金利上昇によって不動産投資は終焉を迎えるか?日本の恵まれていた環境が変わりつつある背景を解説

もふもふ不動産のもふです。

足元では金利上昇が見えてきており、「不動産の価格が下落するのか?」「不動産投資はもう終わりなのか?」といった質問をいただくことが増えました。

不動産投資は、銀行融資がとても大切です。そのため借り入れの金利が上昇することによって、返済の金額が増えることにより、手元に残るお金=キャッシュフローが減少してしまいます。家賃収入を当てにしている不動産投資家にとっては、とても大きな影響です。

不動産の価格がどうなるのか−−予想するのは不可能なのですが、個人的な予想としては、下記のように考えています。

  • 金利上昇したら一時的に不動産の価格が下落するが、その後インフレで不動産の価格は上がっていく
  • 不動産投資が終焉することはなく、時代に合わせた投資手法になっていく

今回は、これら私の個人的な見解について、解説させていただきます。


低金利に支えられてきた日本の不動産投資の状況

日本の不動産投資は、世界的に見ても特殊な状況で進んできました。

2010年代は第2次安倍政権によるアベノミクス、日銀の黒田総裁による異次元の金融緩和で史上空前の低金利時代となりました。不動産の金額が大きいので、ほとんどの方は銀行融資を行います。その融資の金利が低いということは、不動産投資家にとってとても有利な時代といえるでしょう。

日本では、不動産を担保に融資期間30年で金利1%前後の融資を受けられ、収益性10%くらいの不動産を買うことも可能でした。不動産投資には、利回りの差を示した「イールドギャップ」という指標があります。

イールドギャップ = 利回り ー ローン金利

イールドギャップがしっかり取れるのは、たぶん日本だけです。イールドギャップが取れると、家賃から銀行に返済をし、そこから経費を払っても手元にお金が残るという素晴らしい状況を作り出すことができます。そしてその手元に残ったお金を元手に、また新たに不動産を購入し、より多くの現金を手元に残す手法で規模を拡大することができます。低金利時代だからこその事象を活用し、日本で多くの不動産投資家が誕生したのです。私の不動産投資家の仲間も、家賃収入だけで暮らしている方が多くいます。

一方でアメリカなどのほかの国でしたら、イメージ的には融資の金利が約5%前後、不動産の利回りも5%くらいというイメージです。あくまで私のイメージなので、数字は参考程度に考えていただきたいですが、イールドギャップは「5% ー 5% = 0%」となり、銀行から借り入れして不動産を買っても、金利だけでほぼ利益を食い尽くすような構造になっているのです。

日本:銀行から融資を受けて不動産を買えば、手元にお金が残り返済が進んでいく
海外:銀行から融資を受けたとしても収入と金利が相殺され、キャッシュアウトしていってしまう

比較すると、いかに日本の不動産投資の状況が恵まれているかがわかりますね!

金利上昇し始めた

超低金利の恩恵を受けている日本の不動産投資の状況ですが、ここにきて少し環境が変わってきました。銀行の融資を決める基準になっている金利は2つあります。

(1)日本国債の金利 (※主に新規に借りる固定金利に影響)
(2)政策金利 (※主に変動金利に影響)

これらの金利が上昇すると、不動産投資の融資の金利や住宅ローンが上昇します。ここの所、この2つの金利が上がるのではないかと予想されています。

日本国債の金利上昇

現在、日本銀行はYCC(イールドカーブコントロール)という金利操作の政策を行っています。日本国債10年物の金利が0.25%以上にならないように、日本銀行が無制限に国債買い入れて金利上昇を強制的に防いでいたのです。

しかし、2022年12月20日(火)に日本銀行がYCCの無制限買い入れの金利を0.25%から0.5%に変更しました。この変更により、日本国債の10年物の金利が、0.5%くらいまで上昇したのです。その影響で、新規に入る固定金利が上昇を始めています。実際に新規に入る住宅ローンの固定金利も上昇し始めています。

