ハンコック工場の火災をうけスーパー耐久第2戦からブリヂストンが緊急対応でタイヤ供給を開始へ

 4月24日、スーパー耐久シリーズを運営するスーパー耐久機構(S.T.0)は、3月に韓国で発生したハンコックタイヤの大規模工場火災の影響をうけ、5月26〜28日に静岡県の富士スピードウェイで開催される第2戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』から、ブリヂストンがタイヤ供給を行うと発表した。

 スーパー耐久シリーズは、2024年から公式タイヤサプライヤーがブリヂストンに変更されることがすでに4月12日に発表されているが、2023年5月の第2戦富士から緊急対応として供給がスタートすることになった。

 これは、3月12日に発生した韓国のハンコックタイヤ大田(テジョン)工場の大規模火災による影響だ。朝鮮日報が伝えるところによれば、この火災で物流倉庫にあったタイヤ21万本が焼失したという。国内モータースポーツ業界でもこの情報は伝えられており、焼失したもののなかには市販タイヤに加え、レース用も含まれていたという噂も出ていた。

 ハンコックは2021年からスーパー耐久の公式タイヤサプライヤーを務めており、安定したクオリティを保ってきたが、S.T.Oによれば、従来スーパー耐久用のタイヤは数戦分の在庫を日本に確保していたものの、今季はシーズンはじめから性能向上のためにドライ/ウエット用とも多くのスペック変更を行っており、フル生産で在庫を積み上げている状況にあった。

 そんななか発生した大規模火災の影響により、タイヤ供給までは最低でも1年半以上の期間を要するという連絡がS.T.Oに対してあったという。9クラスとさまざまな車種が集まり、全車にタイヤを供給しなければならない状況で、しかも5月にはシリーズ最長の24時間レースを控えていた。

 そんななか、スーパー耐久では2024年からの公式タイヤサプライヤーの決定時期を迎えていたが、S.T.Oに対しハンコックからタイヤ供給不可能の連絡を受けた後、スーパー耐久は公式タイヤサプライヤーをブリヂストンに決定。さらに2023年のシリーズ継続のため、ブリヂストンが困難な調整を重ね、緊急対応をとることが正式に決定した。

 多くのタイヤを使用する富士24時間については変則的な使用となる。ST-4、ST-5以外の車両は、ドライタイヤはブリヂストン、ウエットタイヤはハンコックを使用する。またST-4、ST-5の2クラスは、スリックタイヤの供給が可能となるまで、ブリヂストンのスポーツブランドであるポテンザの市販ラジアルタイヤが供給される。参戦チームによれば、RE-12DやRE-71RSといったタイヤが使用されるようだ。

 なお富士24時間に向けては、4月28日に富士スピードウェイで公式テストデーが行われるが。一部時間を短縮し開催(夜間走行は実施予定)される。このテストデーでは、ST-X〜ST-3はハンコックのドライを使用。ST-4、ST-5はポテンザの市販ラジアルを使用する。

 この緊急対応を経て、7月8〜9日にスポーツランドSUGOで行われる第3戦からは、すでに2024年からの公式サプライヤーに決定しているブリヂストンが、新たな公式サプライヤーとして前倒しでシリーズを支えていくことになる。

 S.T.Oの桑山晴美事務局長は、今回の対応に対し「第2戦『富士24時間大会』も含む耐久レースの使用タイヤを、ご予定のない中で急にご供給いただくことは常識的に考えても非常に困難な状況にありました。一時は『富士24時間大会』、2023年シーズン中止等を覚悟せねばならない状況にありましたが、そのような状況下で多くの方々のお力をいただき、株式会社ブリヂストンさまが検討に検討を重ねてくださり、奇跡的に2023年シーズンを引き続き開催させていただけることとなりました」とコメントした。

「またこの間、チームの皆さま、パートナー企業さまのご理解にも励まされてまいりました。感謝の念に堪えません。これまで約2年間、シリーズを支えてくださったハンコック様にも心よりお礼を申し上げるとともに、一日も早い復旧をお祈り申し上げます」

 工場火災というやむを得ない事情ながら、シリーズ途中でのワンメイクタイヤサプライヤー変更は非常に珍しいケースとなる。

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