新しい長崎、佐世保市長は

 のっけから私事で恐縮だが、三十数年も前、佐世保で駆け出し記者だった頃は、気晴らしに弓張岳の展望台に行っては、眼下の港の景色を眺めていた。米海軍基地、佐世保重工業のドック群、山際へ広がる住宅地…▲肩を寄せ合うように混在するさまは「基地と造船の町」そのものだが、今の佐世保は観光都市の顔も持つ。9年前に三浦岸壁が整備され、やがて国際クルーズ船が引きも切らず訪れた▲一時は経営が傾いたハウステンボスは劇的に息を吹き返した。10年刻みで見ると、人の顔と同じように、都市の“表情”はまるで変わる。その変容を引っ張ったのが朝長則男市長であることに、あまり異論はあるまい▲コロナ禍の間は静まり返ったものの、長崎港にも大型客船の出入りが絶えず、2017年の観光客数は707万人余りと最多を記録した。曲折をたどったが、会議・集会用の大型施設ができ、長崎港あたりの風景はなおも変わりつつある▲それが仕事の全てではないにせよ、長崎の田上富久市長もまた、港町として、観光都市としての“表情”を形づくったトップだろう▲人口減少対策という宿題も残して、16年もの間、かじ取りを担った2人に代わり、長崎、佐世保の新しい市長が決まる。町の表情をつくり、目鼻をつけるのを誰に託すか。一票が重い。(徹)

© 株式会社長崎新聞社