加納愛子『これはちゃうか』- Aマッソ加納が解く、日常"風"小説集

『文藝』にて2021年に連載された4作品に加え、書き下ろし2作を含む6篇が収録された小説集。 「これはちゃうか」は、6篇中3篇が関西弁で編成される。しかし関西弁が身近ではない読者も置いていかず、不思議なくらいスッと入ってくる。関西弁のリズミカルでノリが良く、どこか小気味よい文章を、実際に読んで体感していただきたい。 1篇目に収録された「了見の餅」では、普段から友人を笑わせる為に趣向を凝らす主人公と、あることで落ち込んでいる(っぽい)友人のとある一夜の出来事が描かれている。 Aマッソファンの読者は、勝手にその2人を加納と村上に置き換えてしまった人もいるのではないだろうか。 ボケとツッコミ、こうボケたらこうツッコんでほしい、このボケも取りこぼさないでほしい。そんな主人公の思惑が全て読める「了見の餅」は、ぜひお笑いが好きな全人類に読んでいただきたい。 上記で少し触れた通り、Aマッソ加納が織り成す作品は、主人公の脳内が赤裸々に語られる所が印象的だ。このとき主人公はどう思ったのだろう? などという考察が一切できないくらい、隅から隅まで抜かりなく心情が描かれている。しかしその痛快で不思議な脱力感は、一度読めば癖になることだろう。 加納本人の「元気がないときに手に取ったり、共感や救いを求めたりしないで、元気があるときに余力で、クッキーこぼしながら読んでほしい」という意気込みも、読者の肩の力を抜かせるポイントだ。ぜひ、休みの日にお菓子を用意して、読んでみてほしい。(Text:佐藤美月 / LOFT9 Shibuya)

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