“欧州でのテストなし”のままポルティマオに挑むキャデラック「シミュレーターなら何千周もできる」/WEC

 WEC世界耐久選手権に参戦するチップ・ガナッシ・レーシングのアレックス・リンは、第2戦から始まるヨーロッパラウンドに向け、彼らがキャデラックVシリーズ.Rのテストでの走行距離不足を、集中的なシミュレーター作業で補っていることを認めた。

 CGRのキャデラックVシリーズ.Rは、4月14〜16日にポルトガルのポルティマオで行われる6時間レースでヨーロッパデビューを飾ることになっており、リンはアール・バンバー、リチャード・ウエストブルックとともにこの新型LMDhをドライブする。

 ポルティマオにエントリーしている11台のハイパーカーのなかで、キャデラックは唯一、シーズン開始前にヨーロッパでのテストを実施していないという、ユニークな立場にある。彼らの開発テストはこれまで、セブリング、デイトナ、ロード・アトランタなどを中心に、すべて北米で行われてきた。

 ヨーロッパでの走行距離が不足しているにも関わらず、チームはポルティマオのアルガルベ国際サーキットで走り出す準備ができていると、リンは語っている。

「そう思うね」とリンは話す。

「僕らはシムで多くのハードワークをこなしてきたと思うし、一般的には、リアルなプログラムを構築するようなものだ」

「ここでは再びすべてが新しいが、キャデラック・レーシングには感心させられたよ。全員がとてつもない量の仕事をしてくれたおかげだった」

「でも、クルマが何を望んでいるか僕らは分かっているし、実際、ヨーロッパのサーキットには合っていると思う。ダラーラとキャデラックは、このレースのスタイルに合うクルマを作ったと思う」

 リンは、ヨーロッパのサーキットに適したクルマとは何かという質問に対して、特にエアロダイナミクスを指摘した。

「クルマが適正なウインドウに入っているとき、昔のDPiマシンはバンピーなコースや、車高がそれほど重要でないストリートコースに強く適していたんだ」

「どのレースカーもそうだけど、このクルマはヨーロッパ系の流れ(車速)の速いサーキットに適していると思う」

 リンは、キャデラックがヨーロッパでのサーキット走行の不足を補うことができるのは、集中的なシミュレーター作業のおかげだと考えている。

「全体的に、僕らはシミュレーターのプログラムを強化しているんだ」と彼は指摘する。

「このクルマに搭載されているすべてのシステムには、ソフトウェアの大きな更新などをもたらす必要がある。それをテストする場所が必要なんだ」

「もちろん、新しいコードをクルマに書き込むとき、それは確実なものでなければならない。それが(事前に)できるのは、シミュレーターだけだ。シミュレーターは、毎日何百周・何千周もできる、唯一の場所なんだ。シミュレーターのおかげで、僕らが必要とする現実的なものに近づいてきている」

ポルティマオ戦が行われるアルガルベ国際サーキットの様子

 リンは、2号車のドライバークルーがポルトガルでのイベントに備えて丸4日間シミュレーターで過ごしたと言及したが、キャデラックの現在のシミュレーターへの取り組みは、ポルティマオだけにとどまらないことを強調している。

「(シミュレーター作業は)かなり多いけど、スパに向けてもすでに準備を進めている。状況を説明すると、シミュレーターでこの車を使った最初のトラックはル・マンだったと思う。だから、僕らはすでにバーチャルな世界でこのクルマのツールボックス(工具箱)を作り始めているんだ」

「しかしこれもまた、バーチャルの世界のすべてを現実で同じように再現するための、ハードワークなのだ」

 リンは、今週末のレース前にヨーロッパで実際のテスト走行を済ませておくことが有益であったと認めながらも、シミュレーターでの時間が走行距離不足の影響を軽減してくれると信じている。

「それができればより良いだろうが、最近のレースやり方というのは、本当に良いシミュレーターを持つといことなんだ。そうすれば、テストは必要でなくなる」とリン。

「そうすれば、僕らは学ぶことができる。なぜなら、言ったように4日間連続で、何百、何千周も走ったんだから」

「もし、それを現実に近い形で実現できれば、誰もどこかのトラックに送り込むことなく、シミュレーターでの作業を続けることができる」

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