契約者が保険金請求できるとは限らない? 意外と知らない手続きの仕方と注意点

じっくり内容説明を聞いて加入した保険商品。「保険金請求の仕方は何か起こってからで大丈夫」と考えていませんか?

保険商品によって請求する人が違うことがあります。いざ保険金請求をする際に困らないよう、注意すべき点を解説します。


損害保険の場合

損害保険(自動車・火災・傷害保険など)を申し込む場合、契約や内容の変更、解約に至るまで、手続きの権限を持つひとは契約者です。被保険者といわれる保険の対象になるひとは、契約者と同一の時もありますが、別の場合もあります。

・自動車保険

例えば、自動車保険の契約者が父で、主に運転する被保険者が息子の場合、保険の対象になるひとは息子ですが、車の情報、割増引の確認、補償内容の選択など、契約の権限は契約者の父にあります。

事故が起き、保険金を請求する時は異なります。事故の報告は、保険契約者、被保険者いずれも可能ですが、保険金を請求するひとは契約者ではなく被保険者、保険の対象になるひと です。

・火災保険

「火災保険」の場合は、所有者が請求者 になります。住宅を購入する時、夫婦名義で購入するケースがよく見受けられますが、この場合、契約者はいずれか一人ですが、請求者は2人になります。必ず両名同意の上、2人の署名が必要になるので注意が必要です。

・傷害保険

「傷害保険」はわかりやすく、ケガをした人が請求者です。部活のケガで、スポーツ団体保険などの請求をするような場合、ケガをした人が未成年者であれば、親権者の署名で請求ができます。

・賠償責任保険

「賠償責任保険」は、賠償責任を負った人です(他人の身体・財物に損害を与えた場合に、その損害に対して金銭で賠償する責任を負うことをいいます)。

自転車で歩行者にケガをさせてしまった、ゴルフのプレー中に他人に打球が当たりケガをさせてしまったような場合の治療費などの請求です。

以上のように、保険金請求手続きは契約者のみで行うことができないことを覚えておきましょう。

生命保険の場合

生命保険は損害保険と違い、申込の段階から、契約者と保険の対象になる被保険者が同意の上で申込む保険です。

損害保険が自動車・建物の損害、または他人に対する賠償リスクを賄う保険であることに対して、生命保険は自分のからだに対してかける保険です。契約者と被保険者が同一の場合は問題がありませんが、別の場合はモラルリスクの観点から、契約者のみが申込手続きを行うことは犯罪的行為を引起す可能性があるためといわれています。

保険金請求の手続きを行うのは、基本、保険の対象である被保険者です。
医療保険、がん保険、満期で保険金を受取る養老保険や個人年金など、生存中に保険金を受取ることが多い商品は、保険金請求者は被保険者本人です。

一生涯、または長期にわたり保障が続く生命保険では、被保険者が重篤な病気に罹患することや、死亡することも想定されます。被保険者が病気やケガで保険金請求ができないような状態にある時や病状を本人が知らないような場合に、代理で請求するひとを指定しておく仕組みがあります。

指定可能な範囲は、被保険者の配偶者・直系血族・兄弟姉妹・同居の3親等以内の親族などです。他にも保険会社が範囲外で認めているケースもあるので、範囲外のひとを指定しなければならない場合は保険会社に相談しましょう。

死亡保険金受取人は、本人死亡のため、本人が受取ることはできないので、申込む際に受取人を設定しておきます。死亡保険金の受取人は、原則配偶者と1親等、2親等の血族までです。配偶者と親・子、祖父母・兄弟姉妹・孫が該当です。指定しない場合は法定相続人が受取人になりますが、設定しておけば支払いがスムーズですし、故人の意向が反映されますから、決めておくことをおすすめします。

死亡時の医療保険金請求

死亡保険金受取人、指定代理請求人の指定はできても、死亡時の医療保険の請求人を指定することができません。入院日額、手術保険金、特定疾病一時金などの医療保険にかかわる保険金は、原則本人が請求し受取るべき保険金なので、被保険者の相続財産となります 。被保険者死亡後請求するひとは、代表相続人です。

高齢化社会とともに、独身で生活される人も増えています。親族と呼べる人がいない場合は、保険金の請求が難しいケースもあります。保険会社によっては、第三者であっても、申請により請求ができる場合もありますので、単身生活のひとは、事前に担当者へ確認しておく必要はあるでしょう。

今後単身者がますます増えていく傾向にあります。万一の際頼れるひとがいない分、医療保険や介護保険に加入しているはずなのに、必要な時に受取れないのでは、保険の意味がありません。

保険に加入しているだけでなく、定期的に保険の内容を確認し、請求のアドバイスをしてくれる担当者を持つことと、保険の請求事由が発生した時には、先延ばしにせず、こまめに請求していくことが必要になってくるのではないでしょうか。

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