季節鮮やか 絵画や掛け軸力作49点 佐野東石美術館で企画展

10年ぶりに公開された磯部草丘の「渓谷の春」

 近現代の日本美術作品を収集する栃木県佐野市本町の佐野東石美術館で、春や新緑をテーマにした企画展「開花の兆し」が開かれている。桜や梅などの春を感じさせるものから、ヤナギやアジサイなど初夏を連想させるモチーフを描いた絵画や掛け軸など計49点が並ぶ。7月4日まで。

 展示品の中で異彩を放っているのが、現在の群馬県伊勢崎市出身の画家磯部草丘(いそべそうきゅう)の力作で、10年ぶりの公開となった「渓谷の春」。高さ約170センチの6曲1隻屏風(びょうぶ)で、草丘が東北を旅した際、青森県の奥入瀬渓流の自然に目を奪われて描いたとされている。

 木々や花が生い茂る渓谷と2羽のキジが力強く描かれており、木々の葉や渓流の水しぶきなどの細部まで色鮮やかに表現されている。同館の青野(あおの)のぞみ学芸員は「鮮やかな色彩と厚塗りの絵の具で、自然の風景が丁寧に描かれている。隅から隅まで時間をかけてじっくり見てもらいたい」と話している。

 このほか、来館者から人気を集めているという青いチョウと猫を描いた故加山又造(かやままたぞう)さんの「蝶(ちょう)」なども展示されている。

 午前10時~午後5時。入館料700円(小中高生300円)。水、木曜休館。(問)同館0283.23.8111。

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