<社説>ヤングケアラー5.5% 理解と支援の仕組み築け

 県内の児童生徒の20人に1人がヤングケアラーという結果が出た。県独自の実態調査は沖縄の児童生徒を取り巻く厳しい環境を浮き彫りにした。早急な支援が必要だ。 県内の小学5年生から高校3年生までの全児童生徒13万6605人を対象にした県調査によると、「週3日以上」または「週2日以下だが1日当たり3時間以上」家族の世話をするヤングケアラーと思われる児童生徒は5.5%、約7450人いると推定される。世話をする頻度は小、中、高校生のいずれも約3割が「ほぼ毎日」と答えている。

 ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に担う子どもを指す。児童生徒の2割以上が心身に負担を感じると答えた。世話の時間が長いほど学校の欠席や遅刻、授業中の居眠りなど学業にも影響が出ている。

 家事や家族の世話に追われ、将来を担う子どもが夢や進学を諦めるようなことがあってはならない。気軽に相談できる環境整備が急務だ。教員や地域など周りの大人が子どものSOSに気付き、理解してあげなければならない。その上で適切な支援につなげる仕組みを築くべきである。

 ヤングケアラーへの認知は一定程度広がっているものの、子どもたちが周りに相談しにくい実態がある。家族の世話について相談した経験が「ない」と答えた児童生徒は約7割に上った。このうち、話を聞いてくれる人が「いない」と答えた人は約3割で、相談できずに孤立している状況がうかがえる。

 家族の世話に追われる子どもたちへの理解が広がっているとは言えない。過度な負担に気付き、相談に応じることは周りの大人の責務である。

 調査では、相談窓口として約3割の児童生徒が学校を選んだ。しかし現在、学校の教員不足が深刻化している。教員の負担が重い現状もあり、子どもの悩みに気付いたり、じっくり話を聞いたりしにくい状況がある。まずはスクールソーシャルワーカー(SSW)の拡充を急ぎたい。同時にヤングケアラーへの理解を深め、支援につなげるためにも教員確保が必要だ。この観点からも深刻な沖縄の教員不足を解消すべきである。

 負担を担う子どもを救うためには、親への支援が必要なケースも多いとみられる。選択肢が一部異なるため単純比較はできないが、世話をする対象について「父母」を挙げた割合が全国調査より2倍高く、「きょうだい」の割合が低い傾向にある。ひとり親世帯や共働き世帯が多いこと、親の貧困という沖縄特有の問題も背景にあるとみられる。

 問題改善には貧困対策とも連携した包括的な態勢と支援が肝要だ。ヤングケアラーの実態は家庭によってさまざまだろう。行政、学校、地域の連携で、まずは子どもの心の叫びに気付き、実態に即した適切な支援につなげたい。

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