3Dプリンターで作った組織を移植 患者3人の知覚神経が回復 京都大学病院が治験

京都大学病院

 京都大学医学部付属病院は24日、バイオ3Dプリンターで作った組織をけがなどで末梢(まっしょう)神経を損傷した患者に移植する治験について、機能回復など一定の有効性と安全性が確認できたと発表した。

 バイオ3Dプリンターは細胞で立体構造を作る装置で、再生医療への応用が期待されている。損傷した神経の治療には、患者自身の別の部位の神経や人工神経を移植する方法があるが、採取した神経を傷つけたり十分に再生しなかったりとそれぞれに課題がある。

 治験は再生医療ベンチャーのサイフューズ(東京)とともに2020年11月に開始した。手の末梢神経を損傷した30~50代の男性患者3人の皮膚から線維芽細胞を採取し、バイオ3Dプリンターで培養してチューブ(直径約2ミリ、長さ約20ミリ)状の組織を作製した。

 移植後1年間経過観察したところ、3人とも知覚神経の回復が認められ、目立った副作用はなかった。既に社会復帰もした。チューブから放出される生理活性物質サイトカインによって再生が促されたとみられ、人工神経に比べても順調に回復したという。

 同病院の池口良輔准教授は「手が思うように使えず苦しんでいる患者さんの新しい治療法として選択肢の一つになればうれしい」と話している。

 今後、再生医療等製品として実用化を目指すという。研究成果は5月に横浜市で開かれる日本整形外科学会で発表する。

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