ADAM at - "DJ ADAM at"としてファン待望の音源『百物語』をタワーレコード限定リリース!

コロナ禍で増えたDJ ADAM atとしての活動

──DJ ADAM atとしての活動は以前からずっとされていたわけですが、このタイミングで音源としてリリースしよう、ということになったのはどんな経緯だったんでしょうか?

ADAM at:DJ ADAM at自体、2017年ぐらいからやってたんですけど、基本的に一人で鍵盤を弾きながら、CDをターンテーブルに入れて。自分の曲を知り合いにリミックスしていただいて、ピアノをマイナスワンして、それに合わせて楽器を弾いて、曲の繋ぎをDJでやって…みたいな感じでやってたんですよ。時期的には長かったんですけど、コロナ禍もあってライブ本数が減ったりもして、とはいえライブがしたいと。ただ、うちはメンバーがサポートなので、たとえばサポートとスタッフで、お世話になったライブハウスに行くときに、けっこうなカロリーを使うんですよね、経費という名のカロリーを(笑)。とはいえ、行かないと我々のことを忘れられてしまったりだとか、たとえば知り合いのライブハウスが困ってるときに行くのも大事かなと。じゃあそのときに何かないかなって思ったときに、「そういえば俺一人でやってるし」って。そんなかたちでね、DJ ADAM atとしての活動が増えたんです、コロナ禍で。それこそ配信もインスタライブなんかでやったりして、ライブハウスには行けないんだけど、画面越しにでも、自分が今こういうことやってるっていうのが伝わればいいなと思って活動してるうちに、ありがたいことに音源化を望む声が高まりまして。昨年もADAM atとしてのリリースはあったんですけど、まだまだコロナ禍ではあったので、ライブは単発が多かったんですよ。今はね、ある程度落ち着いてるんですけど、そのときは「来年ももしかしたらライブ本数を絞ってやらなきゃいけないんじゃないか」と思ってて。それじゃあDJ ADAM atとしていろんなところへ行けたらいいなと。でも、もし回るんだったら何かしらのものを持って回ったほうがいいなと思って、音源化を望む声もあったりした中で、ビクターさんに相談して今に至る、というかたちですね。

──なるほど。リリースをするからツアーを回るのではなく、ツアーを回るためのリリースなんですね。

ADAM at:これはMCとかで冗談風に言うと、二毛作ですね。

──あははは! 両方で儲けようと(笑)。

ADAM at:そうです、そうです。冬場は白菜しか作ってないですけど、やっぱりね、同じ野菜をずっと土壌で使うと栄養が抜けるらしいので、じゃあ夏場はキュウリも作ろうかな、みたいな(笑)。

──うまいなぁ(笑)。

ADAM at:拙い知識ですけどね(笑)。

──音源化を望む声が多かったっていうことなんですけど。今回の音源は、いろんな方にリアレンジ、リミックスをしていただいてるということなんですが、それはもともとDJ ADAM atとして活動している段階から…?

ADAM at:いや、そうではないですね。

──今回のリリースに向けてやっていただいたということなんですね。

ADAM at:そうです。一番最初に始めたときは、札幌のRETRO FUTUREってバンドにリミックスを作ってもらってて。自分で宅録をするようになってからは、見よう見まねで自分でリミックスをやったりもしてたんですけど、自分の曲を第三者が聴いたときにどういう解釈をするかっていうのもちょっと楽しみで。それで、親交のあるミュージシャン、Schroeder-Headzの渡辺シュンスケさんであったり、DJ OKAWARIさんであったり、特に鍵盤をメインにしている方にお願いをしたんです。

──それが私はすごく意外だなと思って。玉田さん自身が鍵盤をメインに弾いていて、楽曲も鍵盤が主旋律で作っていらっしゃるわけじゃないですか。あえて別の人にリミックスしてもらおうってなったときに、鍵盤の人にお願いするんだって、なんだか意外だったんですけど。

ADAM at:そうですね…。ベース飲み会だとかギター飲み会だとかボーカル飲み会だとかってけっこうあるのに、鍵盤飲み会ってあんまりなくて…(意外な返答に一同笑う)。ほんとにないんですよ。

