学校はうたう

 机に椅子、靴箱、チャイムと、学校で子どもたちは物や音に囲まれている。もしもそれらがしゃべり出したら…。そんな発想で、詩人の杉本深由起(みゆき)さんの「学校はうたう」(あかね書房)という詩の絵本は編まれた▲「きょうの きみに」と題する一編では、通学路が子どもに話しかける。道の景色はいつも同じに見えて、毎日どこか違っている。〈きょうの きみも/きのうの きみと/まいにち どこか ちがってる〉▲中学校、高校に続き、きのうは小学校で入学式があった。来る日も来る日も、通学路は君の成長を優しく見守っている▲杉本さんは絵本のあとがきに書いている。学校生活が不安になれば、周りの物に〈「命があり、心がある」と思ってみるのです〉と。すると〈ほかの人たちのきもちも、自然と思いやることができるようになります〉▲大人の社会を見渡せば、あまりにも心ない仕業が際立つ。またも大がかりな特殊詐欺が判明し、外国人の技能実習生への暴力、賃金未払いが報告された。詩に心を温めるのは、入学式の季節というだけではあるまい▲絵本にはランドセルが語りかける詩もある。〈かえりみちでは/こっそり おしえてね/きみが きょう/うれしかったこと/かなしかったこと〉。多くの出会いが待つ学校で、心豊かな毎日を。(徹)

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