大田原市教委 「市の自然」を初発行 豊かな土地が育んだ4078種

刊行された報告書「大田原市の自然」

 栃木県大田原市の市教委は20日までに、市内の地形や動植物の生息などを総合的にまとめた報告書「市の自然」を初めて刊行した。市中央部を南北に流れる那珂川の東に八溝山地、西に那須扇状地の平地が広がり、豊かな土地が育んだ動植物4078種が確認、収録された。

 「市の自然」は2024年度の市制施行70周年に向けた市史編さん事業の一環で、22年度の成果物。各分野の専門家による現地、文献調査の集大成だ。

 市内の地形では、那須連山の恵みを受ける市西部の扇状地は地層構造の影響などがあり湧水が多く、市内で300カ所を超える。

 こうした水が豊かな平地に育まれた魚類として、国天然記念物で国絶滅危惧種のミヤコタナゴ、県絶滅危惧種のイトヨ、植物では群生地として市天然記念物であるザゼンソウもある。国絶滅危惧種の水生植物、ビャッコイがかつて生育したことは特筆されるという。

 一方、山地では針葉樹の人工林が多く、低山では比較的珍しいとされるヤマドリが見られる。伐採地では近年、数が減っているといわれるヨタカが6月ごろに飛来し、チョウのヒョウモンの仲間も生息。植物ではイワウチワの群生も確認された。また市内丘陵地に根付いた動植物も存在する。

 「種子植物」「鳥類」「昆虫」「市の指定天然記念物」などをそれぞれ章立てにしてまとめた。湧水や動植物の写真がふんだんに使われている。

 市史編さん委員会自然部会長で元教員刑部節(おさかべたかし)さんは序文で「市の地形的特徴がさまざまな動植物の生息を可能にしてきた。普通種を希少種としないためにも、調査を続け保全に役立てることが必要」などとした。

 A4判。342ページ。2500円。市総合文化会館などで扱う。「市の自然」とともに、戦争モニュメントや畜産業といったテーマの研究報告などを掲載した「市史研究第3号」も刊行した。(問)市文化振興課市史編さん係0287.47.5031。

© 株式会社下野新聞社