<社説>離婚後の共同親権 子の利益尊重した議論を

 家族法制の見直しについて検討する法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会は、離婚した父母の双方が親権を持つ「共同親権」を導入する方向で議論を進めることを確認した。 共同親権についてはメリット、デメリットの両面が指摘されており、国民の間でも意見が分かれている。専門家の見解も一致を見ていない。子どもの利益を尊重した丁寧な議論が求められる。

 日本では1947年の民法改正で、婚姻中は共同親権、離婚後は父親か母親のいずれかが親権を持つ「単独親権」の制度を採用した。法改正から70年余が経過し、家族の形態は多様化した。離婚後、別々に暮らしていても父母の双方が親権を持つべきだという意見が強くなっている。海外では離婚後の共同親権を導入する国も多い。

 法制審の議論では、父母双方の「真摯(しんし)な合意がある場合も単独親権のみを導入するのは合理的ではない」という意見が多かった。半面、共同親権の導入に消極的な意見や慎重論もあったという。

 共同親権の是非について、さまざまな考え方がある。

 共同親権に対する賛成意見として、離婚後も父母双方が親権を持ち、共同で子育てに関与すべきであり、子どもの利益にもかなうという考えがある。親権争いから起きる子どもの「連れ去り」を避けられるとの観点から共同親権を支持する声もある。

 家庭内暴力(DV)の被害者からは、元配偶者との関わりを避け、子どもの安全を守りたいとして、共同親権に反対する意見が根強い。DVや虐待が要因となって離婚に至った場合、共同親権を認めてしまえば被害が断ち切れなくなるとの懸念がある。

 法制審は昨年11月、父母双方の共同親権を選べる案、一方の単独親権だけを維持する案など複数案を併記した中間試案をまとめ、国民の意見を募集した。ここでも共同親権は「子どもの利益」にかなうという意見が多数あったが、DV被害を引きずる恐れを懸念する声も寄せられた。いずれの意見も考慮されるべきだ。

 離婚率の高い本県でも親権を巡る議論を注視する必要がある。県調査によると、子どもの人数にかかわらず母親が親権を持つ場合が多い。子どもが2人の場合は85.7%、3人以上の場合は83%の母親が全児の親権をもっている。

 一方で、ひとり親家庭の約4分の3は非親権者の経済的事情で養育費を得ていないという調査結果もある。これでは子どもの健やかな成長に支障が出てこよう。親権の形態にかかわらず、子どもの利益を確保する仕組みが必要だ。

 「単独親権か共同親権か」という2択の議論だけにとどまらず、子どもが安心して生活できるよう、養育費の不払い対策や社会保障の充実に向けた取り組みを続けることが大切だ。子どもの幸せを重視した議論を求めたい。

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