現在プレミアリーグを席巻している日本代表の三笘薫は、川崎フロンターレのアカデミーから筑波大学を経てプロ入りしたことで知られる。
筑波大時代、三笘は練習後に毎回1対1の居残り練習を行っていた。その相手が今季ヴィッセル神戸でレギュラーの座を掴んでいるDF山川哲史だ。
プロ入り以降右サイドバックで出場することが多かった山川だが、大卒4年目の今季は開幕から本職のセンターバックでスタメンに定着。J1で首位を走るチームの快進撃に大きく貢献し、個人としても日に日に評価を高めている。
Qolyは今季の開幕直前、注目選手として山川に単独インタビューを実施!
インタビュー第2弾では、筑波大学で練習後に三笘薫と1対1をするようになった理由やお互いの成長、プロでの"苦い”初対決、今の三笘を見て感じていることなどを中心に聞いた。
(取材日:2023年2月16日)
――山川選手が昨年出演していたアカデミー関連の動画で、自分の長所を伸ばすことの大事さを仰ってました。「何か突き抜けたものがあったほうがいい」と。そう感じた理由はどんなところにありますか?
プロに入って何かができなくても、たとえば守備ができなくても、ドリブルで突き抜けていたらそれだけで生き残っていけると思います。
トータルでできるというのも必要だとは思うんですけど、誰にも変えられないような能力を一つ、個人として持っておくことはプロの世界で生き残っていくためには重要だとすごく感じました。
やっぱりプロでサッカーをしている選手を見ていると、絶対に何か突き抜けたものが、「自分の武器」があると思います。そこはプロに入って、ヴィッセルのような環境で練習している中で思わされましたね。
――これまでサイドバックで出ることが多いですが(※インタビューを行った開幕前時点)、もともとのポジションはセンターバックです。センターバックへの想いはありますか?
正直、プロで長いこと生き残っていって、最後に僕がやっているポジションとしてはセンターバックかなというのは僕の中でちょっとしたイメージとしてあります。ただ、今はどのポジションでもいいので試合に出ることのほうが重要です。試合に出ないことには試合での経験は積めないので。
「ここがいいからここはしない」といった変なこだわりは持たずに、とにかく監督が「お前はここで使いたい」と思ってくださるならそこで自分の力を出したいと思っています。
――さて筑波大学での話に戻りますが、「武器」というところでも先ほど名前が出た三笘薫選手との出会いは山川選手にとっても非常に大きかったのではと推察します、大学時代に三笘選手とずっと1対1をやられていたとのことで、おそらく三笘選手と一番多く1対1をした選手だと思います。まず彼と1対1をやるようになったきっかけを教えてください。
僕は高校生の時から自分の中で1対1が苦手だったので、大学でそこを強化したいというのがありました。
薫もドリブルを磨いていきたいというところでそれがマッチし、大学に入ってからすぐ「1対1をやろう」みたいな感じで始まって、しかもお互いに楽しかったので長く続いたんだと思います。
――練習後にやられていたと思うんですが、どんな形でやって、どのくらいの時間で、最後はどうやって終わっていたんですか?
基本的にゴールキーパーにもいつも付いてもらって、ペナルティエリアの僕で言ったら右サイド、薫から言ったら左サイドのペナ角(※ペナルティエリアの角)から一回パスをし合ってスタートみたいな感じでした。
抜き切るところまでいかなくても「シュートを打てるなら打って」みたいな感じで。逆に僕はシュートコースを限定して打たせて、キーパーに止めてもらうとか自分でブロックするみたいなところで、勝敗をつけてずっとやっていました。
次のチーム、僕らの練習が終わった段階でコートが1面しかないので、逆の半面を2軍のチームが使っていて。3軍のチームの練習が始まる直前くらいまでやって、最後はいつもだいたい3本勝負で勝敗を決めて終わるみたいな感じでしたね。
――三笘選手のファーストインパクトというか1対1をやり始めた頃の印象はどんな感じでした?
