テスト初日で感じたチップ・ガナッシのチーム力。「前のチームと比べていろいろな答え合わせができた」と佐藤琢磨

 今年で第107回を迎えるインディアナポリス500マイルレースの決勝を5月28日に控え、そのオープンテストが4月20、21日の両日インディアナポリスモータースピードウェイで行われた。

 21日が雨予報のため、初日タイムスケジュールを1時間30分延ばした1日目のプラクティスだった。

 チップ・ガナッシ・レーシングからエントリーする佐藤琢磨はカーナンバー11のマシンに乗ったが、カラーリングはアメリカン・リージョンのスポンサーカラーのまま。第3戦ロングビーチ直後でもあり、すぐに第4戦のアラバマが控えていることもあって、そのままマシンをスーパースピードウェイ仕様に変更している。
 

アメリカンリージョンカラーで走った琢磨

 
 琢磨が乗るインディ500仕様のリバリーは5月にお披露目される予定だ。

 琢磨にとっては今年最も大事なレースとなるインディ500。2017年、2020年に続いて三度目の制覇をするために最強のチーム、チップ・ガナッシに移籍した。

 昨年はライバルとして戦い敗れたが、そのチップ・ガナッシの懐に飛び込み、虎穴に入らずんばと言う心境で移籍して来た琢磨が、チップ・ガナッシのマシンでどんな走りをするか注目が集まった。

 テスト開始前には現役のインディ500チャンピオン9名が揃い、ボルグワーナートロフィーと記念撮影。誇らしげにトロフィーの横で微笑む琢磨の姿があった。
 

ボルグワーナートロフィーとインディ500チャンピオンたち
インディ500ウイナー3人を揃える2023年のチップ・ガナッシ・レーシング

 
 午前10時から2時間はベテランドライバー、つまり現役で出場しているドライバーの時間帯で、琢磨はまずインスタレーションラップをしてマシンを確認すると、少しずつペースを上げていった。

「最初はチップ・ガナッシの昨年のレースセットアップがどんなものか試してみようと言う感じで走り始めました」と言う琢磨は、時速220マイル台に入り、2時間のセッションの最後に平均スピード222.012mphを出して16番手で終える。

 その後、ルーキーオリエンテーションを含むリフレッシャーの時間となり、2時間のインターバルを置いた後、午後2時から午後6時30分までⅳ時間30分のセッションとなった。テスト開始直後は雨粒も落ち、一時イエローコーションでセッションはストップしたものの、すぐにドライとなってセッションは再開。
 

走行の準備を行う佐藤琢磨

 
 琢磨は午後のセッションとなるとペースアップ。20周目に226.265mphを叩き出して一気にリーダーボードのトップに躍り出た。これでチームのムードも変わり雰囲気も良くなる。

 一度タイムを出した後、ガーレージを二度ほど往復してセッティングパッドでマシンのバランスをその都度確認していた。

「クルマにどうしても確認したいことがあって、走行をしてまた元に戻してという作業があり、その分時間がかかってしまいました。今日は全部で80周くらい? もう少し走りたかったですね」

「新しいエアロのデバイスもいろいろ試しました。風洞では良いデータが出ているパーツでも、今日のように強い横風が吹いた場合とか、まだ完全にどのパッケージが完璧というのはこれからですね」

「それでも今日は5番手でしょ? さすがチップ・ガナッシだなって思いました。4台のマシンの状況は逐一アップデートされて情報も共有されていますしね。僕がトップタイム出した後に、すぐにスコット・ディクソンがタイムを出してきたでしょ?(笑)。こっちを意識しているのかは分かりませんが、このチームの中ではやっぱりスコットがアドバンテージはありますよね」とテストの1日を振り返る。結局テスト初日は総合5番手で終えた。
 

集団走行のフィーリングを確かめる琢磨

 
 テキサスで緒戦を戦い、このIMSに来て最初のテストを終えた琢磨。インディ無双のチップ・ガナッシのマシンはどんなものだったのだろう?

「今年のエアロパッケージになっていますから、単純比較はできませんけど、午後からはチップ・ガナッシベースのクルマに、僕が今まで経験してきたフィロソフィーみたいな物を反映させて走リました」

「ガナッシのクルマは全体的にダウンフォースがあって、レースのようなパック(集団)の時でも安定してますね。前のクルマに追いついて行ける。レイホールの時、デイル・コインの時と比べると、いろいろな答え合わせができたような感じです。明日(二日目)はまだ試したいことがあるので、もっと走りたいんだけど、雨なのかな……」

 ガナッシのクルマの乗りやすさと琢磨の理想が重なり合っていけば、クルマはまだまだ進化していくだろう。

 どれくらい11号車が進化していくのか楽しみだが、テスト二日目の天気が気になるところだ。

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