“強制ピットイン”のトヨタと同様のトラブル発生も、レース続行が許されたプジョー9X8。その違いは?/WEC第2戦

 WEC第2戦ポルティマオの決勝では、序盤にトヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッドに、規則により装着が義務付けられているトルクセンサーにトラブルが発生。スチュワードは7号車に対し、ピットインしドライブシャフトを交換するよう、通達を出した。

 じつは同様の問題はプジョー・トタルエナジーズの94号車プジョー9X8にも生じていたことがレース後に判明するのだが、彼らはドライブシャフトの交換ではなく、『デフォルトモード』でこれを管理することが許されていたという。

■「もっと良い解決策を見つける必要がある」とトヨタのバセロン

 このセンサーは、FIA(国際自動車連盟)/ACO(フランス西部自動車クラブ)がBoP(性能調整)に規定されたスティントごとのエネルギー使用量を監視するためのもの。決勝レース中に発行されたスチュワード・ディシジョンNo.34により、トヨタ7号車には「ピットに止まり、FIA/ACOセンサーを修理せよ」との裁定が下っていた。

 これにより7号車は11分間に及ぶガレージでの作業を強いられ、7周を失ってレースに復帰した。彼らはその後、総合9位で決勝レースを完走している。

トヨタ7号車へトルクセンサーの交換を命じたスチュワード・ディシジョンNo.34

 レース後、プジョーのテクニカルディレクターであるオリビエ・ジャンソニーは、レース後半に彼らの94号車にセンサーの不具合が生じたことを明らかにした。しかし、このマシンはレース続行が許可され、5位でレースを終えた。

 プジョーがドライブシャフト交換を求められなかったのは、トルクセンサーに充分なデータが登録されていたからであると、Sportscar365は理解している。一方でトヨタのセンサー故障は、データ収集が不十分なレースの早い段階で発生していた。

 ただし、どの時点でトルクセンサーに充分なデータが集積し、ドライブシャフト交換が不要になるかは明らかではない。

「センサーが故障してしまったので、ある種の“デフォルトモード”で乗り切り、マシンがレースの最後を迎えられるようにしなければならなかった」とジャンソニーは語った。

「我々は、BoPの合法的な制約の中で、クルマのパフォーマンスをなんとかしたのだ」

 BoPの制約内にとどまるためには、トルクモニタリングのデフォルトモードが「性能を低下させることを強いる」と、ジャンソニーは説明した。

「パワーを(通常と)異なった方法で管理していることになるが、最終的にはパワーを落とさなければならないんだ」

スタートに向け隊列を整えるハイパーカークラスの車両たち 2023年WEC第2戦ポルティマオ

 一方、トヨタGAZOO Racingのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、ドライブシャフトの強制交換について「厳しい判断」であると語った。

 この交換により、ホセ・マリア・ロペス/小林可夢偉/マイク・コンウェイのトヨタ7号車にとっては、チャンピオン争いでも後退を強いられることとなった。

 トヨタは、ドライブシャフトを初期設定のまま走らせることを要求したが、それは拒否されたとバセロンは言う。

「私は技術ワーキンググループの一員なので、責任の一端を負うことになる。チームとは無関係のセンサーの故障のためにクルマを強制的に止めさせて修理するよりことよりも、もっと良い解決策を見つける必要がある」とバセロン。

「これは一種の宝くじだ。(スチュワードが)我々に修理を要求したのは、かなり厳しい判断だったと思う。明らかに、走り続けることはできたはずなのだから」

 トヨタは7号車の左リヤセクション全体を交換し、コースに戻した。LMP2ウイナーより先にゴールすることができたが、それでも総合9位がやっとだった。

「11分で(ドライブシャフト交換)作業をしたのは、すごいことだ」とバセロン。

「ル・マンでは、強いレースをすれば表彰台に上れるかもしれないが、6時間レースで11分(の作業時間)というのは、致命的だ」

 6月のル・マン24時間レースまでに、トルクセンサーの問題を解決するのに充分な時間があるかという質問に、バセロンはこう答えている。

「ル・マンまでに解決策を見つけるチャンスはあると思う」

2023年WEC第2戦ポルティマオ、2番グリッドからレースに挑んだ7号車GR010ハイブリッド

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