「なぜ?」を追求すると数学は楽しい! 名護で教室主宰の大城さん 手作り小道具も活用、面白さ伝える

 【名護】「数学を嫌いにならないで」―。名護市で個別指導教室「大北数理教室」を主宰する大城宜実(よしみ)さん(56)は、「なぜ」の追求にこだわった指導を続ける。物理学の博士号を持つ大城さんは、算数が苦手だった経験を基に「スポーツと同じで最初からできる人はほとんどいない。工夫してできるようになると数学は楽しい」と手作り小道具などを活用して数学への興味を大切にしながら個別指導に当たる。月1回の「数学ゼミ」も開催し、名護で“数学好き”の裾野を広げている。

 大城さんは糸満市生まれで、小学校時代に西原町に家族で転居した。中学時代に因数分解が解けずつまずいたが、数字だけではなく、設問の文章に着目し「なぜこうなるのか」に考えを巡らせたことで、定理などを徐々に理解することができたという。

 県外の高校を経て琉球大学理学部物理学科に進学。物質の運動や構造、時間などについて物理の魅力にとりつかれ名古屋大学大学院で専門的に研究した。博士課程ではブラックホールの研究に没頭し、「エネルギーが集中してブラックホールができると、時空の構造はどうなるのか」という問いに挑み続けた。

 博士号を取得後、妻の就職を機に名護市に移り住んだ。「お酒が好き」という理由で地元の酒造会社で計17年間務めた。「蒸留などで泡盛の製造過程で数学の基礎的な考えが生かせた」という。

 自身の研究生活や会社員生活を支えた「数学」に興味を持つ人を増やそうと、5年前に個別指導の大北数理教室を開設。これまで中学2年で高3修了レベルの数学検定準1級に合格した平野陽輝さん(14)を指導するなど、情熱を注ぐ。

 最もうれしかったのは、数学で0点しか取ったことがなかったという教え子が「初めて解けた」と目を輝かせた時だという。「つまずいたら少し戻って簡単な問題をこなしてみる。だらだらと計算に時間を費やしても向上しないが、『なんでこういう解き方をするのか』『別の方法で解けないか』と頭を使いながら問題に取り組むと、自分なりの数学の型ができる」と話す。

 大城さんは「ピアノや野球と一緒で、初めから完璧にできる人はいない。何回も繰り返すことで上達するという法則は、数学も一緒。自然現象を書き表すことができる数学を嫌いになってほしくない」と力を込めた。

 (松堂秀樹)

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