トヨタ・カローラGRS TCR同士のポール争いから一転、ホンダの新鋭が連勝/TCRサウスアメリカ第2戦

 アルゼンチンはサンタフェ州ロサリオに位置する、英雄ファン-マヌエル・ファンジオの名を冠したトラックで、4月14〜16日に争われたTCRサウスアメリカ・シリーズ第2戦は、今季より本格デリバリーなったTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)製の新型モデル『トヨタ・カローラGRS TCR』が予選を支配。しかし決勝はホンダ陣営の若手有望株が躍動し、開幕戦勝者のイグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が、圧巻のパフォーマンスで週末連勝を飾っている。

 現代のサッカー界を牽引してきたリオネル・メッシの出身地でもあるロサリオで、盛況を呈したTCRサウスアメリカ第2戦のパドックは、開幕戦に続き20台以上が集結。南米大陸を代表するツーリングカー使いたちがしのぎを削った。

 そんななか予選で猛威を振るったのは同国アルゼンチン製の新型トヨタで、そのうちの1台となるアダルベルト・バプティスタ(コブラ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)こそ、予選Q1でスピンを喫し赤旗の起因となったものの、続くQ2ではカローラ同士の熾烈なポール合戦が繰り広げられる。

 最初にQ2基準タイムを記録した現選手権首位のティーンエイジャー、モンテネグロのシビックに対し、昨季もタイトル争いを展開したファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が早い段階からそのタイムを上回っていく。

 そのロッソに対しベスト更新で迫ったのが、彼の地では“本家”とも言うべきTTA所属のベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)で、同国最大のツーリングカー選手権たるTC2000(旧スーパーTC2000)では、今季ホンダ陣営のシビックをドライブする実力者が、みるみるそのギャップを詰めていく。

 しかし、最終的にラヴァーの努力はロッソの首位タイムとなる1分39秒431に、あとわずか0.006秒及ばず。ロッソがからくも今季初ポールを獲得し、ラヴァーが6000分の1秒で2番手として、トヨタ・カローラGRS TCRがフロントロウを制圧する結果に。

 その背後3番手にホンダのモンテネグロと僚友ファン-マヌエル・カゼッラ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が続き、5番手のガリッド・オスマン(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)を挟んで、6番手にファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)、7番手にファビオ・カサグランデ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)と、上位グリッドはまさにトヨタvsホンダの対決構図となる。

 さらに10番手となったホセ-マニュエル・サパーグ(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)が「狙いどおり」に、午後のレース2に向けたリバースポールを確保した。

昨季もタイトル争いを展開したファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が、ベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)とフロントロウを分け合う
レース1は9周目にロッソとラヴァーの接触により事実上の決着。開幕戦勝者のイグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が首位に浮上する
これで開幕から2戦連続で、オープニングのR1を制覇した18歳のモンテネグロ。スクアドラ・マルティーノもワン・ツーを決めた

■トヨタ同士討ちのレース1はホンダがワン・ツー

 明けた日曜午前の現地9時過ぎにスタートしたレース1は、シグナルグリーンを前にリンク&コー03 TCRを走らせるPMOモータースポーツ陣営の3台(王者ファブリツィオ・ペッツィーニ/ラファエル鈴木/フレデリック・バルビ)が“エンジン交換ペナルティ”でグリッド最後尾へ回ることに。

 まずオープニングで先手を奪った2番手ラヴァーだったが、続くラップでロスを喫して3ポジションダウンとなり、代わって首位を奪還したロッソも続けざまにミスを犯し、ここでモンテネグロが弄せずしてリードを奪っていく。

 直後の4周目を前後して、トラック上の一部に雨が降り始めたことが報告されると、良好な視界で逃げを打つ18歳の背後では、熾烈な2番手争いが繰り広げられることに。

 その結末はトヨタ陣営にとって手痛いものとなり、ロッソ、ラヴァー、カゼッラの3WAYバトルは、9周目にロッソとラヴァーの接触により事実上の決着。ホンダのカゼッラが2番手で防御壁となり、首位モンテネグロは8秒ものマージンを築いてトップチェッカー。ホンダワン・ツーの背後にはからくもラヴァーが続いて表彰台の一角を占め、ロッソは接触が祟ったか8番手までポジションを失う結果となった。

 続いて現地午後13時前に始まったレース2は、目論みどおりサパーグがリバースポールからリードを奪うも、そのスタート周回でリンク&コーのバルビが技術的な問題でクラッシュし、ここでセーフティカー(SC)が導入される。

 これで5周目に再開となったレースでは10番手発進のモンテネグロが怒涛のチャージを開始し、隊列走行で詰まった車間も活かし、続く6周目にはすでに5番手へと浮上。ファステスト連発で前を追っていく。

 そのまま7周目にはラファエル鈴木を、続くラップではディフェンディングチャンピオンのペッツィーニを仕留めた18歳は、10周目に2番手陥落となっていたサパーグに躊躇せず襲い掛かり、これで2番手へ。

 残すは僚友カゼッラのみとなり、14周目には鮮やかに首位浮上に成功。ここから1秒強のギャップを作り、大逆転で週末連勝の偉業を達成した。

 これで開幕以降の2戦4ヒート中、早くも3勝を挙げたモンテネグロは、ポイントスタンディングでも155点として首位を独走。2位のラヴァーに42点、3位カゼッラに60点もの大量リードを築き、続く4月29~30日に争われる地元アルゼンチンが誇る最新鋭トラック、テルマス・デ・リオ・オンドでの第3戦に臨む。

予選10番手となったホセ-マニュエル・サパーグ(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)が「狙いどおり」にレース2に向けたリバースポールを確保した
10番手発進だったモンテネグロだが、SCにも助けられ14周目には鮮やかに首位浮上に成功する
早くも3勝を挙げたモンテネグロは、ポイントスタンディングでも155点として首位を独走する

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