「ライバルはレースごとに強くなっている」と小林可夢偉。トヨタ、ル・マン前哨戦で開幕3連勝狙う

 WEC世界耐久選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、4月27(木)~29日(土)にかけてベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催される2023年シーズン第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースに7号車と8号車、計2台のトヨタGR010ハイブリッドで挑む。

 ベルギーを代表する伝統的なトラックであるスパで行われる6時間レースは、TGRにとって6連覇を目指す6月のル・マン24時間レースの“前哨戦”とも言えるイベントだ。既報のとおり、今大会ではル・マン100周年記念大会の準備のため、ハイパーカークラスのエントリーはさらに増え、合計13台がスパのグリッドを埋めることになる。

 11台のハイパーカーによる激戦が繰り広げられた第2戦ポルティマオでは、TGRの8号車トヨタGR010ハイブリッドがポール・トゥ・ウインで今季初勝利を挙げ、同車をドライブするセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮がドライバー選手権でランキング首位に浮上した。

 一方、3月に行われた開幕戦セブリングを制したあと、先週末のポルティマオではトルクセンサーの故障という不運なトラブルに見舞われ上位入賞を逃すことになったマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組7号車のトリオは、ランキング3位に後退している

 なおTGRは、7号車トヨタGR010ハイブリッドによる昨年のスパ6時間での優勝を含め過去10大会で7勝をマークするなど、チームのヘッドクォーターがあるドイツ・ケルンから120kmほどと比較的近く、ヨーロッパでの“ホームレース”としているスパ・ラウンドを得意としている。

 そのスパ・フランコルシャンといえば、“スパ・ウェザー”と称される予測不能な天候で知られており、それがときにレース結果を大きく左右することも。2019年に行われた“スーパーシーズン(2018-19年)”第7戦スパでは、スタート進行時には晴れていた空模様が急転しスタート直後に雨が降り出す展開に。さらに気温の低下とともに大粒の雪に変化。一度は天候が回復したものの、その後もにわか雨や雹が落ちてくるなど天気に振り回されるレースとなった。ちなみに、このときはブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソの8号車トヨタTS050ハイブリッドが波乱の6時間レースを制している。

 TGRが2023年シーズン開幕3連勝を狙う次戦は、4月27日(木)から走行が開始され、初日は90分間のフリープラクティスが2セッションが予定されている。翌28日(金)は午前中に60分間のプラクティス、午後に予選が実施される。29日(土)に行われる決勝は現地12時45分(日本時間19時45分)にスタートが切られる予定だ。

降雪のなかレースが行われた2018-19年シーズン第7戦スパ6時間。優勝は8号車トヨタTS050ハイブリッド

■TOYOTA GAZOO Racing ドライバーコメント

●小林可夢偉 チーム代表兼任(7号車トヨタGR010ハイブリッド)

「スパは、最大の目標であるル・マン前の最後の実戦であり、我々にとって非常に重要なレースです。また、チームにとってはホームレースでもあり、イベント中には、チーム本拠地のケルンから多くの関係者が家族連れで応援に来てくれるので、皆さまに会えるのも楽しみのひとつです」

「スパにはいつも多くの観客が集まってくれますが、今年はハイパーカーも増えるので、さらに盛り上がるでしょう。ライバルはレースごとに強くなっており、また、スパではさらに台数が増えることになるので、チームにとっても、ドライバーにとっても、忙しくタフな週末になると思います」

「スパは素晴らしいサーキットですが、色んなことが起こりうるので、上位を争うためには、車両セットアップやタイヤなどすべて正しく把握し、ミスなく戦うことが必要です。多くの意味でル・マン前哨戦として理想的なレースであり、ここで好結果を残せれば、記念すべき100周年大会へ向けた完璧な準備となるでしょう」

●マイク・コンウェイ(7号車トヨタGR010ハイブリッド)

「スパは毎回良いイベントで、大好きだ。スパには自信を持って臨むが、まだシーズンは始まったばかりで、未知数な部分も多い。上位を争えるポテンシャルがあることは確かだけど、スパではライバルがさらに増える」

「レースの世界では、状況が急激に変わることも多いから、レースごとに対応していくしかない。スパはシーズン最大のレースであるル・マン前の最後のレースであり、ル・マンに自信を持って臨むためにも、ここでの結果は重要になる」

●ホセ-マリア・ロペス(7号車トヨタGR010ハイブリッド)

「スパはとても特別な場所で、ドライブするのも最高だし、ベストサーキットのひとつだと思う。僕たちはずっとスパでは良いレースを戦ってきているけど、天候が大きな問題になる」

「天気の変化は神のみぞ知るところだけど、過去、春夏秋冬とすべての四季を1日で経験したこともあった。チーム、ドライバーにとって、そして、戦略の面でも大きな試練になる。加えて、次戦ル・マンは目の前なので、必要事項すべてをしっかりテストし、また僕たち自身も100%の準備をすることが重要だ」

TOYOTA GAZOO Racing WECチームの代表と7号車のドライバーを兼任する小林可夢偉

●セバスチャン・ブエミ(8号車トヨタGR010ハイブリッド)

「スパはハイスピードで、ランオフエリアも少ない、昔ながらのコースなので本当に走っていて楽しいし、これまでに何度も良いレースを戦ってきた場所だ。WECではこれまでに5回勝っており、その記録を6に伸ばせれば、と思っている」

「また、スパでは天候とタイヤマネージメントがキーになる。1セットのタイヤでダブルスティントを走らなければならないので、タイヤ摩耗のコントロールがとても重要になる。簡単にはいかないだろう」

●ブレンドン・ハートレー(8号車トヨタGR010ハイブリッド)

「スパは、ドライバー誰もが5本の指に入ると思うコースで、みんな訪れるのを楽しみにしていると思う。アップダウンが大きく、美しいコースで、流れるようなレイアウトも本当に素晴らしいんだ。また、スパは耐久レースでの歴史も古く、いつも大観衆が迎えてくれる、特別な場所だ」

「伝説的なスパ・ウェザーで知られているが、今年の改良型GR010ハイブリッドでは、新しいレインタイヤとの組み合わせをほとんど経験していないため、その点では未知数な部分がまだ残っている。ただ、それもル・マンへ向けた最終準備のひとつのステップになるはずと考えているよ」

●平川亮(8号車トヨタGR010ハイブリッド)

「私自身はスパが好きですが、GR010ハイブリッドでレースを走ったことがありません。昨年のレースでは私のスティントが来る前にトラブルに見舞われてしまったので、今年はようやくレースできることを楽しみにしています」

「レースごとに競争は激しさを増しているので、今回のスパもさらにチャレンジングなレース展開になるということは間違いないですし、スパならではの天候もどうなるかわかりません。ル・マンへ向けた重要なレースなので、好結果で終えて完璧な準備ができるように集中します」

2023年WEC第2戦を制したトヨタGAZOO Racing8号車GR010ハイブリッドのセバスチャン・ブエミ、平川亮、ブレンドン・ハートレー

© 株式会社三栄