インディカー第3戦ロングビーチ/期待の若手カークウッドが初勝利をパーフェクトウインで飾る

 16日、NTTインディカー・シリーズ第3戦ロングビーチGPの決勝レースが行われ、ポールポジションからスタートしたカイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート)がインディカー初優勝を遂げた。

  アメリカで最もプレスティッジの高いストリートレース、グランプリ・オブ・ロングビーチでカイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート)はインディカー初勝利を飾った。それはキャリア初のポールポジションからのスタートで記録された。

 しかし、この勝利はポールから悠々と逃げ切った楽勝ではなかった。
 

カイル・カークウッドを先頭にレースはスタート

 
 レース半ばには昨年度のロングビーチウイナーで、2度のシリーズタイトル獲得経験を持つジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)にトップを奪われた。

 予選8番手だった彼は、自分より上位グリッドからスタートする7人とはタイヤ戦略を違え、プライマリータイヤでスタート。ハードコンパウンドで温まりの遅いタイヤであるにも関わらず、最初のスタートで一気に4位にまでポジションアップ。

 ファーストスティント終盤にオルタタイヤ勢のグリップが落ちたところでポジションを2番手まで浮上させ、オルタネートタイヤにスイッチしてのセカンドスティント序盤に、タイヤの温まりの速さを武器にしてトップに躍り出たのだ。
 

セカンドスティントでトップに立つジョセフ・ニューガーデン

 
 しかし、ニューガーデンの2年連続優勝はならなかった。

 ファイナルスティントは誰もがプライマリータイヤをチョイス。タイヤの差がなくなっての勝負となったが、燃費が大きな鍵を握るレースとなった。

 1回目のピットストップを大半のドライバーたちは1回目のフルコースコーション中に行った。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)のアクシデントによって出された20周目から24周目のイエローだった。

 これは1回目のピットストップを行うにはやや早いタイミングであったため、そこからゴールまでのレース展開に皺寄せがいく。

 セカンドスティントとラストスティントは長くなり、誰もが燃費をセーブして走らなければならず、シボレーエンジンユーザーはホンダ勢より不利な立場に置かれたのだった。

 セカンドスティントにオルタネートタイヤを使ったニューガーデンは、85周のレースの52周目にピットイン。それに対してグロージャンは翌周の53周目、カークウッドはさらに1周後の54周目にピットイン。

 彼らふたりともがニューガーデンより前にピットアウトした。アンドレッティ・オートスポートはこのオフの間にピットストップの確実性とスピードのアップのためにクルーたちがプラクティスを繰り返していたという。その成果が今日の彼らのワン・ツーフィニッシュに繋がった。

 同じホンダ勢同士であっても、燃費セーブは重要なファクターとなっていた。ポールポジションからスタートしたカークウッドは、マシンの仕上がりが本当に良かったために燃費に気を配りながらの走りでもライバル勢を上回ることができていた。

 逆に予選4番手から2番手へと浮上したロマイン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)は、マシンのハンドリングが今ひとつ自分の好みにマッチしておらず、チームメイトの背後に近づくことができなかった。

 燃費を稼ぐため、ピットから“プッシュトゥパスの使用禁止”を通達されていた彼は、全力でプッシュすることで若いチームメイトがミスすることを期待したが、1~1.5秒の差を縮めることがとうとうできなかった。

 カークウッドは31周という長さになったファイナルスティントでトップを守り通した。インディカーデビュー2年目のドライバーとは思えないほど見事なパフォーマンスだ。

「チームオーナーのマイケル・アンドレッティたちがブライアン・ハータを僕の担当にしてくれたんだが、今週末の彼は僕を導き続けてくれた。彼は僕に、“予選から上位にいれば必要な仕事の半分は達成したようなもの。残りはとても簡単になる”と言っていた」

「“レース前にハードワークをこなし、トップに近い位置からスタートすることができたら、それは速いマシンが手にできているという意味で、勝つのは驚くほど簡単だろう”とも彼は言っていて、今日はまったくその通りのレースになった」

「ブライアンのおかげで僕はレース中ずっと冷静さを保てた。一時的にニューガーデンが僕らの前を走ったが、僕は落ち着いて彼がタイヤを消耗させるようプッシュした」

「チームの作戦もファンタスティックだったし、チーム全体が冷静を保っていたから、僕のような若いドライバーが集中力を保つことができたのだと思う」とカークウッドは語った。
 

カークウッドの勝利を称えるマイケル・アンドレッティ

 
 2021年にアンドレッティ・オートスポート所属でインディ・ライツを戦い、チャンピオンとなった彼は、チーム内でインディカーにステップアップしたかったが、それは叶わなかった。

 カークウッドはデビューイヤーはAJ・フォイト・エンタープライゼスで過ごし、アレクサンダー・ロッシの後任として今年からカーナンバー27に抜擢されている。インディカーデビューから20戦目での初勝利。フォイトのチームで積んだ様々な経験も活かし、アンドレッティ復帰3戦目にして彼はアメリカ最高峰オープンホイールシリーズでの勝利を記録した。今後がとても楽しみだ。

 グロージャンはロングビーチで2年続けて優勝を争い、2年連続で2位という結果となった。後輩チームメイトに初勝利で先を越されてしまった。
 

2年連続で2位となったロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)

 
 アンドレッティ・オートスポートにとって、この勝利は昨年7月のインディアナポリス・モータースピードウェイ/ロードコース以来となるもので、ワン・ツーフィニッシュは2020年のミド・オハイオ・スポーツカーコースでの1−2−3フィニッシュ以来だ。

 予選2番手だったマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が3位でゴール。レース中盤のリスタート直後にパト・オーワード(アロウ・マクラーレン)がひと暴れ。フロントウィングなどにダメージを受けたエリクソンは8番手まで順位を下げた。

 しかし、2回目のピットストップからゴールまでのペースは誰よりも速く、表彰台に上るところまでポジションを取り戻してみせた。その素晴らしい走りによって、開幕戦ですでに1勝しているエリクソンはポイントリーダーの座に返り咲いた。

 4、5位もホンダエンジン使用のコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)とアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)の順で、アメリカンホンダの地元、そして、ホンダのパフォーマンスブランドであるアキュラがタイトルスポンサーを務めるビッグレースでホンダは表彰台独占、1−2−3−4−5フィニッシュを達成した。

 エリクソンは、 「ずっと速さを保ち続けることのできた素晴らしい週末となった。レースはハードだった。序盤から快調に走っていたが、リスタートで無理なアタックをしたドライバーがいたせいでポジションを幾つか落とした」

「しかし、マシンにスピードがあったので失地を挽回し、表彰台に上ることができた。とてもハッピーだ。そして、チャンピオンシップのポイントリーダーになることもできた。今後のシーズンが更に楽しみになった」とエリクソンは語った。

マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)

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