<社説>スーダン戦闘激化 終戦と人道支援に全力を

 アフリカ北東部スーダンの正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が激化している。世界保健機関(WHO)など国際機関によると、死亡者は413人に上り、3500人以上が負傷した。病院では医療用品やスタッフ、発電機用の燃料が不足しているほか、略奪や援助関係者への攻撃、性暴力の報告もあるという。住民は大規模の停電と断水に苦しんでいる。 スーダンは独立後、紛争やクーデターが相次ぎ、今回の戦闘開始前には、推定1580万人が人道支援を必要としていた。そんな中の戦闘激化は住民にとって深刻である。

 本格的な戦闘が始まった15日以降、停戦合意は何度も破られ、戦闘は長期化する様相だ。長引けば長引くほど犠牲を強いられるのは一般住民である。国際社会はこの事態を重く受け止めねばならない。早期終戦と、政治や生活の安定に向けて働きかけ、人道支援に全力を尽くすべきだ。

 大規模な戦闘は、スーダンの正規軍とRSFの主導権争いが原因とされる。両者は2019年以降、2度のクーデターで連携したが、民政移管に向けた協議の過程で対立が深刻化した。双方に歩み寄りの姿勢は見られず、戦闘収束の見通しは立っていない。

 RSFのダガロ司令官は19年のクーデター以降、事実上、国内ナンバー2の権力者となり、現在、軍主導の統治評議会副議長を務める。評議会トップは軍出身のブルハン議長で、両者の権力争いが懸念されていた。

 軍などは昨年12月に民政移管に向けた枠組みでスーダン国内の民主派勢力と合意していたが、軍とRSFの統合時期などを巡り、ブルハン氏とダガロ氏の確執が表面化し、軍事衝突に至った。

 RSFはスーダン西部のダルフールでの紛争で住民を虐殺した民兵組織が母体で、兵力は10万人に上るという。このまま戦闘が長引けば、スーダンはさらに深刻な事態に陥るのは間違いない。

 米国や英国などが「深い懸念」を表明し、即時停戦を訴えたが、戦闘が収まる兆しは見えていない。スーダンは南スーダンやチャドなど情勢が不安定な国に囲まれており、周辺地域に混乱が波及することも懸念されている。国際社会が結束して終戦へ向けて働きかけるのはまさに今だ。

 世界各国は、ウクライナやミャンマーだけでなく、スーダンにも関心を向け、戦闘を止めるための仲介や人道支援に、取り組む必要がある。

 一方、防衛省はスーダンから在留邦人63人を退避させるため、航空自衛隊機3機を周辺国ジブチに派遣した。戦闘の様子を見ながら現地入りのタイミングをうかがうが、手探り状態で、救出は難航しそうだ。慎重かつ迅速な対応が求められる。

 何よりも大事なのは一刻も早い終戦である。そのために国際社会の英知を結集する時である。

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