中学生の吉田正尚“強打伝説”の象徴「吉田ネット」とは…福井県鯖江市の所属チーム練習場所に今も

鯖江ボーイズの佐々木監督(右)らが「吉田ネット」と呼んでいる外野フェンス後方の防球ネット=4月4日夜、福井県鯖江市の鯖江市西山公園野球場

 福井県鯖江市の市西山公園野球場に「吉田ネット」と呼ばれる防球ネットがある。米大リーグ、レッドソックスで活躍する吉田正尚選手(福井市出身)が中学時代に所属した硬式野球チーム、鯖江ボーイズで場外本塁打を連発したことをきっかけに、後に外野フェンスの後方に設置された。在籍当時の打撃練習では、選手の保護者らが場外でグラブを手に球拾いをしていたという。チームに残る“強打者伝説”だ。

 多くのプロ野球選手を輩出した鯖江ボーイズの佐々木昭弘監督は「吉田は中学時代も体は小さかったが、スイングスピードとミート力は別格だった」と振り返る。練習拠点の市西山公園野球場は両翼91メートル。中学生には狭くないグラウンドだが、当時の吉田選手は打撃練習で強烈な当たりを何度も場外に放り込んだ。

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 「打球がライト場外の道路や住宅地に飛び出す危険があったので、保護者の皆さんにグラブを持ってライトフェンスの奥に並んでもらった」と佐々木監督。場外弾のボール拾いをしたり、車の通行チェックをして吉田選手の打撃練習を止めたりしていたという。

 市スポーツ課によると、高校野球の試合でも使い、打球が場外に出ることがあったため安全面を考慮。2012年度に右翼、左翼の外野フェンス後方に高さ約7メートルのコンクリート支柱とネットを設置した。グラウンドの一部改修と合わせ費用は約1200万円。

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 吉田選手の在籍から4年ほどたっていたが、佐々木監督は「吉田が打球を飛ばし過ぎたのがきっかけになった。チーム内では伝説のように『吉田ネット』と呼んでいる」と語る。

 さらに強く印象に残っているのは、吉田選手の練習や野球に対する姿勢だ。「打撃練習では自分が納得するまで打ち続けた。チームメートに打席を譲らないほどで、こちらが止めるまでやめなかった」。レッドソックスの本拠地で巨大フェンス「グリーンモンスター」を越えるアーチを放った強打者の足跡は、鯖江にもしっかり刻まれていた。

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