諫早・高来 「龍や道具には住民の思いが詰まっている」  金崎地区の龍踊り、譲渡先を探す 

保管されている龍と池田さん=諫早市高来町、上金崎公民館

 長崎県諫早市高来町金崎地区で明治以降、地域行事などの際に披露され、住民融和のシンボルでもあった龍踊(じゃおど)り。しかし、住民の高齢化に伴い、近年は出演に必要な人員をそろえることができない状態が続いている。伝統の舞は2014年を最後に見られなくなり、3頭の龍や衣装などは地元の公民館に眠ったまま。長年、金崎龍踊り保存会の会長を務めてきた池田忠恕さん(98)は「大切に継承し、活用してくれる学校や団体などに無償でお渡ししたい」と話し、引き取り手を探している。
 池田さんによると、同地区の龍踊りは明治初め、住民らが長崎に出向いて習ったのが始まり。以来、戦前戦後を通じて地域の行事などで娯楽として披露されてきた。同地区はかつて、大工など職人が多い地域として知られ、龍や道具は住民の手作りだったという。
 現在、地元の上金崎公民館に保管されている全長17メートルの青龍、白龍、子龍の3頭と衣装や銅鑼(どら)などは住民がお金を出し合ったり、公共団体の助成金を活用したりして、1991年以降、段階的に買いそろえた。99年11月の北高高来町(当時)新庁舎落成式でも勇壮に宙を舞う姿で会場を沸かせ、古里の新たなスタートに花を添えた。
 隣近所で農作業を加勢し合った光景が時代の流れや機械化で見かけることが少なくなる中、本番に向けた練習や出演を終えた後の懇親会は住民融和の場でもあった。だが、同地区の龍踊りの場合、1回の出演には交代要員も含め、龍を操る龍衆と囃子方(はやしかた)など合わせて「200人近くの人手が必要だった」(池田さん)。住民の高齢化が進み、子どもたちも部活動や塾などで確保するのが難しくなり、2014年の夏祭りを最後に、その姿は見られなくなった。
 昨年末に住民の間で処分の話が持ち上がり、引き取り先を探し始めた。目立った傷みはなく、状態は良好という。譲渡先は県内外を問わない。池田さんは「龍踊りを通じて地域の一体感が育まれてきた。龍や道具には住民の思いが詰まっている。その思い、伝統を大事にしてくれるところに譲りたい」と話している。
 問い合わせは池田さん(電0957.32.5345)。

地元の神社の落成式で奉納した時の集合写真。龍などは手作りの時代=1983年、諫早市高来町(上金崎自治会提供)

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