「なり手不足」に挑む

 これという定見がなく、勢力の強い者に従うことを「事大」という。大(だい)に事(つか)える-。事大主義という言葉は、自主性のない行動に批判を込めて向けられる▲ジャーナリスト、相川俊英さんの著書「トンデモ地方議員の問題」(ディスカヴァー携書)を読んでいて、その言葉が思い浮かんだ。選挙で「選ぶべきではない候補」の例として、大物議員との蜜月ぶりばかりを叫ぶ人物、支援団体のほかには目もくれない人物を挙げている▲大に事える、つまり特定の誰か、特定の組織だけに目が向く議員が多いほど、議会の仕事は外から見えづらい。近ごろ地方議員のなり手不足が著しいが、何をしているのか分からないことが理由の一つによく挙げられる▲統一地方選の後半、町村議選や町村長選、それに市長選でも無投票が全国的に際立つ。本県では二つの町長選が無投票再選となったが、五つの町議選はどれも選挙戦を繰り広げている▲その一つ、北松小値賀町議選は定数割れも案じられたが、定数8に10人が立候補した。背景には、議員を引退した人が地方自治をテーマに講座を開いたりと、議会の大切さを住民に伝える努力があった-と、16日の紙面で報じている▲何かに従う「事大」でも、尊大に構える「自大」でもない。選挙とは何をおいても次代のためにある。(徹)

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