冨安健洋の代役も!いま世界最強の右サイドバック10人

欧州サッカー界はUEFAチャンピオンズリーグのベスト4が出揃うなど佳境を迎えている。

ここでは、『FourFourTwo』による現在最高の右サイドバックBEST10を見てみよう。

10位 ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォ(ナポリ)

今シーズンのナポリは、欧州サッカー界のサプライズストーリーになっている。サッリ監督時代には見られなかったような容易さとスリルで、行く手を阻む全てを破壊している。

圧倒的な得点力を持つ攻撃陣が注目されているが、守備陣もソリッドだ。

昨夏にキャプテンを引き受けたディ・ロレンツォは、岩として最終ラインを支えている。

試合を読むインテリジェンスがあり、攻守にわたって貢献できる。今シーズンのセリエAで最も安定しているDFのひとりであり、ナポリで最も過小評価されている選手のひとりでもある。

9位 マロ・ギュスト(リヨン)

彼は今年1月にチェルシーに引き抜かれた19歳の逸材だ(即ローンという形で6月末までリヨンに残留)。

今季のチェルシーはリース・ジェームズがいるといないとでは全く違うチームになってしまうが、リヨンではギュストが素晴らしいプレーを見せている。

このフランス人は守備の達人ながら前に出て行くのも素晴らしい。近年のリヨンは優勝争いに加わることができていないが、彼はユース上がりの傑作。ビッグクラブ移籍に値する選手だ。

8位 ジョアン・カンセロ(バイエルン)

左右の両サイドバックとして純粋なワールドクラスにある数少ない選手。

彼はカイル・ウォーカーによって左サイドバックに押し出されたのかもしれない。昨夏にマンチェスター・シティがマルク・ククレジャの獲得を狙っていたことはそれを示唆するものだった。

ここ数年、左にいる時のカンセロはジャック・グリリッシュのスペースに流れ込み、必要ある時にはアウトサイドキックを繰り出してきた。

右にいる時の彼はよりシンプルだ。アウトサイドキックは少なくなるが、前への突進は増え、サイドの幅を保って相手を引き延ばしてから鋭い斬り込みを見せる。

このポルトガル人は破壊的なまでにダイナミックだ。この数か月で突然急落したが、同じようにトレント・アレクサンダー=アーノルドもリヴァプールのシステムが彼をカバーできない時に急落してしまう。

そのポイントは変わらないものの、カンセロは才能的には突出しており、このリストに入る価値がある。

7位 ベン・ホワイト(アーセナル)

昨夏、ウィリアン・サリバがアーセナルに留まるのかを疑う見方もあった。

ローン移籍で経験を積んだフランスの逸材は、アーセナルの守備を担ってきたベストコンビであるベン・ホワイトかガブリエウ・マガリャイスに挑戦するためにチームへ戻ってきたのだ。

だが、答えはシンプルだった。それはホワイトを右サイドバックに移動することだった。

当初は冨安健洋が復帰するまでの応急処置と思われていたが、ホワイトは並外れたプレーを披露。パスレンジは素晴らしいし、1vs1のバトルにも優れる。彼がオーバーラップすることでブカヨ・サカはファイナルサードで予測不可能な存在になり続けることができている。

加入当初のホワイトはやや軽率で受動的だったが、右サイドバックにコンバートされたことで好戦的な部分を生かせるようになった。

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彼のことを本職でないポジションでプレーするCBではなく、質の高い右SBと呼べるまでどれほどかかるだろうか。

6位 トレント・アレクサンダー=アーノルド(リヴァプール)

2022年は彼のキャリアにおいて最も困難な年だったかもしれない。これほどまでに厳しい目が向けられたことはなかったし、これほどまでに役割の前提そのものが問われたことはなかった。

サイドバックに位置するプレーメーカーである彼は、決して守備に優れた選手ではない。ただ、率直に言って、彼が何者かを考えればそれは問題にならない。

このような能力を持つ選手の長所は、自分がボールを受けた位置よりも常によりよい位置にボールをつけることができる点。彼のパスは、今や伝説的だ。

試練の年ではあるが、チェルシーとのFAカップ決勝ではピッチ上で最も素晴らしい選手だったはずだし、苦しむリヴァプールにおいてもユルゲン・クロップ監督が最も信頼するクリエイターであり続けている。

彼は素晴らしい選手であり、最近のサッカー界と同じように叩かれ過ぎているかもしれない。少なくとも、2023年になってからは少しは以前の姿になってきた。

5位 カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)

サッカー選手としての彼の歩みを予想できた人間はほとんどいなかっただろう。

トッテナム時代にマウリシオ・ポチェッティーノ監督のもとで驚異的な成長を遂げると、本領を発揮する頃には5000万ポンド(83億円)のサイドバックになったのだ。

シティではジョゼップ・グアルディオラ監督から与えられたあらゆる役割をこなし、中に入ってのプレーを学び、圧倒的なフィジカルに加え、驚異的なパスレンジまで身につけた。

