JR浦和駅の書店で原画の展示も 内気な子どもだった県内在住の絵本作家、絵本を出版「想像を楽んで」

絵本「ちいさなふたりのいえさがし」を手に持つ作者のたかおゆうこさん。左は原画の「いちごの家」=さいたま市浦和区高砂1丁目の浦和蔦屋書店

 埼玉県内在住の絵本作家たかおゆうこさんが今年3月、絵本「ちいさなふたりのいえさがし」(福音館書店、税込み1100円)を出版した。くるみの家に住む小さな小さなおじいさんとおばあさんの物語。たかおさんの子どもの頃の想像から生まれた作品で、「想像を膨らませる楽しさを味わってほしい」と話している。

 たかおさんは東京都生まれ、川口市育ち。母親の実家が長野県で、冬になると祖母から野沢菜とくるみが届いた。硬くふっくらしたくるみ。「大切なものを守っているのでは」と空想した。大人になり、長野県を取材した時、大きなくるみの木を見つけ、おじいさんとおばあさんが八ケ岳の麓にある畑を駆け巡る姿を思い浮かべ、絵本の題材にした。

 大きな雹(ひょう)が降ってきて、くるみの家が粉々に壊れてしまい、小さな小さなおじいさんとおばあさんが家を探しに出かけるストーリー。イチゴ、スイカ、リンゴの家が登場する。作品を読んだ子どもがブドウを透かして見て、どういう家になるのかを想像したという。「想像することを楽しみ、ワクワクしてもらえたらいいなと思う」

 多摩美術大グラフィックデザイン科を卒業。絵を得意としていたが、内気な子どもだった。物語を読み想像することが大好きで、「学校では常に評価される。本を読むことにより、ここにはない別の世界があると想像し、救われる思いだった」と振り返る。

 図書館の存在も大きかった。川口市内に住んでいた頃、近くの公園に来る移動図書館を楽しみにしていた。担当のおじさんから「もっとたくさん本がある」と、当時の川口市役所近くにあった図書館を教えられた。女性の司書に薦められ、多くの本を借りて読んだ。「本はいつまでも宝。子ども時代の全てが詰まっている。家庭だけに任せず、社会がサポートして、子どもが多くのことに出合えるようにしてあげることが大切」と話す。

 学生時代から、いつか絵本を制作したいと考えていた。児童書の挿絵を見た福音館書店の編集者から持ちかけられ、2004年に絵本「ハムスターのハモ」を出版した。創作前には子どもの頃に好きだった絵本や児童文学を読み返し、「奥深さにとりこになった。良い本は子どもも大人も、何かを受け取ることができる」と改めて実感した。

 今回の出版に合わせて、JR浦和駅構内の浦和蔦屋書店は23日まで、絵本の原画「いちごの家」を展示している。原画は貼り絵で制作され、デジタル化してから仕上げていく。たかおさんは「何回も客観的に見ることができる。イチゴをもっとおいしそうな色にしようと考えて、赤色を強めた」。現在は第2弾「ちいさなふたりのしまぐらし」を創作中で、四苦八苦している。

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