速いのもそうなんですけど、どちらかというと僕は行かれそうになったら手で押したり体を押したりしてバンってやるタイプなんです。それが薫の場合、押そうとしても体がクネクネしていて押せないみたいなのが一番のイメージです。
――実際に1対1を繰り返す中でどんなことか変わっていきました?三笘選手のドリブルもそうですしで、山川選手自身の変化も。
お互いに「こうやったらこうなる」とかは途中から分かっていたので、どちらも勝つためにまた何かを変えるみたいな形で、二人で成長していった感じはありました。
途中からはそんなに抜き切るみたいなのではなく、ゴール前のよりリアルなところで、薫も抜き切る前にシュートを打ってきたりすることも多くありました。どんどんよりリアルに実戦的になっていったんじゃないかなと思いますね。
――2019年に山川選手のヴィッセル神戸加入が内定した時、三笘選手とのSNSでのやり取りを見たことがあります。「山川には負けられない」みたいに三笘選手が書いていて「1対1をやるしかない」みたいに反応されていました。
ちょっと覚えてないですね(笑)
※プロ入り前の貴重な二人のやり取りがこちら!「1対1やるしか!」「やるしかねぇ」と続いている。
――そういうやり取りが残っていて、プロ2年目の2021年3月、ホームのヴィッセル神戸対川崎フロンターレ戦でお互いスタメンで出て、右サイドバックとして三笘選手と直接マッチアップしました。あの試合で対戦した時の気持ちはいかがでした?
僕自身大学までセンターバックをやっていて、プロ1年目はなかなか出られず。最後のほうに右サイドバックをやらしてもらいました。
まさかそこでまた2年目も右サイドバックをやって、薫とマッチアップするなんてまったく思っていなかったので、もうすごく何か、楽しみで仕方なかったです。
普段はJリーグの試合でも結構緊張したりするんですけど、その時はずっと何かワクワクしていました。プロの世界で1対1でできるというのは。
――あの試合のことは覚えていて、抑えたというか菊池流帆選手が後ろをカバーして二人でうまく対応していたように思いました。三笘選手と試合後に何か話されたんですか?
終わってからユニフォーム交換をして写真を撮ってみたいな感じでずっと話していました。
やっぱりサイドバックという後ろのスペースが大きいところでやる1対1は、大学の時にやっていた1対1とはまた全然違いました。より三笘選手の良さが生きるというか。
のちのち色々な人に「結構止めてたな」みたいに言われるんですけど、まったくそんなことはなくて。ほぼほぼ抜かれて、それを後ろ、抜いたところを流帆君がカバーしてくれているみたいな感じでした。
なので個人的に「リベンジしたい」という気持ちはすごくあります。
――今の三笘選手のドリブルの特徴をどんなふうに捉えていますか?
相手の動きを見ながらドリブルしているのと、あとはやっぱり単純に0-100が速いところが特徴じゃないですかね。
――「三笘薫の止め方」はいかがですか?
止め方は、それが分かったら僕も今プレミアリーグにいますから(笑)
正解はないと思いますし、「こうすれば絶対に止める」というのもないと思います。薫も向こうに行っておそらく色々と成長していると思うので、今は全然わからないです。
――三笘選手の現在のパフォーマンスを見てどんなことを感じています?
実際、「この選手を止められる選手はいないんじゃないかな」と大学生の時からずっと思っていました。それがまさか、プレミアリーグで通用してゴールを量産していて、普通に驚いてはいます。
ただ、ヴィッセルに入って1年目で薫が活躍している時、僕が先輩方に「三笘は世界で一番うまいです」みたいに言っていて、最初は先輩とかに「世界はもっと広いよ」「そんなことねえよ」みたいな感じで言われていました。
それが今ほぼそういう感じになっているので、「言ったやろ?」という感じです(笑)
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Jリーグで対戦してやりづらかったドリブラーや、元同僚・古橋亨梧のFWとしての“いやらしさ”、アンドレス・イニエスタと三笘薫のドリブルの違い、ヴィッセル神戸だからこそ向上した部分などについて、たっぷり聞いたインタビュー第3弾の動画はYouTubeの『Qoly公式Ch.』にて近日配信予定なのでこちらもお楽しみに!