5月で33歳になる彼は、いまやDF陣の長老。その電光石火のリカバリー加速力を活かして、ゴールラインまでの往復よりもウイングを捕まえることにより満足する昔ながらのサイドバックに回帰した。

少しは衰えるだろうと思っていたが、ウォーカーは上質なメルロー(ワイン)のように熟成している。まさにダニ・アウヴェスのような軌跡だ。

4位 ジュール・クンデ(バルセロナ)

とんでもないことだが、今季のバルセロナはリーガ28試合で9失点しかしていない。とはいえ、バルサはバルサであり、攻守両面に感謝しなければならない。

守備は前線から、攻撃は後方から始まるが、ベン・ホワイトと同じくセンターバックが本職であるクンデは、今季は主に右サイドバックとしてプレーしてきた。

ポゼッションに優れ、1対1に強く、空中戦も得意。フランス代表の一員として参加した、昨年末のW杯でも素晴らしかった。

1-0で勝利したレアル・マドリー戦では、ずっと高く評価されてきた理由をまざまざと見せつけた。中央でディフェンスを支配しながらも、サイドバックとして見せてきた様々な才能を発揮してみせた。

バルサは右サイドバックで何度か失敗した後、ついに長期的な後継者を見つけたようだ(彼がこの役割に留まることが前提だが)。

3位 キーラン・トリッピアー(ニューカッスル)

監督が真っ先に獲得する選手は多くを物語るものだ。トリッピアを選んだエディー・ハウ監督の選択はお見事だった。

彼はニューカッスルに欠けていたものを提供している。そのクロスボールは英国のサイドバック史上最高峰だ。

セットプレーで脅威になり、相手DFをこじ開ける創造性もある。ディエゴ・シメオネ監督のアトレティコ・マドリーで薫陶を受けたおかげでリーグで最もバランスのとれたDFになった。

数年前はイングランド代表の先発としての資格が疑問視されていたが、今はもうそんなことはない。今季のプレミアリーグでベストな右サイドバックであることに疑いの余地はない。

2位 リース・ジェームズ(チェルシー)

チェルシーが6000万ポンド(99億円)を投資したマルク・ククレジャはまだそれを償還できていない。そのことはおもしろい形でチェルシーがいかにジェームズを評価しているかを示している。

相手アタッカーを封じ込め、ボールを持った時の選択肢を提供できる能力を持つ彼のプレーを逆サイドで再現できる選手に大金を投じることをいとわなかったからだ。

トーマス・トゥヘル監督は着任後、すぐにジェームズをチームの宝にした。3バックに変更するとどんな仕事でもこなすように求めた。

ジェームズは3バックの右ストッパーに配置されると、チームがボールを持てない試合でも相手FWを簡単に阻止してみせた。

彼は不可欠な存在になっている。ポゼッション時、中に入るプレー、深い位置に落ちる、4バックから3バックへのスイッチ。

トゥヘルが必要とした時には得点源にもなった。ファイナルサードでの活躍ぶりは、クリエイティブな仕事を任された他のイングランド代表の右サイドバックと比較されることもある。

彼のオールラウンドなプレーは、いま欧州でプレーする両サイドバックのなかで最も印象的なものだろう。

イングランド代表は彼がいないと非常に弱くなる。とはいえ、彼はまだ23歳。4年後どころか2年後にクラブと代表でどんな存在になるのかは信じられないほどだ。

1位 アシュラフ・ハキミ(PSG)

レアル・マドリーでプレーした後、ブンデスリーガでブレイクし、インテルでスクデットを獲得すると、PSGではキリアン・エムバペやリオネル・メッシらとともに“ハリウッド”な攻撃を演じてきた。

昨年末のW杯ではモロッコ代表としてアフリカ勢初のベスト4進出も果たした。そんな彼がまだ24歳になっていないのは信じられない。

メッシやネイマールを軸にする代わりに、ポチェッティーノもクリストフ・ガルティエも右サイドを制圧するハキミのパワーを軸にシステムを実装しようとした。

守備面で批判されることもあるが、このリストにそれで批判されない選手はいない。

彼は攻撃をしかけるポゼッションチームにおける究極のツールだ。ハキミを前線に送り出すためにMFが彼の守備をカバーするのを見れば分かるだろう。

彼はある意味で回帰を感じさせる。それはプレミアリーグの守備的なサイドバックではなく、ブラジル代表のクラシカルな自由で超特急なサイドバック。

その戦術的インテリジェンスと技術的な素晴らしさは過小評価されているかもしれない。恐ろしいことに彼はまだピークに近づいてすらいない。

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