6時間レースはフェラーリの“弱点”?/左右異なるタイヤスペック/プールにドボンetc.【WECポルティマオ決勝日Topics】

 4月16日、2023年のWEC世界耐久選手権はポルトガル南部のアルガルベ国際サーキットで第2戦の6時間レースが行われ、トヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッドが今季初優勝を果たした。

 ハイパーカークラスではトヨタ7号車をはじめいくつかのトラブルが発生するなか、LMP2、LMGTEアマクラスでは僅差のバトルが繰り広げられた。レースを終えた日曜日のパドックから、各種トピックスをお届けする。

■「アグレッシブさが足りなかった」とブエミ

 トヨタGAZOO Racingの平川亮、セバスチャン・ブエミとともにポルティマオ6時間レースで優勝したブレンドン・ハートレーは、WECにおいて2番目に勝利数の多いドライバーとなった。

 ポルシェLMP1、その後トヨタで活躍しているハートレーは、2012年以降のWECのレース数の実に4分の1となる20勝をあげ、23勝をあげたブエミに次ぐポジションを得た。

 ブエミは、レース開始時にチームメイトのマイク・コンウェイとフェラーリのジェームス・カラドに抜かれ、リードを奪われたことを自責している。

「僕のミスだと思う。アグレッシブさが足りなかったんだと思う」と長らく8号車のスタートドライバーを務めているブエミ。

「チームメイトとともにターン1へと入っていくレースは、いつも難しい。接触は避けたいものだ。もしまた同じことが起きたら、次のレースでは少しアプローチを変える必要があるかもしれないね」

 ハイパーカー・ドライバーズ世界耐久選手権のランキングでは、ハートレー/ブエミ/平川がトヨタのチームメイトであるホセ・マリア・ロペス/小林可夢偉/マイク・コンウェイを抜いて首位となった。7号車トヨタの3人は、フェラーリのミゲル・モリーナ/アントニオ・フォコ/ニクラス・ニールセンに続くランキング3位に後退している。

 一方、708号車グリッケンハウス007はトラブルなく走行した。昨年のル・マンで表彰台を獲得して以来、モンツァとセブリングではリタイアを喫していたが、ル・マンに次いでもっとも信頼性を証明する結果を残したことになる。

 チーム代表のルカ・チャンセッティは次のように語っている。

「もちろん、競争力を高めるためにはもっとペースを上げなければならない。だが、セブリングの時よりはずっと良かった。正しい方向に進んでいると思う。次のサーキットがもっと我々のクルマに合うといいんだけどね」

 グリッケンハウスの唯一の問題は、レース中盤にリヤブレーキの冷却ダクトにマーブルが溜まり、温度が急上昇してしまったため、それを取り除くためにスティントを短くしたことだったと、チャンセッティは付け加えた。

ほぼトラブルフリーで6時間レースを走破したグリッケンハウス007LMHは8位でフィニッシュ

■左右で異なるタイヤスペック選択も

 ミシュランは、ポルティマオでハイパーカー・メーカーが異なる戦略をとっていることを確認した。

「いくつかのチームは、左側にミディアム、右側にソフトというように、異なるコンパウンドで走行することに躊躇しなかった」とピエール・アルベスは語った。

「あるチームは、右側のタイヤをダブルスティントにして、給油のたびに左側のタイヤを交換し、また他のチームはミディアムコンパウンドのみを使用して、2回のピットストップごとにタイヤを交換していた」

 完走したトップ2メーカーであるトヨタとフェラーリは、レースを通してミシュランの硬めの『ミディアム』コンパウンドを使用したが、トヨタの技術チーフであるパスカル・バセロンは、彼のチームはソフトも使用できたが使用しないことを選択したと述べた。

 ミシュランは今シーズン後半にWECのタイヤコンパウンドの呼称を変更する可能性があるものと、Sportscar365は理解している。

 彼らは現在、コンパウンドを『ソフトコールド』『ソフトホット』『ミディアム』と名付けている。しかし、ミシュランはこの名称を変更し、ソフト仕様の温度による区別をなくすことを検討していることが知られている。

ミシュランはハイパーカーとLMGTEアマにタイヤを供給している

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 次戦、WEC第3戦のスパ・フランコルシャン6時間レースは、ベルギーのスパ・フランコルシャンにて、4月29日(土)に開催される。

ポルティマオのスタートでは、トヨタ7号車、フェラーリ51号車が、ポールポジションスタートのだった8号車ブエミを先行した
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