不振のメルセデスF1が技術部門の体制変更を発表。ジェームズ・アリソンがテクニカルディレクターに復帰

 メルセデスF1チームは、技術部門の体制変更を行い、チーフテクニカルオフィサーのジェームズ・アリソンとテクニカルディレクターのマイク・エリオットのポジションを交代させることを明らかにした。2022年以降、メルセデスがトップの座から滑り落ちた後、エリオットが自分はテクニカルディレクターの役割に最適ではないと結論づけたことが、この動きにつながったという。

 2014年以来、無敵の強さを示し、8年連続コンストラクターズタイトルを獲得したメルセデスだが、F1に新テクニカルレギュレーションが導入された2022年、優れた新世代F1マシンを作り上げることに失敗、レッドブルおよびフェラーリから遠く離れた3番手というポジションに落ちてしまった。挽回を期待して臨んだ2023年も、優れたパフォーマンスを発揮できず、パワーユニットを提供しているカスタマーのアストンマーティンの後塵を拝する状況となった。

 メルセデスは、昨年から続くマシンのコンセプトが誤っていたとの結論を出し、方向性の修正に取り組んでいる。そんななか、アリソンとエリオットが役割を交代することが決まった。ポジション交代は即時行われるという。

2023年F1第1戦バーレーンGP メルセデスF1のテクニカルディレクター、マイク・エリオット

 ルノーやフェラーリでタイトル獲得に貢献したアリソンは、2017年にメルセデスに加入、テクニカルディレクターを務めた後、2021年からチーフテクニカルオフィサーのポジションに移った。アリソンが担うF1の業務は減り、マシン設計におけるリーダーシップから離れて、将来的な戦略の計画などに取り組み、一方で、メルセデスF1の株主であるイネオスにおいて、ヨットレース、アメリカズカップのチームの技術責任者を務めてきた。

 エリオットは2021年にアリソンの後任としてテクニカルディレクターに就任した。しかしチームが2022年以降、不振から抜け出せずにいるなか、エリオットは自分はテクニカルディレクターの役割に最適な人間ではないと判断、アリソンとの役割交代の動きを主導したという。ふたりがポジションを交代することで、アリソンはエリオットの直属の立場となる。

 メルセデスの広報担当者は、「マイクは、将来的に持続可能な成功を実現するために適切な体制を構えるため、私たちの技術部門の組織の見直しを主導しました」とコメントした。

「私たちは最高のレーシングカーを作ることに集中しています。そのマシンを開発するためにベストのチームを作り、その組織のなかで全員がそれぞれの最大の強みを発揮できることを目指しています」

 メルセデスは、今回の組織変更の一環としてのその他の変更についても明かしている。ディレクター・オブ・カーデザインのジョン・オーウェンは、2021年に導入された予算制限の面に多くの時間を割いてきたが、再びマシンの設計に集中することになった。オーウェンを支える役割を果たしてきたジャコモ・トルトラが、これまでオーウェンが担ってきた業務の一部を引き継ぎ、エンジニアリングディレクターに任命された。

2023年F1第3戦オーストラリアGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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