「盗難車あるかも」SNSデマ拡散で実害も? エアロメーカーが「怒りのリプ」した真意とは

近年、一部のヤード(自動車解体施設)が、盗難車を解体し海外へ売りさばく違法行為の温床になっているとして注目されている。

そんな中、先日Twitterで、高級スポーツカーが数多く置かれた敷地の写真とともに「ここにもしかしたら盗難車あるかも」と投稿したアカウントが現れた。

写真に写っていたのは、国内有数のエアロメーカー(※)「BNスポーツ」の敷地。当然、盗難車などあるはずもない。

当該の投稿に気が付いたBNスポーツの公式Twitterアカウントは「いますぐ警察つれてお越しください。1台1台全て確認していただけますか? 宜しくお願い致します。顧問弁護士に通達させて頂いてます。」(原文ママ)と返信。BNスポーツの本気の怒りを感じると、ファンを中心に話題となっていた。

※スポーツカーの外装カスタムをする企業

デマ拡散後、不審な車がやってくるように

そもそも、ヤード問題を断片的に切り取り「車が多く置かれている場所=盗難車がある」と結びつけるのはあまりに短絡的だ。いわれのないデマが拡散されたBNスポーツは、今回の件についてどのように捉えているのか、話を聞いた。

問題の投稿には、どのような経緯で気が付いたのでしょうか。

BNスポーツ担当者:レース関係の知人が投稿を見つけて、教えてくれました。Twitterに投稿されたということで、放っておけば「BNスポーツに盗難車がある」というデマがあっという間に拡散されてしまいます。すぐにやめさせなければと、投稿に返信しました。

最近は高級車の盗難や、違法なヤードに対する社会的関心も高まっています。そのような状況の中、御社がデマを拡散されたり、誹謗中傷を受けたりするのは、今回が初めてだったのでしょうか。

BNスポーツ担当者:25年以上の歴史の中で初めての経験でした。

当社でも車の盗難リスクを避けるために、工場の場所はHPなどで公開していなかったんです。それなのに今回、写真が投稿されたことによって住所が特定され、昼夜を問わず目的のよく分からない車がやってくるようになりました。

今のところ、車は道路に止まっているだけなので、私たちは何もすることができません。でも、いつ窃盗団が大勢で押しかけてくるかも分からないし、車を盗むために従業員に危害を加えるリスクもあります。そう考えると本当に怖いです。

現在、当該の投稿は削除され、アカウントは非公開になっているようですが、何らかの法的措置はとっているのでしょうか。

BNスポーツ担当者:先方から「謝罪したい」との連絡はいただきましたが、現時点では謝罪を受け入れるか、法的措置をとるのかといったことを含めて、対応を検討中です。

いずれにしても、今回のような誹謗中傷行為は、弊社だけでなく業界全体にとって深刻な問題です。投稿する側は「炎上したら消せばいいや」くらいの気軽な気持ちで考えているのかもしれませんが、そういう人が二度と現れないようにしたいですし、同じような被害者が生まれないよう対応していきたいと思っています。

貴社のTwitterアカウントでは、盗難車の情報提供を求める投稿も積極的にリツイートしています。盗難車が増えている現状について、どのようにお考えですか。

BNスポーツ担当者:スポーツカーが盗難されると、パーツごとにバラバラにされて海外に輸出されます。日本のスポーツカーは海外でも人気があるので、パーツの需要もとても高いのです。

しかし、車が1台、また1台と消えていけば、私たちのようなエアロメーカーや、車のメンテナンスをするチューニングメーカーなどの仕事も減っていってしまいます。盗難被害に遭った車の持ち主が悲しい思いをするのはもちろん、業界全体にもその影響は波及するので、非常に危機感を持っています。

スポーツカーが好きな人たちは、写真をパッと見れば「あの車だ」と分かることも多いので、そういう人たちの目に少しでも触れて、情報が集まればという思いでリツイートしています。

車の盗難が許せないのはもちろん、今回のような誹謗中傷にも「真面目にやっているのに何でこんな思いをしないといけないのか」という気持ちでいっぱいです。同じような被害は、二度と起きてほしくないと思います。

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