村山輝星、片桐仁と“はじめての美術館”を巡り感動!「こういう風な見方もあるんだ…」

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「はじめての美術館」(毎月第2・4日曜日 12:29~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁とタレント・村山輝星ちゃんが各地の美術館を巡り、展示作品の楽しみ方を子どもにもわかりやすく紹介します。4月9日(日)の放送では、東京都中央区にあるアーティゾン美術館でアートを見て、感じて、学びました。

◆村山輝星、"はじめての美術館”へ

この春、新たにスタートした「はじめての美術館」。この番組では、仁おじさん(片桐仁)が輝星ちゃんとともにアートを自由に楽しみます。記念すべき第1回は、輝星ちゃんが本当にはじめて美術館を訪れました。

その舞台となるのは、東京都中央区にあるアーティゾン美術館で開催中の「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」(5月14日(日)まで開催)。

今回、館内を案内してくれた教育普及部学芸員の細矢芳さんによると、この展覧会は同館が所蔵しているコレクション約3,000点のなかから75点を展示。そして、初めて訪れた方も何度も訪れている方もどちらも楽しめるようさまざまな工夫が施されており、まさに"はじめての美術館”にピッタリです。

◆人物画の様式を変えたマネ

最初のテーマは「人物画」。まず鑑賞したのは、フランスの有名な画家エドゥアール・マネの作品です。輝星ちゃんが「なんかちょっと偉そうな人のような感じがしますね」とそこに描かれた男性の印象を話していた、この作品にまつわるクイズ「この人の職業は?」。

「帽子をかぶっていて、黒い靴を履いていて…それこそ絵描きさんみたいな?」と輝星ちゃんが予想すると、見事正解。これは「自画像」(1878~79年)というタイトルで、マネが自分を描いた作品です。

この絵の面白いところはその筆致。筆のあとや塗り残しのような部分がある一方で、顔のあたりはとても丁寧に描かれています。それはつまり、きっちり描ける力がありながらも描いていないということ。

当時、マネ以前の画家は筆あとが見えないよう完璧に仕上げないと完成とはいえないと考えていました。しかしマネはそうではなく、この作品のように未完全な形で発表すると、その様式を絶賛し、共感する画家たちが続々と現れました。

ここでクイズ第2問「マネは当時、左足を悪くし、ほとんど力が入らなかったにも関わらず、この絵ではその左足に体重がかかっています。それはなぜでしょう?」。

このクイズに頭を悩ませる輝星ちゃん。いろいろと思いを巡らせますが、残念ながら時間切れ。正解は「鏡を見ながら描いたため」。

なぜそれがわかるのかというとジャケットの襟合わせ。通常、男性は左が上にくるものの、この作品のマネは右が上。実際、当時のマネの写真を見ても襟は右になっています。

続いての作品は、小出楢重が36歳のときに描いた「帽子をかぶった自画像」(1924年)です。

当時、油絵画家であれば誰もが憧れたパリ。1度留学すると1~2年は滞在する人が多いなか、小出はパリを含むヨーロッパ旅行をしましたが、全く感激せず、わずか半年で帰国してしまいます。ただ、帰国後は「日本人が洋画を描くためには西洋人の気質を体得する必要がある!」と朝食はパンとコーヒー、自宅の床は絨毯にし、スーツと革靴を身につけるなど、とにかく形から入っていたそうです。

なお、そんな小出の作品の隣には、本作の画中にあるラッパやキャンパスなどが用意されていて、「帽子をかぶった自画像」の世界観に入ることができるコーナーがあり、輝星ちゃんは画家気分を味わっていました。

◆印象派の画家が屋外で絵を描き始めた理由

次のテーマは"印象派”です。印象派の巨匠クロード・モネの「黄昏、ヴェネツィア」(1908年)を前に輝星ちゃんは「海なのに水平線が入っていない。空と海で塗り方が違うし、水面は横の感じで空はちょっとふわふわしていますね」と第一印象を語ります。

印象派とは、アートの歴史のなかでも重要な、新たな時代を築いたジャンルで、当時の人々は印象派の画家たちの作品を見てとにかく驚いたとか。その理由について「それまでは写真みたいに描くのが絵だった」と仁おじさんがヒントを語ると「じゃあ、そのまま描くんじゃなくて、自分の思いを込めた風景を描くってこと?」とすぐさま反応する輝星ちゃん。

まさにその通りで、印象派以前は写真のような絵が主流で、みんな上手く描くことに固執していました。また、描かれるテーマも神話や聖書、歴史の名シーンばかり。しかし、印象派は自分が感じたままの印象を自由に描き、さらに画家たちは外に出かけ絵を描いていました。

ここで3問目のクイズ「この時代、印象派の画家たちが外に出かけて絵を描くようになった理由は?」。

ヒントは道具に関することだと聞いた輝星ちゃんは「パレット、筆、絵の具、イーゼル、キャンパス…」と道具の名前を挙げていき、最終的には「絵の具ですか?」と回答すると、大正解。

印象派の画家が外に出かけるようになったのは「チューブ入り絵の具ができたから」。今では当たり前ですが、これができたのが1828年。それまでは石や貝などを砕き、使う分だけ油を混ぜて絵の具を作っていたそうです。

◆絵と写真で山の大きさが違う!?

最後は"風景画”。仁おじさんと輝星ちゃんは有名な画家ポール・セザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(1904~06年頃)を鑑賞します。

そこにはセザンヌの故郷である南フランスの風景が描かれていますが、一見それは富士山のよう。実際、美術館に訪れた小学生たちが富士山と見間違えることが多々あるそうですが、輝星ちゃんからは「(富士山の側火山)宝永山みたい」とマニアックな感想が。ちなみに、セザンヌは生涯何度もこの山をさまざまな角度から描き続けたほど大好きな山だったとか。

ここで最後のクイズ「10枚の昔の絵葉書(写真)のなかにサント=ヴィクトワール山が写っているものが1枚あります。それはどれでしょう?」。

輝星ちゃんは、絵葉書をじっくりと観察してみるものの「ないですね~」と見つかりません。それもそのはず、セザンヌの絵に比べ、絵葉書のサント=ヴィクトワール山はかなり小さいから。人間の目は遠くにある大きなものを見たとき、実際はそこまで大きくない、写真で撮ると小さいのに、気持ちの上では大きく見えてしまうことがあるそうです。

人生初の美術館を訪れ、輝星ちゃんは「美術館の見方がまだまだわかっていないですけど、こういう風な見方もあるんだっていっぱいお勉強できて良かったなと思います」とアートとの出会いを楽しんだ様子。

今回はマネ、モネ、セザンヌと名立たる名画家の作品を見てきましたが、輝星ちゃんが特に印象に残った作品として挙げたのは、モネの「黄昏、ヴェネツィア」。「今まで上手な絵というと、くっきりしていて、立体感もあって、みたいな絵だと思ってたんですけど、輪郭とかがしっかりしていなかったり、水平線とかがなくても素敵な絵があるんだなって思いました」と輝星ちゃん。

「これからいろいろなことを知れると思うと、ワクワクします!」と今後に期待を寄せつつ、はじめての美術館でさまざま作品に触れ「(絵が)描きたくなりますね!」と笑顔で話していました。

※開館状況は、アーティゾン美術館の公式サイトでご確認ください。

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<番組概要>
番組名:はじめての美術館
放送日時:毎月第2・4日曜 12:29~12:55<TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁、村山輝星
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/hajimeteno_art/

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