家畜ふん尿活用で発電技術開発へ 島原市と長崎総科大が連携協定 「ゼロカーボンシティ」を目指す

連携協定書に署名した古川市長(左)と黒川学長=島原市役所

 長崎県島原市は18日、家畜のふん尿から生成したメタンガスから水素を取り出して発電する技術の開発に向け、長崎総合科学大と「脱炭素社会構築等に関する連携協定」を締結した。併せて2050年に二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言した。
 水素と酸素を化学反応させて電気を発生させ、水しか排出しない燃料電池を使って発電する。古川隆三郎市長は「島原は約80平方キロとコンパクトな街で、風力発電や潮流発電などに有効な土地が少ないが、畜産が盛ん。発電した電気は、まず市のコミュニティーバスを電気自動車(EV)化した上で使いたい」と話している。

家畜ふん尿から水素を取り出す工程の略図

 市は12、13年度に家畜のふん尿をメタンガスなどに変える実証実験を同大と実施していた。この10年間でメタンガスなどの貯留技術が進み、国が温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を50年までに目指すと宣言したことを受け、市側があらためて連携を呼びかけた。
 連携協定は脱炭素、再生可能エネルギーの利活用、水素製造、蓄電に関する技術開発など7項目。調印式で古川市長と黒川不二雄学長が協定書に署名した。古川市長は「脱炭素化の取り組みを柔軟かつ速やかに推進する」とゼロカーボンシティ宣言をした。黒川学長は「発電や蓄電だけでなく、電気の安定運用などの技術も持ち併せている。大学の総合的な知見を生かしていきたい」と述べた。
 市は当初予算で地域再生エネルギー導入に向けた調査事業として1070万円を計上しており、本年度は産学官民でつくる「島原水素蓄エネルギープロジェクト研究会(仮称)」を発足して調査に着手する。
 島原市の家畜のふん尿は牛・豚の合計で年間約10万トン。このうち約95%は堆肥化されている。

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