──たしかに(笑)。

ADAM at:まあ、鍵盤人口も少ないですし。でも、こういったかたちでね、音源で鍵盤会みたいな。鍵盤の気持ちって、鍵盤の人にしかわからないところもあったりして。

──なるほど。それであえて、鍵盤をメインで使ってる方だったらどういうふうに解釈するのかな、っていうことなんですね。

ADAM at:そうなんです。特に僕のピアノはテクニックっていうよりもメロディのほうを推してるので、自分の作った曲のメロディを、リミックスされる方はどういうふうに使うのかなというのも楽しみではありましたね。

──なるほど、それはすごくおもしろいですね。

自分の曲も100曲くらいリミックスできるようになるまではやりたいなって

──ちなみに、この曲を入れようってなった経緯だったり、この曲をこの人にお願いしようってなった流れはどんな感じだったんですか? この人にお願いしようってなってからこの曲を任せよう、なのか、この曲を音源に入れようってなってこの人に任せよう、なのか。

ADAM at:完全に後者で、この曲を入れたいから、これには誰が合うんだろうなっていうかたちでしたね。ちょっと業務的な話をすると、昨年の新譜だとか、あと自分が好きな曲だとか、ライブで盛り上がる曲みたいなのが優先はされるんですけど。リリースすればするほど、実はあんまりやらない曲とかも出てくるんですよ。ライブでやる曲って椅子取りゲームなので。その“やらなくなってしまった曲”もかわいそうなので、じゃあそれも知り合いのミュージシャンのリミックスというかたちでもう一回魂を吹き込んでいただいて、リリースをしてツアーに回ればその曲を演奏する機会も増えたりするので。

──なるほど、それはいいですね。

ADAM at:DJ OKAWARIさんだったり、渡辺シュンスケさんの曲なんかはもともと好きで聴いていたので、たぶんこの曲が合うんじゃないかっていうのはもちろんありましたね。

──DJ OKAWARIさんは同じ静岡の出身なんですよね。そのへんの交流とかもあったんですか?

ADAM at:まだ1、2回しかお会いしたことないんですけど、うちのサポートをしてくださってる永田雄樹さんや橋本幸太さんが、DJ OKAWARIさんのツアーで一緒に中国を回ったりしてるので、間接的にはすごく親しいは親しいんですよね。いつかご一緒できる機会を今探ってはいるんですけど。

──リアル鍵盤会したいですね、CDの中だけじゃなくて。

ADAM at:そうですね、リアル静岡会と(笑)。

──そのCDの中で、1曲目は新曲ということなんですけど、その新曲のできた経緯というか、制作にあたってはどんな感じだったんですか?

ADAM at:たとえば、新曲を作ろうと思って鍵盤の前に行ってもすぐに降りてくるわけじゃなくて。やっぱり常日頃からね、曲を作る癖はつけていかなきゃいけないなと思ってるんですけど。今回、DJ ADAM atのリリースが決まったのが11月ぐらいだったんですけど、そのときはまだ(ADAM atの)リリースツアー中で。1月にツアーが終わって、そこから別のイベントがあったりだとかもした中で、新曲を作る時間がけっこうタイトではあったんですけど。今回僕の中で、Schroeder-Headzさんが入っていることが一つの大きなトピックスで。シュンスケさんのピアノってすごく流麗で美しくて。あの方もアコースティックであったり、打ち込みを使ったライブもすごくやってたりもしたので、シュンスケさんみたいな曲を作りたいなっていうのはどっかにありましたね。

──たしかに、なんというかさわやかで、すごく綺麗な曲だなと思って聴かせていただきました。

ADAM at:今まで曲作りって夜のほうが多かったんですけど、大部分を昼間に作ったので、もしかしたらそういった雰囲気もあるかもしれないですね。

──ちなみにさわやかといえば、アルバムのタイトルは『百物語』なんですけど、ジャケットはすごくさわやかで可愛い感じじゃないですか。

ADAM at:そうなんですよ。これは漫画家の佐藤さつき先生って方に描いていただいたんですけど。『妖怪ギガ』っていう漫画があって、今は完結はしてるんですけど、とても素敵な漫画でして……ぜひ読んでいただきたい。

