になるケースだと、税金が安くなる手前で随分と損している可能性があるということです。

私が確定申告のお手伝いをしているみなさんは、不動産所得で赤字になっている方はほとんどいません。一般的に不動産所得は経費をあげにくいので、プラスになることがほとんどです。マイナスになるケースは、入居者がいなくて空き家の期間が多かったり、大規模な修繕をして経費が多く出たりというケース。そもそも、赤字になっているということは、不動産投資の収支としては損して失敗していることになります。

売却した時の損得もあるので、一概にはどちらとは言えませんが、土地の分は経費にならないということを考えると、赤字で申告するなんて、トータルでえらい損しているのではないでしょうか? なんて……嘆かわしい!

確かに不動産投資は、現金や預金を不動産という形に変えて持つことで、相続税などの節税効果があるだけでなく、家賃収入を得ることで給与収入以外の安定収入を得るというメリットもあります。一方、毎年の収支だけではなく、不動産の取得時には購入のための仲介手数料や登記費用、登録免許税に不動産所得税など多くの経費が出て行きます。

節税ぐらいでは回収できないほどの費用を支出することも少なくありません。甘い話にすぐに飛び付かずに、それがどんなメカニズムで、何がいくらぐらいお得なのか、自分で正しく理解してから始めることをお勧めします。


ウェブサイトにさまざまな情報があふれる今、本当に有益な情報なのか、甘い罠なのかを判断するのが難しくなっています。人が言った噂を聞きかじって、いい加減な知識でマネしてみたり、広告の文字に踊らされて余計なお金を支出してしまっては、増やすつもりがかえって貯蓄を減らすことになり、なんて……嘆かわしい!

自分のお金を守れるのは自分の中にある正しい知識です。知識が不十分なうちは思い切った行動は控えて、しっかり学んだ上で新しいアクションを起こせるようになっていただきたいです。

※次回から本連載は隔週となり、次の掲載予定日は4月25日(火)となります。

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