トヨタ8号車が完勝。トラブル発生の7号車は「運がなかったとしか言いようがない」と可夢偉/WEC第2戦

 4月16日(日)、ポルトガルのアルガルベ国際サーキットでWEC世界耐久選手権第2戦『ポルティマオ6時間』の決勝レースが行われ、ポールポジションからスタートしたTOYOTA GAZOO Racing(TGR)のセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組8号車トヨタGR010ハイブリッドが優勝。2023年シーズン初勝利を飾った。

 一方、開幕戦セブリングで優勝し、この第2戦では連勝を狙っていたマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組7号車トヨタGR010ハイブリッドは、トルクセンサーの交換を余儀なくされるトラブルに見舞われたことでそのチャンスを失い、最終的に総合9位でレースを終えることとなった。

 14日(金)に開幕したWEC第2戦ポルティマオの週末は、初日の練習走行日、なかびの予選日に続き決勝日の16日(日)も晴天に恵まれた。レースは現地時間正午にスタート。グリッド最前列よりスタートを切ったTGRの8号車と7号車は1コーナーの攻防において7号車を駆るコンウェイが2番手から首位に浮上した。一方、ポールシッターの8号車は51号車フェラーリ499Pにもかわされ3番手に順位を下げるが、4周目にはブエミがライバルをかわして2番手に復帰している。

 この段階で首位を行く7号車と8号車の間には約5秒のギャップがあったが、ラップダウンの車両が現れ始めるとブエミがギャップを詰める。このためチームは最初のピットインを前に2台のポジションを入れ替え、これにより8号車がトップに立った。

 その後もワン・ツー体制を築いていたTGRだったが、スタートから1時間20分が過ぎた頃、7号車にトルクセンサーを交換するようレースコントロールから通達が入った。ハイパーカーはレギュレーションで、ドライブシャフトに取り付けられたトルクセンサーで性能を監視できるようにする必要があり、これは常に正常動作していることが義務づけられている。今回7号車のセンサーが異常をきたし、その役割を果たしていなかった。

 チームは7号車をガレージへと入れると、7号車、8号車双方のメカニックが加わって車両左後部の部品を迅速に交換。わずか11分間のタイムロスでコースへと復帰させることに成功する。しかし、予想外のタイムロスにより7号車はトップから7周おくれに。最後尾へと後退することとなった。

 姉妹車がトラブルに見舞われるなか、8号車はスタートドライバーを務めたブエミから平川に交代。平川のパートでは2番手50号車フェラーリ499Pとの差をさらに拡げ、レース終盤に首位のままハートレーにステアリングが引き継がれた。

 前日の予選で8号車にポールポジションをもたらしたハートレーも、チームメイトたちと同様に快走をみせ、スティント終盤には50号車を周回遅れに。その後4号車ヴァンウォール・バンダーベル680のクラッシュによって導入されたセーフティカーラン明けに最後の給油を行った8号車は、トップの座を維持したまま6時間レースのトップチェッカーを受け今シーズン初勝利を飾った。

 トラブルで遅れた7号車はコンウェイからステアリングを受け継いだロペス、さらに可夢偉へとバトンをつなぎ追い上げを見せる。レース終盤はふたたびコンウェイが乗り込み、最終的にトップ10圏内まで順位を取り戻し総合9位でフィニッシュ。貴重な選手権ポイントを獲得した。

 今戦を終えてトヨタはマニュファクチャラー選手権首位を維持し、ランキング2位につけるフェラーリを18ポイントリードしている。また、8号車のブエミ/ハートレー/平川はドライバー選手権首位に浮上。11ポイント差の50号車フェラーリのクルーに続き、7号車のコンウェイ/可夢偉/ロペス組が僚友と13ポイント差の選手権3位となった。

 全7戦で行われるWECの次戦第3戦は、2週間後の4月29日(土)にベルギーのスパ・フランコルシャンで行われる。今戦と同じく6時間で争われるスパ・ラウンドは、記念すべき100周年大会として6月に行われるル・マン24時間の前哨戦だ。

スタートでは2番手の7号車トヨタGR010ハイブリッドが姉妹車8号車をかわしてトップに浮上した。 2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レース
レース序盤、先行する7号車においついた8号車トヨタGR010ハイブリッドがポジション入れ替えによって順位を取り戻した。 2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レース

■TGRドライバーの決勝レース後コメント

●小林可夢偉 7号車トヨタGR010ハイブリッド(チーム代表兼任)

