社説:技能実習「廃止」 枠組み温存は解決せず

 看板のかけ替えでは済まされまい。

 人権侵害が国内外から批判されてきた外国人技能実習制度について、政府の有識者会議は、廃止するよう提案した。

 新たに「人材確保」を目的に加え、実態に即し、労働力として明記する制度の創設を盛り込んだ。

 だが、実習生を仲介し、事業者を監督する「監理団体」などを通じた受け入れ枠組みは維持するとし、中途半端さが目につく。

 監理団体への規制は過去にも見直してきたが、機能不全は明らかだ。労働力としての外国人受け入れと人権の擁護のために、枠組み自体の転換が必要だろう。

 現制度は30年前、発展途上国への技術移転や人材育成を掲げて始まったが、労働力不足を補っているのが実態だ。賃金未払いや暴力だけでなく、受け入れ先を原則変えられないことから、実習生の失踪が後を絶たない。

 有識者会議が示した中間報告のたたき台は、新制度を人材育成と人材確保の両方を目的とするよう求め、働き先の転籍要件を緩和するとした。監理団体に関しては「厳しく適正化する」とした。

 ただ、2017年に技能実習適正化法で団体への実地検査や行政処分をする仕組みができたが、劣悪な実態は変わっていない。

 団体運営の原資は、受け入れ先の事業者が払う監理費で、事業者寄りになりがちという。

 母国の送り出し機関は高額の仲介料を求めるとされ、実習生が借金を背負う原因となっている。

 たたき台では、悪質な送り出し機関には「実効的な二国間取り決めなどを強化する」としており、国が主体的に関わることは避けられない。日本語習得など支援態勢の強化も求められよう。

 転籍の緩和について、地方の事業者や人手不足が顕著な業界からは、都市部や他業種へ人材が集中するのではないかとの懸念も出ている。だが、人材をつなぎ留めるのは当然の企業努力のはずだ。

 即戦力受け入れを目的として19年に始まった特定技能への円滑移行も目指す。対象職種をそろえ、長年日本で働けるようにするという。ただ、特定技能も待遇面での不満が聞かれ、国が期待したほど広がってはいない。

 人口減少で日本は労働力を外国人に頼らざるを得なくなっている。安心して働ける環境や家族の帯同を含め、地域社会を支える仲間として受け入れる態勢づくりに向け、十分な議論が不可欠だ。

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