──あっ、はい。お薦めいただいた(笑)。

ADAM at:その方を僕が単純に好きで、ダメ元でオファーしたら受けてくださいまして。春らしい感じで。

──そうですね、ピンクで可愛らしく。なのに『百物語』なんだなって(笑)。

ADAM at:まあ、ダブルミーニングなんですけど。一個はね、ホラーゲームをずっと辿ってきてて、偶然(「偶然」を強調する)。もう一個は、自分の曲も100曲くらいリミックスできるようになるまではやりたいなっていうのはどっかであるんですよ。自分の曲もまだ100あるかどうかわからないんですけど。この先もずっと音楽を作れたらいいなと思ってるんですけど、そのときにもし並行してDJ ADAM atも続けるのであれば、100曲くらいまではやれたらいいなと。

──なるほど、願いも込められているんですね。

ADAM at:そうですね。100曲目で死ぬかもしれないですけど。(※百物語は怪談を100話語り終えると妖怪が現れるとされている)

──完成しないほうがいいじゃないですか!(笑)

ADAM at:とはいえ100曲作るのも、100曲リミックスするのもたいへんなので。この先、CDがどういうふうにユーザーだとかリスナーだとかの元に届くかわからないですけど。

──今はCDがあるっていうのもけっこう珍しいというか、配信がメインになってしまいましたもんね。

ADAM at:悲しいことではありますけどね。

──そうですね。私もサブスクにはお世話になってますが、手元にあって安心できるのがCDだと思うので、タワレコ限定であっても、盤をゲットできるっていうのは、ファンの皆さんもうれしいんじゃないかと思います。

ADAM at:ありがとうございます。それこそさっき話したジャケットもとても可愛いので。CDの良さって、ジャケットも合わせて楽しむものだと思うので。

──スマホの中で見るより、CDとして飾れるとすごくわくわくしますよね。

ツアーを回れること、バンドマンでいられることの喜びを噛み締めながら

──ツアーのためのリリースということで、ツアーのお話も少し聞けたらなって思うんですけど。リリースのその日からツアーが始まって、初日がADAM atとDJ ADAM atとのツーマンで…、実質ずっとステージに立ってるんですよね(笑)。

ADAM at:そうですね(笑)。

──その中で、どういうふうに違いを見せていこうと考えていらっしゃるんでしょうか。

ADAM at:ツアーを回る前に言うべきじゃないですけど…。やっぱり、ライブハウスはバンドが音を出すように向けて作られた会場ではあるので。どれだけ鍵盤とDJで音圧を上げたとしても、もちろんバンドには絶対敵わないので、そういうところも楽しみっていうか。僕はDJ ADAM atも大事にはしてますけど、基本的にはADAM atの人間が、相撲でいう初っ切り(※相撲の禁じ手を余興として面白おかしく紹介する取組のこと)じゃないですけど。大相撲は ADAM atで、DJ ADAM atは初っ切りでって感じで。もちろん真剣にはやりますけど、やっぱりライブ、バンドっていいなっていうのを見てもらうための場でもあるかもしれないですね。ただ、同じ曲でも、全然アレンジが違ったりもするので、そのへんも楽しんでいただけたらな、と。

──ちなみに、ツアーは2カ月半で17カ所とたくさん回られるんだなって思ったんですけど。コロナによる制限がかなり少なくなった今、ツアーをやるっていうことについての楽しみだったりとか、意気込みなんかをうかがえたら。