「チーム全体として、8号車の優勝は喜ばしいことです。彼らは本当に素晴らしい働きぶりで、まったくミスなく、勝利に値する走りでした。彼らに祝福を贈ります」

「一方、7号車はピットガレージで11分間費やすことになり、上位フィニッシュのチャンスは失われてしまいました。11分というわずかな時間で素晴らしい作業を終えてくれた2台の車両のメカニックには感謝していますし、チームの頑張りを本当に誇らしく思います。クルマの感触はレースを通して良かっただけに、運がなかったとしか言いようがありません」

「それだけに、次戦へ向けた準備のためにさらなるハードワークが必要です。次戦スパまではわずかな期間しかありませんが、ル・マンへ向けた準備のためにも我々全員にとって重要なレースです。ライバルとの差がさらに縮まってきていることは明確であり、我々に降りかかった今日の事象は忘れて、さらに強くなって戻ってくるべく集中していきます」

●マイク・コンウェイ 7号車トヨタGR010ハイブリッド

「僕たちの7号車はトラブルに見舞われ勝負権を失い、残念ながら厳しい一日になってしまった。レースには復帰でき、少なくともポイントを獲得することはできたが、残念な結果だ」

「8号車のメンバー全員を祝福する。彼らは勝利にふさわしい、素晴らしい戦いぶりだったし、チームにとっても良い結果だ。ピットガレージの片方では良い結果、もう片方は無念の結果となったが、次戦スパではふたたび上位を争うつもりだし、そして、すぐにル・マンもやってくる」

●ホセ-マリア・ロペス 7号車トヨタGR010ハイブリッド

「7号車はとても好調で、セブリングでのワン・ツー・フィニッシュを再現できればチームにとっても良かったのだが、残念ながらトラブルに見舞われてしまった。本当にアンラッキーなアクシデントで、我々は勝負権を失ってしまったんだ」

「しかし、僕たちは諦めることなくレースを続行し、少ないながらもポイントを獲得した。シーズン終盤にはこのポイントがタイトル争いに影響を与えるかもしれない。チームにとっては良い結果だったし、素晴らしいレースを戦った8号車を祝福するよ」

チーム代表と7号車のドライバーを兼務する小林可夢偉 2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レース

●セバスチャン・ブエミ 8号車トヨタGR010ハイブリッド

「8号車の全員が素晴らしい仕事をしてくれた。小さなトラブルでチャンスを失ってしまった7号車には言葉がない。トラブルがなければ、セブリングと同様に、2台での激しい首位争いになっていたと思う」

「セブリングでは僅差で届かなかった優勝を今日勝ち取ることができたので、最高の気分だ。次戦スパではもっと強くなるべく努力を続ける。ライバルとの競争は激しさを増しており、チャンスがあるときにできるだけ多くのポイントを獲得しておく必要があるからね。また勝つことができて嬉しいし、この勢いを維持するためにもプッシュを続けていく」

●ブレンドン・ハートレー 8号車トヨタGR010ハイブリッド

「本当に嬉しいよ。このレースウィークは最初の練習走行開始時から絶好調だった。ドライバーもピットストップもミスなく、正しい戦略で、車両も文句の付け所がなく、すべてが完璧に進む、最高のレースだった」

「最初から最後まで順調にドライブすることができ、チームには本当に感謝している。今季開幕からの2戦で素晴らしいレースを戦うことができたのはチームのおかげで、誇りに思う」

「競争が激化するなか、我々はこれまで培ってきた経験を活かし、最大のパフォーマンスを引き出すことができたと思う。7号車の結果は残念だったけど、彼らは速く、トラブルがなければ間違いなく最後まで接近戦での首位争いになったと思う」

●平川亮 8号車トヨタGR010ハイブリッド

「チームが完璧な仕事をしてくれて、今日勝てたことを本当に嬉しく思います。GR010ハイブリッドは好感触でしたし、前戦セブリングではわずか2秒差で勝利を逃していただけに、今季初勝利を挙げられたことに本当に満足しています」

「私自身は首位でバトンを受けとりましたが、よりその座を着実なものとすべく、2位のフェラーリとの差を広げることができました。ここポルティマオのように1周が短く、コース上のトラフィックが激しいコースでは、それは容易ではなく、神経を研ぎ澄ませる必要がありましたが、自分の走りには満足しています」

「7号車は週末を通して速かっただけに、彼らの結果は残念です。スパがすぐに待っているので、チームとしてさらに強くなって戻ってこられるよう頑張ります」

開幕2戦目でシーズン初優勝を飾った8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮) 2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レース

© 株式会社三栄