フラット35(35年の固定金利)の金利は、1年前の約1.3%から、約2.0%まで上昇しています。

画像:

フラット35「サポートニュース(3月号)」

より引用

今後、YCCが撤廃される可能性もあると予想されています。もし撤廃されると、もっと金利が上昇する可能性もあるでしょう。(もちろん金利が下がる可能性もあります)

政策金利が上昇する可能性も

一方で、日銀が決めている政策金利はマイナス金利を維持しています。マイナス金利の目的は、市場にお金をもっと流通させて、インフレ(物価上昇)を起こしたいという目的から行っています。しかし足元では急激に物価が上昇しており、マイナス金利を撤廃し政策金利の利上げを行う可能性も予想され始めました。

皆さんも「物価が上がった」とか、「食品が値上がりした」「光熱費も上がった」など、実感されたりニュースで見かけているのではないでしょうか?

インフレを抑えるためには、お金の流通量を減らす必要があり、そのために政策金利を上げる可能性が示唆され始めているのです。今後にマイナス金利が解除されるかどうかの予想は困難ですが、もしマイナス金利が解除され政策金利が上昇すると、変動金利が上昇するでしょう。そうなると、住宅ローンなどが上昇していき、かなり大きな影響になるかもしれません。

私を含め、多くの不動産投資家が変動金利で融資を受けています。もし政策金利が上昇したら、少なからず影響を受けるでしょう。

金利上昇で不動産投資が終焉するのか?

ここまで、下記3点について解説してきました。

  • 日本の不動産投資家は低金利の恩恵を受けてきた
  • 国債金利が上昇している→固定金利の上昇
  • 政策金利が上昇する可能性→変動金利が上昇する可能性

その上で、冒頭の「金利上昇によって、不動産投資は終焉するのか?」ですが、私は終焉しないと考えています。これからも不動産投資は残り続けると思いますし、ずっと継続される事業だと考えています。

金利が上昇していく場合にどのようになっていくのか−−まず金利が上昇すると、不動産を買う人が減るので、一時的には不動産の価格が下落すると予想しています。

しかし、ずっと下がり続けるわけではなく、インフレしているので長期的にみると不動産の価格は上昇するのではないかと予想しています。金利が上昇することによって、返済は増える方向に行き厳しくはなりますが、不動産価格が上昇することで負債に対し資産が増え、含み益の状態になっていると予想しています。

もしかしたらインフレによって、家賃も上昇して金利上昇をカバーしていくかもしれません。日本では借地借家法によって、入居者の権利が強いので簡単に家賃を上げることはできませんが、退去のたびに家賃を上げることは可能だと思います。

一方で、もしアメリカのように金利が上昇して5%とかになったら、今までのようにキャッシュフローをあてにした不動産投資はできなくなるでしょう。日本もバブル前までは金利が高く、融資を受けて不動産を買ってキャッシュフローを残すことは不可能でした。むしろ今の日本の超低金利が異常な状態で、これから正常な状態に戻っていくのかもしれません。

だからといって、金利が上がったら日本の不動産投資が終わるとは思えません。理由としては、金利が高いアメリカなど、ほかの国でも不動産投資は盛んに行われているからです。アメリカ人の投資家に話を聞くと、「アメリカ人は不動産の価格は上がり続けるから、若い人は早めに家を買った方がいいと考えている人が多くいる」と、いっていました。

日本もインフレで金利が高いけれど、不動産の価格も上昇し続ける時代になるのかもしれません。一方で、人口が減少している地方では過疎によって不動産の価格は下がりつづけるかもしれません。今後は、より二極化がどんどん進んでいくでしょう。

金利上昇でも不動産投資は終わらない

ここまで、金利上昇による不動産投資の影響を解説してきました。

あくまで私の個人的な予想のため、外れる可能性があることはご了承ください。経済で未来を見通すことは、とても困難です。そのため金利が上がっても下がっても、対応できるようにしておくことが重要です。

金利が上がっても、金利が上がったなりの不動産投資が継続されると考えています。

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