ADAM at:そうですね。2020年にコロナ禍が始まったときから、ライブをするかしないか、どっちが正しい正しくないっていうのはけっこうあったと思うんですよ。ライブをしなかったバンドが悪いわけではないし、ライブをしたバンドがいいわけでもないと思うんですけど、ただ、僕も含めていろんなバンドが走り続けてきて、辞めずにやってきて。そのコロナ禍でライブをしてきたバンドって、僕はけっこう強くなったと思うんです。お客さんもいないときにやったりだとか、無観客配信で、演奏しても拍手がないけど、配信先のみんなは見てるからテンションを落とさずにライブをすることであったり。それをツイキャスであったり、YouTubeであったりインスタであったりをして届けてきたバンドが、ようやくこうやってツアーに回れることで、種まきの回収に行くような気がするんですよね。初めて行くところもあるはあるんですけど、でも、せっかくツアーに行けるようになったんで、できれば行きたいなっていうのと、あとは、もしまた同じようになったときに、悔いが残らないように、たくさん回っておいたほうがいいなとは思ってますね。未だに、100%安心はできなかったりもするので。また別のウイルスが来る可能性も無きにしも非ずですし。一本一本のライブを本当にありがたく、ツアーを回れること、バンドマンでいられることの喜びを噛み締めながら、ツアーに行きたいなと思いますね。

──ツアーを回る中で、個人的に楽しみにしてる場所だったり、楽しみにしてることってありますか?

ADAM at:どこも楽しみなんですけど、熊本に久々に行くのと、帯広は初めて行くので…。

──北海道は3カ所回られるんですね。

ADAM at:そうなんです。たぶんもう1カ所増えそうな感じはするんですけど(※インタビュー時は苫小牧・帯広・札幌の3カ所だったが、現在は旭川公演が追加されている)。それこそ九州も、一応熊本でも宮崎でもライブをしたことはあるんですけど、最近はもう福岡しか行ってなくて、北海道も札幌ぐらいでしかライブをやってないんですけど、それで行った気分になっちゃいかんなと思って。

──なるほど(笑)。ちゃんと九州に行くには福岡だけじゃなくって…。

ADAM at:そうです、そうです。大阪に行って関西行ってきた〜って言われても、いやいや和歌山もあるじゃないのって(笑)。(※インタビュアーは和歌山県出身)

──ありがとうございます(笑)。

ADAM at:初めて行くところも久々に行くところも、そこを一つのセーブポイントにして、また広げていきたいなと思うんですよね。

──まいた種の回収をしつつ、また新しく種をまいていくと。ちなみにツアーが終わるのが夏になりますけど、そのあとのご予定は決まってらっしゃるんでしょうか。

ADAM at:7月に自分のフェス(7月1日、2日に浜名湖ガーデンバークで開催される『INST-ALL FESTIVAL2023』)があって、ツアーファイナルが終わったあとは、8月もありがたいことにいろいろあって…。ざっくりとですが、今年また1枚アルバムを出せたらとは思ってまして。で、そのツアーも回れたらいいなと思ってます。

インタビューの実施場所・下北沢Flowers Loftについて

──以前、トークライブでFlowers Loftに出られたときのお店の印象はどうでした?

ADAM at:いやぁ、めちゃめちゃオシャレで。ただ、ほんとに申し訳ないことがあって……めっちゃ押したんですよ(時間が)。

──あはははは! お話が盛り上がっちゃって(笑)。

ADAM at:めちゃめちゃ押したんですよ。で、押したから、「これはもうすぐに片付けましょう」ってなってすぐに片付けて、「すみませんでしたありがとうございました!」って帰ったんですけど、それもそれで印象が悪かったんじゃないかと思って…。

──心配だったんですね(笑)。

ADAM at:そうなんですよ。「あいつら、押したくせにとっとと帰りやがった」って思われてたらって、今でも心に引っかかってて…。本来だったら、押さずに、そのあとここ(バーフロア)でみんなで乾杯でもできたらよかったんですけど、もう押したことでテンパっちゃって。

──とにかく早く出なきゃって思ってくれたんですね(笑)。

ADAM at:そうなんです。結果、早く出すぎたことがド失礼だったんじゃないかと思って、それが心残りです…。

──がんばって早く出てくれたんだなっていうのはそのときのスタッフも感じてると思うので、大丈夫ですから(笑)。

ADAM at:またリベンジはしたいですね、バンドで。

──はい、ぜひ! このあいだライブを見させてもらったときも、ADAM atさんのライブとここのライブハウスは合うんじゃないかなと勝手に想像させてもらってたので、ぜひ今後何かやっていただきたいです。

© 有限会社ルーフトップ