名古屋グランパスと浦和レッズの「やり取り」が泥沼化…その経緯とは

名古屋グランパスと浦和レッズのやり取りが、泥沼の様相を呈している。

事の発端は、4月9日の明治安田生命J1リーグ第7節、名古屋グランパスvs浦和レッズの試合に向けたチケット販売。

名古屋は、ホームの豊田スタジアムにおいて昨季のホーム最終戦よりアウェイサポーター席をゴール裏Sスタンドの1階から2階へ移行。ただ、豊田スタジアムは施設利用規定にこそ明記されていないものの、上層スタンドでは安全上の理由により「立ち上がっての応援」は禁止されてきた、

チケット販売後、浦和レッズサポーターなどが豊田スタジアムに問い合わせたところ、施設が名古屋側に安全順守を要請。立ち上がっての応援が可能な1階が改めてアウェイ指定席として設定された。

これにより、名古屋は希望者に対して2階席から1階席への振り替えることを発表。対象者の多さを勘案し、浦和もその詳細をクラブの公式SNSなどでサポートし、試合当日、通常よりも多い浦和のクラブスタッフが実際に豊田スタジアムへ赴き対応に当たったという。

そうしたなかで、いくつもの問題が発生していたようだ。

上位対決としても注目された試合は、一進一退の攻防の末スコアレスドローに終わった。

浦和戦翌日の10日、名古屋は「浦和レッズ戦における浦和サポーターの違反行為について」と題した以下のようなリリースを配信。

明治安田生命J1リーグ第7節浦和レッズ戦において、浦和サポーターによる「Jリーグ試合運営管理規定」および「名古屋グランパス観戦ルール」への重大な違反行為が確認されました。

1.立ち入り禁止エリアへの侵入(Sスタンド2F前列および同中央大型ビジョン前エリア)

2.横断幕掲出不可エリアへの横断幕掲出(同上)

3.事前の申請・許可なくSスタンド2Fの座席への装飾物貼り付け

4.警備員への頭突き・胸倉をつかむなどの暴行行為、並びに名古屋サポーターへの威嚇行為

5.禁止エリアの横断幕撤去を行おうとする弊クラブスタッフ・警備員に対する「横断幕を撤去すれば乱闘も辞さない」などの威嚇・恐喝発言

6.上記違反行為者に対する強制退場命令の拒否

名古屋グランパスでは、入場ゲートの開場直後に1、2、3の事象が発生したことを確認し、警備スタッフによる対応をおこなっていたところ、4の事象が発生いたしました。

その後、マッチコミッショナー・Jリーグおよび浦和レッズと両チーム実行委員同席の元で協議を行い、Jリーグ関連規則に則ってホーム・アウェイ両クラブで該当事象に対応することを確認いたしました。浦和レッズよりキックオフ前に1、2、3の事象が解決されるように対応する旨の申し出がありましたが、キックオフ10分前の時点で事案が解決されなかったため、ホームクラブでの対応を行ったところ、5、6の事象が発生した経緯となります。

試合後に再び同様の出席メンバーで上記違反行為の事象および事実確認を行い、違反行為を行った該当者に対しては、浦和レッズが該当者を特定した上で、Jリーグ罰則規定に則った厳正な処分を行うことを確認しております。

また、主管クラブといたしましては、今回上記の各違反行為を防止できず、ご不快な思いをされたすべての皆さまに深くお詫び申し上げます。今後も試合運営管理規定順守の周知を徹底し、ご来場いただく皆さまが安全で安心なご観戦を行っていただけるよう努めてまいります。

なお、今回チケット発売後にSスタンドの運用変更を行ったことでご迷惑をおかけした浦和レッズサポーターおよび名古屋サポーターの皆さまにあらためてお詫び申し上げます。

しかしながら、試合時に発生した上記の違反行為は、運用変更における当クラブの瑕疵と独立した試合運営規則の違反行為であり、多数のご来場者ならびに運営スタッフの安全・安心を脅かす行為で、決して許されものではありません。

また、Sスタンド運用変更に伴う浦和レッズの各種発信においては、クラブ間で合意した内容を独自に書き換え、以下のように事実と異なる認識を与えてしまう発信となることがありました。

・「アウェイ応援席」の座席位置について、3/18(土)のチケット発売前には名古屋グランパスと浦和レッズ両クラブ間で確認を終え、その後3/19(日)の浦和レッズ発信から試合開催まで追加の協議を行った事実はないにもかかわらず、2階から1階への座席位置変更の協議を継続しているかのような発信

・チケット振替の対応について、当初から振替に必要な座席数を確保し、試合当日のスタジアムでは名古屋グランパスが対応することを両クラブで確認を終えていたにもかかわらず、浦和レッズのスタッフが振替対応を行うと誤認させるような発信

これらの発信および今回の浦和サポーターによる違反行為は、クラブ間の信頼関係を失墜する行為として、大変遺憾に思っております。

サッカーを愛するすべての皆さまが、お互いにリスペクトの精神をもって、日本のサッカーを共に盛り上げていけることを願っています。

チケット発売後にSスタンドの運用変更を行ったことで迷惑を被った浦和と名古屋の両サポーターに謝罪しつつ、「しかしながら」と当日確認された立ち入り禁止エリアへの侵入や警備員への暴行行為などに言及。

最後は「これらの発信および今回の浦和サポーターによる違反行為は、クラブ間の信頼関係を失墜する行為として、大変遺憾に思っております。サッカーを愛するすべての皆さまが、お互いにリスペクトの精神をもって、日本のサッカーを共に盛り上げていけることを願っています」と締めている。

すると、これを受けて12日、今度は浦和レッズが「浦和レッズサポーターによる違反行為について(処分の決定)」と「名古屋グランパス様による4月10日の情報発信について」という2つのリリースを立て続けに行った。

詳細はリリース内で確認してほしいが、サポーターの問題行為について、事実確認の完了と処分を発表した一方、もう一つのリリースでは名古屋の情報発信ついての"齟齬”を公表。

「本来こうした企業間の認識合わせはウェブサイトやSNSを通じてではなく、面着、文書またはEメール等を用いて閉じられた場で行われるべきものと思料いたしますが、名古屋グランパス様によります上記発信がそうした形で行われてしまっていることから、それによってご不安やご不満をいだかれた浦和レッズのファン・サポーターのみなさまのお気持ちに寄り添いたく、同様にウェブサイトおよびSNSに本内容を掲載させていただきます」と前置きした上で、具体的な箇所を示しながら名古屋のリリースに書かれていた内容の一部を明確に否定した。

浦和レッズが文章の中で使用した「面着」は、名古屋グランパスの親会社であるトヨタの用語で「対面」を意味する。この単語をわざわざ使用したことやリリースの内容を考えても、建設的なやり取りとは言えない状況が生まれつつあるようだ。

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名古屋側の対応から始まった今回の泥沼劇。両者ともJリーグの"オリジナル10”であり、ピッチ上でリーグを盛り上げていかなければならない立場だけに今後の動向を注視したい。

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